カゼノトオリミチ
もくじ|過去|未来
雨あがりに 浮かぶ
すぴーちばるーん
いえなかった言葉
話し過ぎたコトバが
あたりに満ちた 湿度の粒と
空気にとけて
そらへのぼり
雲の切れ間に 消えてゆく
ココロに積もる 数々の
行き場のない コトバたち
ヒトの想いも 後悔も
みんな
見えない粒となり
雨が止んだら
みずいろの あの隙間へと
のぼりゆく
今日は 南風が
少しの 夏のかけらとともに
校庭の子供たちの
声と
笛の音を届けてくれる
六月の終わり
梅雨は
にんげんの 身体の中の
コトバを集めて
空へ 返す
うるんだ季節の中で 今日も
雨の中 ミケはどうしているだろう
古い平屋の 屋根瓦の下で
今朝は
身体を朝陽に 横たえていた
柿の葉をゆらし
梅雨の冷えた風が吹く
心地よさそうに 目を閉じていた
昨日は 庭の真ん中で
こちらを見ていた
そのあとまた 新聞を取りに行くと
道路の真ん中で こちらを見てた
2メートル範囲内に
入るといつも 逃げる
お向かいの柵の向こうに入り
そっぽを向いて 座っている
午後から雷雨になった
ミケに会った日から 何年経つだろう
会う前にもうすでに
何年生きていたのだろう
自転車を押して
坂を上ってくると そこに
お前の姿が ある そんな時は
なんだか ほっとする
雨の中で カアカア鳴くのは
迷子になった 子カラスだろうか
晴れたらまた きっと
その姿を見せておくれ ミケ
そら そら そら
梅雨の雲は去り
今日は
みずいろ透きとおり
太陽が笑う そら
見えない人
見えないもの
あなたも あなたも みんな
どこへいった
夜更けにゆらり ベランダで
風鈴の音 ひとつ
目を閉じたまま
耳そばだてる
ゆうべは
大きな月が出たと
そよ と吹く 墨色の
夜風が 窓たたく
西のそらへ
みずいろの風にのせて
ありがとうと
手紙を書くね
今日の夕焼けも きっときれいだね
さやさや 風が
ぬれた葉をわたりゆく
あじさいの花に 小さなクモ
迷っているような
そこが 気に入っているような
うすむらさきの雨の糸は
針のように細く
また
しっとりと ぬれている
止んだような
降っている ような
乾かないね 髪も ココロも
いつまでも
話しかけてみる
小さなクモと
煙る 梅雨の粒たちに
あたらしい朝が来たよと
スズメたち
私の役目はおわってしまった
スズメたち
うるさく騒ぐ
あなたの役目は
まだある まだあるよ
ココロのなかの
きらめくヒカリを
忘れないこと
ココロの中の
ぬくもりの巣で
小さなヒカリを
あたためること
natu
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