カゼノトオリミチ
もくじ|過去|未来
人間は どうして生きなくては ならないのかと
人間は ふと じぶんの生に
疑問をもつように なっているらしい
生を受け 時に難関にも ただひたすらに
めげず生きる 草花たちよ
人間はどうして 君たちのように
季節の流れに 身を任すように
生きられないのか
生の意味を どうして 問うてしまうのか
問うてしまうから 悩ましい
かみさまは それを見守る おまもりなのか
排水溝に 黒い大きなアゲハが
流されて死んでいた
羽を秋の夕方の風が 撫ぜていた
いいの、これでいいのよ
そう言っていた
昼過ぎに見た 黄色い蝶々は
まだ生きていて
シジミチョウと 花を求めてふわり
秋の光に溶けていく
母は何も食べられず ワタシは コロッケをかじると 涙が出る
排水溝の黒アゲハは ただの黒い紙だった
いや今どき 黒い紙などあるだろうか
やっぱりあれは
季節を 旅を終えた 黒いアゲハ蝶
だったのでは ないだろうか
今日はいちにち 雲ない青空
誤魔化しの 効かない潔さ
澄み切った空気に
ココロの中まで 見透かされて
青すぎて 落ち着かない
こんな時
どうでもいいスイッチ あればいいのに
もうどうでもいいやと ほうり投げてありのままで
知らん顔で 居られたら いいのに
小雨が降りそう
空気の粒が 重たくて
黄色い蝶々は もつれるように飛んでいる
ひらひら ワタシに寄り添って
知ってるよ 言葉を今日は 話しすぎたねと
止まらなくなった 自転車の輪のように
ささくれた ワタシの頭の渦を
そっと 撫でてくれるように
黄色い蝶々 飛んでいる
もう こんなに寒い 秋の日に
命の糸を 燃やすようにして
あなたのココロは
ガラスのようで
ちいさなコトバの
トゲが刺さると
つつ、と
なみだつたう
ちいさな気流が
乱れると
ココロゆれて
なみだつたう
なぜなの どうして
そのコトバ 小箱に入れて
しまっておこうか
うすむらさきの
夕暮れに
かみきれにして
風にのせようか
きんいろの 風のこどもたちが やってくる
10月になった朝
雨上がりの水滴が キラキラとかがやいて
風のこどもたちは 少し しんみょうな面持ちで
それぞれが きんもくせいの 花のツボミに
10月の香りを塗り付け
次の土地へと 風虫のように ふわり 飛んでゆく
お別れを 悲しまないで
きんもくせいの香りが やがて 街中に広がったら
あなたのことを ちゃんと ちゃーんと
思い出すよ
natu
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