ようやく一歩
夜明け前まで君と話した。
俺にとって最初で最後で失敗するわけにいかない
君は若くない。失敗すると後がない。
ようやくバカな私にもわかった。
していることを理解し認めてくれる人が欲しかった。
滅多に奥底にある気持ちを出さない君から聞いた。
君の城、砦。
仕事が忙しくないときも、決して離れようとしない。
24時間、会社を離れたのは、入院した時だけ。
日曜もお正月も、君は必ず会社に行く。
なのに私のために、彼のできる精一杯のことをしてくれている。
この7ヶ月、二人で外食したのは2回。
丸一日、出かけたのは1回。
24時間一緒に過ごしたのは2回。
多くの人が普通にしているデートをしてみたかった。
約束していた旅行に行きたかった。
私をどうして連れてきたの?
君の口から聞きたかった。
言葉より仕草や態度で示していてくれたのに
私はもっともっとと望んだ。
あなたにとって私は何?
最初の頃、簡単すぎるほど口にしていた
最愛の人と言わなくなり、口で言うのは難しいと
言葉を濁すようになった。
それが悲しかった。
辛いの?
辛くないと言ったら嘘になる。
楽しいでしょう?
楽しいときもある、でもとても楽しいと言ったら嘘になる。
君の気持ちを思い遣って、もっと上手に言えばよかった?
だけど、できない。
嘘はいやだ。
心にもないことを言って、仮面をかぶったまま
うわべだけの笑顔を繕うことはしたくない。
ここが辛いの?田舎だから。
本当に田舎だよね・・・
都会で育って、老後は田舎で暮らしたいと言う人が
大勢いる中で、昔から私は絶対にごめんだと言い続けていた。
その気持ちが今も抜けない。
だから君に対して鬱憤が溜まっていくと
何が悲しくて、こんなところに埋もれているのかと
見るもの全てに怒りが湧いた。
私の言葉のイントネーションで振り返る人がいる
注目する人がいる、詮索する人がいる。
だから誰とも長く話さない。
イントネーションを変えて詮索されないよう
取り繕う自分は、本当の私じゃない。
きっとこれからも何度も不満が出てくる。
だけど、君の気持ちが少し見えたから
私はこれから君と一緒に歩いていこう。
自分を理解して支持してくれる人が欲しい。
だから君は、あの頃何度も寂しいと言ったんだ。
君に頼んだ。
嫌いになったら、そう言ってほしい。
気持ちがなくなったとき、
義務だとか責任だとかで、私といるのは止めてほしい。
君はマジメだから先に言っておかないと。
2004年10月14日(木)
時間制の相手
君がようやく帰ってきた。
病院に行こうとしていた私は、いろんなことが頭に浮かび
痛みと吐き気で動けなくなった。
服を着替えかけたり、留守番電話にメッセージを残したり。
動けなくなった頃、退院して会社についた君から電話。
すぐに仕事を始めようとしていた。
そんなことないと言ったけど、信じない。
入院していた期間を取り戻したい。
それが最重要事項。
そんなに仕事人間なら、もっとお手軽な時間制の
恋人を探せばよかったのに。
仕事の合間の息抜き、ほんの数時間付き合える相手。
時間がきたら、仕事に戻ると簡単に言える相手。
2004年10月13日(水)
悲しい色やね
上田正樹が歌っていた。
泣いたらあかん 泣いたら 切なくなるだけ
そうかもしれない。
hold me tight
please hold me tight
これが望み
聴くと思い出す曲が多すぎる。
汽笛の音、コンクリートの岸壁。
一人で見た、汚れた海。
悲しいのは海の色だけじゃなかった。
2004年10月12日(火)
筥迫と詩人
着付けを終えたばかりの小さな女の子を見た。
胸に挿した筥迫を見て、遠い昔の自分を思い出した。
筥迫についた飾りが好きだった。
銀色の揺れる簪。
結髪に挿した簪より、懐で揺れる簪が好きだった。
着付けの最後、胸元に筥迫を挿されると
引き締まった気持ちになり、背筋が伸びた。
自分では懐剣を帯びた気になっていた。
ただのちり紙入れだと教えられていたのに。
きっと添えられていた銀の簪の切っ先が
そんな気持ちにさせたんだろう。
ある人の日記を最初から読ませて頂いて
うーを思い出した。
そして、うーのサイトを久しぶりに覗いた。
月に一度か二度しか更新しない。
まだ若いのに、傾倒している詩人に影響されていて
ますます書き方が大正浪漫なものになっていた。
矢絣に角帽、そんな風貌が似合う文体。
「無花果のタルトを食した」感想を本人から
直接聞いてみたい。
一緒に歩いた地下街を思い出す。
2004年10月10日(日)
電話
君からようやく電話があった。
君は熱が出た。
入院前は元気だったのに、手術したら具合が悪くなった。
身体にメスを入れると、それだけで体温は上昇する。
でも、君のは微熱じゃない。
それにメスは入れてない。
何された?
