カゼノトオリミチ
もくじ|過去|未来
私は見ていたのだろうか
木のかぎ針が
くるくる 行ったり来たり
するのを 秋の日に
見ていたのかも しれない
毛糸 いろいろ
あんず色の 柿色の
ももいろ えんじいろ
顔をあげて
メガネの奥がほほえんだ
お昼の太陽で
あたたまった縁側で
トラと三毛は ひるね
ぽろり ぽろり
想いでのとびら 開くのは
いつもギターの音色
ひとつひとつ よみがえる
今日の秋の風が
あの日のページをめくる
そして 時が流れ
私もいま
たどたどしく
柿色の毛糸を 編んでいる
雨が
しとしとふっている
あのひとは 鳴らない電話を
朝からずうっと
待っている
軒先の
したたるしずく
数えながら
雨のふる日は
後悔ばかり
旅立った人を 思い出す
キンモクセイの咲く道で
話していたね
ギターの音色が
ぽろりぽろり 窓つたう
雨はふり止まない
会いに行こうか
ゼラニウムの
真っ赤な花びら
つめたいしずくで
散る前に
ちいさな暮らしを
ひとつづつ
それは毛糸の
ひと編みと同じ
ちいさなあゆみ
ひと編みごとの
いつか何かが出来るかも
それとも途中で
あきらめるかも
それすら
わからない けれど
ひと編みひたすら 重ねゆく
日々も同じ
いち段 終われば
毛糸だまから 糸を引く
その軽い重さに
生きている
ちいさな手ごたえを
感じたり
natu
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