ぶらんこ
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波の音がする。。。と思ったら、雨が降っている。 今朝はいつもよりちょっと早く目が醒めた。
お弁当を作り、こころを起こしてから、ぷーちゃんを外へ出した。 雨はもうあがったらしい。 まだ明けきらない空の真ん中で、大きな黒雲が散り分かれようとしていた。 その合間からは星がちらちらと光っている。 芝生はしっとりと濡れていて、やっぱり雨が降っていたんだなぁ・・・と思う。
朝食の後、こころをバス停まで送っていった。 家に戻り、ぷーと外を歩いた。 少し疲れていたので、もうちょっと眠ろうかな・・と思い左の耳たぶを触って、どきっとした。
ピアスが無い。。。
昨日、1年ぶりくらいにピアスをつけたのだった。 誕生石の特別なヤツ。 「おまじないかけといたんだよ。呪文、呪文!」なんて、昨夜こころに冗談で威張ったばかりだった。 ―がっくしだ。
眠るときまであったのだから、と、ベッドの中や周囲を見回したが、どこにもない。 電気をつけて探す気にもなれず、そのままベッドへともぐりこんだ。 呪文かけたのがマズかったんかなぁ。。。と、馬鹿みたいなことを思いながら。
わたしは、久しぶりに海に来ていた。 水がそんなに冷たくないので内心驚いている。 このまま服を着たままでいいからちょっと潜ってみるかなー、と、沖へ向かう。 それにしても遠浅だ。 こんなに潮が引くなんて不思議ー、と、ひとりではしゃいでいる。 波がざざーーーーっと打ち寄せては、さささーーーーっと帰ってゆく。 透明な綺麗な海水だ。 光の輪がわたしの膝にも揺れている。
やっぱり泳ごう、と思い、カーディガンを脱ぐために岸へ向かった。 砂はどこまでも白く、ちいさな黒い砂利が波に洗われながら行ったり来たりしている。 あっ。。。 歩きながら、砂の中にオレンジ色のちいさな石が転がっているのを見たような気がした。 もしかして・・と手を伸ばすと、それはやっぱり失くしたピアスの片っ方だった。 信じられない、と思いながらも、見つけた喜びで思わず転びそうになる。 こんなの良く見つけたもんだなぁーーと、感慨深げに、ちいさなピアスを拾った。 呪文が効いたんだ、呪文はまだ生きている! そう思っているところへ、背後から突然大きな波が打ち寄せ、わたしは思いっきり前へ倒れてしまった。 そして、ピアスを握っていた手が開かれ、ピアスはそのまま他の砂と一緒に流されていった。 あーーーちょっと待って、、、 腕を伸ばしたが、わたしは次の波に飲み込まれ、身体ごと持っていかれる始末。 さんざん、波に遊ばれ、ずぶ濡れになりながら立ち上がることも出来ないでいたら、遠くの方で誰かが笑っていた。 遠浅で、砂浜に立っているその姿はとっても小さくて、よく見えない。 でも、誰もいなかったはずなのに。。。
というところで、いきなり目が醒めた。 なんと、既に9時を過ぎていた。信じられない。
我ながらアホみたいな夢をみたもんだ、と思う。 (そもそも呪文なんかかけたのが間違いだったのか???←まだ言ってる)
自由になるということは、責任を持つということ。 自分の行動に。言葉に。雰囲気に。 自由でいるということは、自立すること。 自分でしっかりと立っていること。 自分を尊重し、相手を認めること。 そういうことだと思う。 そうなりたい、と思う。
我慢することが良いことだとは思わない。 犠牲になるというのも、不自然。
心を込める。 なにごとにも。 そして、自分で決める。 いろんなことを。
自分が決める。 なんでも。
得る。 失う。 つかむ。 手放す。
流れる。
流れる。
