2008年09月30日(火)
父の得意料理に「くるみ餅」がありました。 くるみ餅といっても、正式名称かどうかはわかりません。 お餅の中にくるみが入っているわけでもありません。
すり鉢ですりつぶしたくるみに砂糖やしょうゆやなんだかんだをまぜて、とろとろの液体状にしたあつあつのタレの中に、焼きたてのお餅をつけて食べます。 これがとても甘くておいしくて、わが家の正月の定番料理でした。
ふだん、家にほとんどいなかった父が、年に一度、兄と私のためにくるみ餅を作ってくれます。
「ちょっと待ってろよ」
そう言いながら、うれしそうに殻を剥いたくるみをすりつぶし、なんだかんだで味付けをしていきます。 ときどき、くるみを私たちにつまみぐいさせてくれます。
「ほうら。できたぞ」
お餅の熱さに、はふはふしながら甘くておいしいタレをつけて食べるくるみ餅もおいしかったけれど、滅多に家にいない父が、私たちのために作ってくれる料理が、私は大好きでした。
以前、母がくるみ餅の作り方を父に聞いたことがあるそうです。
「くるみ餅を食べたいときは、ワシが作ってやる」
そう言って教えてくれなかったそうです。
父の秘伝のくるみ餅。 もう一生食べられないのでしょうか。 それとも、父の育った村に行けば、もう一度、父の味にめぐり合えるのでしょうか。
いつか。 きっと。
おやすみ。
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