そこの医者、何したんだ?
受話器に向かって、まくしたてそうになる。
入院して病人にされてしまった。
退院がいつになるかもわからない。
私は胃カメラで撮影した写真を貰った。
十二指腸潰瘍の跡は、数ヶ月以上前に治っているものらしい。
同じような症状が前にもあったはずだと言われた。
覚えていない。
ここに来る前に、3ヶ月続いた心臓の苦しさしか覚えていない。
君はいつ帰って来るだろう。
2004年10月09日(土)
浮かぶ 重なる
君の車のCDから、聞き覚えのある曲がかすかに流れてきた。
音量を上げた。
ふーん、こんな曲も聴くの?
何気なく言いながら、窓へ顔をそむけた。
あのとき、彼が歌った歌だった。
あのときの彼のマイクを握っていた様子が浮かんできた。
深夜にやっているテレビ通販。
音楽CDの特集になると、聴き入ってしまう。
持っているCDは滅多に聴かない。
よく聴いた当時を思い出すから。
思い出すと、頭と心が真っ白になってしまうから。
なのにテレビのチャンネルを変えるのを忘れてしまう。
しばらくして我に返りテレビを消す。
君は入院してしまったし、私は当分通院しなければいけない。
君は軽く、出張だと思えばいいからと言った。
聴くと君を思い出す、君と重なる曲は、まだ、ない。
2004年10月08日(金)
きっと
去年の10月を思い出した。
今日、君が何か買ってあげたいと言った。
去年の10月、荒れ狂っていたのを思い出した。
今日、俺がいるから寂しがらないでと言った。
私は去年の10月、こんな日が来ると思わなかった。
君ではなく彼といると思っていた。
彼は今、誰と過ごしているのだろう。
去年の10月、他の恋人たちの楽しそうな語らいを聞いて
自分にも訪れると信じていた。
君は私の表情の変化を敏感に感じ取る。
そんな顔しないで、笑って
いつも君は私に言う。
私は去年の10月より、ずっと幸せだ。
きっと。
2004年10月06日(水)
甘く感じないキス
何度も何度もキスをされる。
だけど、私の心を満たさない。
胸がぎゅっと苦しくなることもない。
午前零時前、玄関を開錠する音が聞こえる。
体調を気遣ってくれる君がやってきた。
抱き締める腕に力が入ると、吐き気が込み上げる。
それは君に対しての嫌悪ではなく
背中の痛みが取れないからだ。
薬の副作用で、吐き気と下痢が続く。
胃薬を飲みながら、もう1種類の薬の副作用に
悩まされるなんてね。
だから、今は胃薬だけを飲む。
疲れることはさせてないのに。
君の体力と気力は、私のそれとは比較できないほどだ。
だから私の弱々しい体力が理解できない。
吐き気が治まらない。
痛みが消えない。
軽いキスをされるたびに、彼を思い出した。
彼なら、ここまで気遣ってくれなかった。
こんなに優しく静かに背中をさすってくれなかった。
やまに東京で会った時、目が覚めたように
いつか彼に会うことがあるなら、目が覚めるだろうか。
9ヶ月が過ぎた。
彼の顔を最後に見てから、9ヶ月が過ぎた。
私は君に、心にもないことを簡単に言う。
一緒に帰ろう。
ね、一緒に帰ろう。
君がどう答えるか知りたいだけで
本当に一緒に帰りたいと思っていない。
君の居場所はここだから。
雨が降り続いて、このまま冬になっていく。
気温が5度下がると、体温がついていかない。
慣れる前に、また気温が下がる。
君が突然、東京に行こうかと言う。
私がここでは耐えられそうにないと思ったから。
現実にはならなくても、気持ちを汲んでくれただけで
ありがたい。
彼は言っていた。
誰も知らないところで、二人で静かに暮らそう。
叶えられたら、どんなにいいだろう。
あのときは甘い期待で胸が一杯になった。
