カゼノトオリミチ
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季節が進み
西の空がアカネに染まり
手のひらの上
チイサナ風が吹く
ベランダで
手紙を書いた
まだいかないで 欲しいのです
腕の中でねむる 彼女にとって
時の流れは
意味ないのだろうか
昔と変わらぬ 優しい瞼のライン
サヨナラを悲しむことなど
無いと
言っているようで
そのときはそっと
天国へ行くあなたを
ここから見守ります
ジングルベルがすぎて
はらはら
さくらが舞い散る
そのころまでは
この世界に居て頂戴ね
トロトロねむりのゆりかごで
何の夢を
みているのだろう
過去も未来も
今さえ きっと
あなたにとっては
結んだ 同じ手のひらの中
ポストへの道
12月の午後三時
風のない 金色の夕日に
かがやく一本道
女の子が泣いていて
公園へ戻りたいと 泣いていて
お母さんは 赤ちゃん抱っこして
困り顔
おじいさんが犬を連れて
ほうらかわいいね、かわいいね
お母さんも女の子も
おまけに 自転車を押した
わたしまで かわいいね
かわいいね
言いながら 救われる
ありがとうありがとう
いえいえ こちらこそありがとう
金色の道 午後三時
シルエットの向こうから
車椅子を押す青年
だいじょぶですよ だいじょぶですよ
それはきっと
自分にも言っている
だいじょぶなんだと 私にも言っている
車椅子の老人は 遠くを見ている
だいじょぶ だいじょぶ
掛け声が すれ違って遠くなる
風のない 12月の午後
山茶花の蕾が たくさん
さくらの葉は
赤に黄色に散ってゆく
人と人 小さなかかわりに 救われる
魔法の時間 午後三時
ひとりじゃない
きっと
決して
natu
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