2005年12月29日(木)...警察、病院
面倒が起こった、と思った。救急車の横揺れが沈黙を更に追い立てて、頭が酷く痛む。サイレンが煩い。
2005年12月27日(火)...副作用
机に座るだけで精一杯で、ルーズリーフや教科書に散らばる文字がどんどん形を成さずにするすると動き出してゆく。くらくらしていた。
眩暈で世界がぐらんぐらんに揺れて、シャープペンシルを握り締めた手が冷たい。聞こうとすればする程眠たくなって頭が酷く重く痛んだ。ただ、昨日の寝不足の原因を思って、その死に様よりも容易い手折るということに意識を集中している。
眺める黒板は波打って、チョークがぐちゃぐちゃと広がり始めた。腕で囲いを作って顔を埋めてはそっと、深呼吸をしてみる。大丈夫という言葉と吐き気が戦って、学習を放棄してその目的を変えた授業時間が、じりじりと消費されるのを願っていた。
2005年12月25日(日)...ケーキ
甘くて、ずるずるとソファーに同化してゆく気がした。画面の向こうの動きに反応する唇の動きに眼を遣っていると、気持ちが悪くなる。苺を掻き出してぐちゃぐちゃに壊すと、フォークに付着した生クリームを舐り取った。
一刻も早く、帰りたい。面倒が身体を攀じ登って、冷気を含んだままの空気で満たされた部屋を思った。
2005年12月24日(土)...クリスマス
サンタクロースと神様が混じっていて、何時も祈りにも願いにも取れる希望をそっと、枕に埋めていた。
2005年12月19日(月)...数�気龍飢塀�
幾つもの放物線の、其の下に薄っすらと残る鉛筆。
>倖せというものは途轍も無く貪欲で
>その無意識が、誰かに対抗していたり
>誰かを牽制していたりすることに気付けていない
2005年12月13日(火)...中学校
聞き慣れた教師の声を頭の片隅で思いながら、廊下越しに見える中庭の一際大きな銀杏の木に魅入って居た。
眼の前では遥か昔の西欧の出来事が淡々と綴られていて、机の上に開いた二色刷りの教科書には太枠で囲まれて書かれてあるナポレオン法典の文字。
眼を閉じると、教師の抑揚の無い声や生徒達のちょっとした耳打ちで水面はざわめき揺らいで、教室の様子が煩い程に伝わってくる。
そっと机に頬を寄せると酷くひんやりとしていて、音に身体が呑み込まれてゆくのが解った。机にへばり付いた半分の静が、耳から入る音に堪えかねて居場所を失い、徐々に侵食が増して、嘲笑われている様な気さえして頭の芯がじん、と熱くなった。
2005年12月08日(木)...携帯電話
使い方の解らない機械は、受信する電波も無くベッドの隅に転がっている。パソコンからメールを送信してみると、聞き慣れない電子音が鳴り響いてどき、とした。添付した着うたの出来を確かめるために2、3度立て続けに再生して、急に馬鹿らしくなる。小さな箱に詰まる信号が疑わしくて、ぽすん、とブランケットに離した。
2005年12月05日(月)...冬
温度と時代が重なって、喪失を思い出させる。忘れていた様な、常に蟠っていた様な、そんな当たり前の寒さがじわじわと押し寄せてゆっくりと身体を締め付け始めた。
明日で終わる宛て先を眺めて、甘えと自制のバランスがもし取れていたなら、などと思ってみる。携帯電話を替える度に減ってゆくメモリと期待が、今は少しだけ心臓を詰った。