今、誰も知らない場所で、君と静かに暮らしている。
現実になると、苦痛だと知った。
相手が違うからかもしれない。
だけど私の性格では、相手が誰だろうとダメだ。
やってみてよくわかった。
久しぶりに外食した。
楽しかったよ。
気分転換になったよ。
ありがとう。
2004年10月05日(火)
次々に浮かぶくだらないこと
彼の名前を見つけた。
本名そのままで。
あんな場所で活動してるなんて、想像できない。
他人に無関心だったのに。
嬉しい。
だけど、私の知らない彼の一面。
少し寂しい。
薬のせいか、眠くてたまらない。
私はどうして、ここにいるんだろう。
一つ一つ理由を挙げられる。
でも、今度の通院の原因は、検診のせい。
そして、それ以外のストレス。
心臓の動きはおかしくならない。
だから、まだいいのかもしれない。
それにしても、どこで暮らしても穏やかな気持ちで
いられない。
穏やかな気持ちは長続きしない。
戻りたいところがない。
彼の声が聞きたい。
だけど、また言い合いになるなら聞かなくていい。
彼は私を覚えてるだろうか。
彼は私を忘れないだろうか。
お互いに誰よりも欲しながら
傷つけあうなら、遠くで思っているほうがいい。
人には忘れられない人がいる。
それでも、その人とやり直すことは考えられない。
独りは寂しい。
でも、君といると君を傷つけてしまう。
君も私を傷つける。
だけど独りになるのは、どうしてもできない。
だから、イライラが募って、穏やかに過ごせない。
自分の人生を振り返ってみる。
かまわれると嬉しい。
かまわれすぎると、鬱陶しい。
したいことだけをして生きていたい。
それは夢のまた夢。
したいことなんかない。
この半年で、喫煙量が倍増した。
料理しなくなった。
身体に悪いと頭で理解しながら、じっとしたまま
できあいの惣菜ばかりを食べる。
どんどん赤くなっていくボディタオルを
まだ使ってる。
買い換えても、配管が錆びてるなら無駄だよ。
メガネをかけて、首からカメラをぶら下げてる日本人。
今はどうか知らないけど、これが外国人が考える
日本人の典型。
今、メガネはコンタクトレンズに代わった。
首からぶら下げたカメラは、携帯電話のカメラに変わった。
でも本質は変わらない。
写真を多用してるサイトを眺めてると、そんなことを
思いついた。
見るもの、聞くもの、全て何かを連想させ
思いつかせ、思い出す。
神経が休まらない。
悪寒が続いてる。
暑くなったり寒くなったり。
そのたびに、服を重ね着したり脱いだり。
ヒーターをつけたり、アイスを食べたり。
季節の変わり目は、脱ぎ散らかした服で
いつもひどい状態になる。
モニターで見た血の塊は、どこへ行くんだろう。
そんなことも、ふと思ってみる。
2004年10月04日(月)
胃酸過多
2種類の薬を処方された。
一つはもちろん胃薬。
問題はもう一つの薬。
あの医者め。
病歴を説明するんじゃなかった。
昔、「効くと信じれば、小麦粉だろうと
片栗粉だろうと効く」と笑ったことを思い出した。
効能効果を詳しく調べて、余計に胃が痛い。
薬物依存になるつもりは毛頭ない。
ニコチン中毒だけで充分だ。
十二指腸潰瘍の治った痕。
出血ヶ所不明の胃潰瘍。
どす黒い血の塊が、ぽつぽつあちこちに。
自分の内臓を見るのは面白い。
モニターに集中してると気が紛れた。
今度胃カメラ検査をする時は、麻酔しよう。
それにしても、処方薬の癖に効き目が薄れるのが早すぎ。
今日も仕事、比喩でなく文字通り胃が痛い。
2004年10月03日(日)
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