カゼノトオリミチ
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見覚えのある駅の
長い階段を下りてゆくと
忙しそうに行き交う人の中
こちらを見上げている
暑い光と風が吹いて
ざざっと 柳が大きく揺れた
そのヒトは
懐かしそうな顔を
ほころばせて 言う
さぁ、一緒に行こう
しだれた柳の影は
そのヒトの髪のように
暑い風に 黒く揺れて
ワタシは たちすくみ
この柳の木になりたいと
前へも 後ろへも
進むことはできないけれど
この柳になれるなら
いっそ なってしまいたい
ただ立って 揺れていられるのなら
朝の光にキラキラ 水のアーチ
くぐり抜けて吹く 涼やかな風に
カランコ カランコ
父の残した 木の下駄ばきが 鳴る
つ と現れた ツマグロヒョウモン
待っていてくれた?
オハヨウ オハヨウ
素足の周りを 名残惜しげに ヒラヒラ
この音 懐かしい?
水に誘われ 音にさそわれ
朝のお客さん ツマグロヒョウモン
来てくれてアリガトウ
今日もいちにち なんとか がんばる
お前も 今日を大切に
やりたいこと たくさん できますように
おはよう 風が呼んでる
今日はどう ワタシは いつもどおり
風は微笑んで 今日は 西風よと
ほんの少しだけ ほほを秋色に染めてる
だから スカートのすそが ひらり 軽いの
7月なのにふんわりと
うろこ雲が おいで こちらだよと
朝の空に
いっぱいの石畳を 描いている
海の向こうまで 歩いていけそう
そこからの 眺めはどうですか
乾いた風が もう ワタシを 迎えに来ている
ほんの少し 潮の香りをさせて
natu
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