フェリーに乗った。 大きな翼の鳥が海面ぎりぎりのところを飛んでいた。 彼は、ときにその両足を下ろし、海面から水しぶきをあげて、遊んでいる。 えさを採っているんだよ、と、近くで誰かが言ってたけれど、わたしは密かに、違うよ。。。と、思う。 あの鳥の気持ちがわかる。 すごいスピードで水を蹴る。何度も、何度も。その軌跡を見せるために。 もっと速く。角度を変え、場所を変え。 そして空へ飛び立つ。自分の影を見るために。海がその姿を見せてくれるから。 ほらね。あれは遊んでいるのだよ。と、わたしは勝手に決め付けて見ている。
時間があったので、本屋に寄った。 ハードカバーの本が死ぬほど好きなのだけれど、お金が勿体無いので、もっぱら文庫本ばかり買っている。 その文庫本を買うのからも最近遠ざかっていたのだけれど、本を読もう!と思い立ってからは、なんだって買いたい気持ちだから不思議だ。 欲しかった本を見つけ、その後は、そこいらの本をぼんやりと眺めていた。 目に飛び込んでくる本があったら買おう、と思って。 手に取り、棚に戻し、をくり返していくうちに、1冊の本が目に入った。 パラパラとめくり、作者を見る。 鹿児島出身。 単純にもそれだけのことに運命的なものを感じ、同じ作者の本を2冊選んだ。 文庫本とはいえ、この衝動的な買い方に、ちょびっとだけ罪悪感を感じる。 だけど、良いのだ。 今は多くの本を読みたいから。
レジに向かって歩いていると、「幸福になる方法」とかなんとかいう本を見つけた。 何万部も売れているらしい。知らない作者。でもわたしが知らないだけで、きっと高名な人なのだろう。 「幸福を自分のところへ引き寄せる方法を教えます!」などというようなことが表紙に書かれてある。
ふ〜〜〜〜〜ん。。。と、思う。 幸福ねぇ。。。と、思う。 引き寄せるねぇ。。。と、思う。 そして、 余計なお世話じゃぃ・・と、思う。
このような類の本に、わたしは非常に懐疑的だ。 違う。いろんなことに対して、わたしは懐疑的なのだと思う。 いつも、まずは疑う。冷めた目で。だから、何よ。という感じで。
「さぁ、自分に自信を持って!」と書いてあった。 自信なんてなくたって良いよ、と、変な自信を持ちながら、その本を戻す。
きっと、わたしはすごく傲慢なのだろう。 そして、根性がねじれているのだろう。
相田みつを氏の言葉も、正直なところ、最初は「嫌悪」に近いものを覚えた。(これは、以前にも書いたことがあったと思う) こんなことを言うと、ますます、自分という人間が酷い人に思えてくる。
今は、そうでもない。彼の詩を読んで、 なるほどなぁ。。。と、思う。 すごいなぁ。。。とも、思う。 綺麗だなぁ、とも、ありがたいなぁ、とも、あぁそうだったんだなぁ・・・とも、思う。 素直に、素晴らしい人だったんだぁ。。。と、思う。 そして、一時的とは言え、嫌悪していた自分を恥じてもいる。
それでも、心はこう思っているのだなぁ。。。 「でも、自分で決めるからいいよ」 ―それで良いような気もする。
夜の海はまったくの黒だ。 遠くの連なった灯りたちが、陸であることを示している。 こころが黒い海に浮かぶ白い波しぶきの写真を撮っている。 わたしが昼間したこととおんなじことをしているので、可笑しい。
ふたりで黒い海を眺めていた。 考えてることは、それぞれなんだろうけれど、こういうのって、良いなぁ。。。と、なんだかしあわせな気持ちになった。
こんな言葉を見つけた。 ・・・
私はうなずいた。 “母が灯台としてあまりにこうこうと明るすぎるから、 通りかかる船はみな混乱し、さまざまに奇妙な運命が寄ってきてしまう” というのを直感的に知っていた。 ある種の魅力は、その存在のエネルギー自体がただひたすらに変化を求めるのだと思う。 そのことに母はうすうす気づいていて、傷ついている。 だから、言葉にしない。
『アムリタ』 吉本ばなな
・・・
心に強く残った。
わたしは、過去にそのようなことを言われたことがある。 何人かの人に。 自分のことをそう思っているわけではないけれど。 だから傷ついてもいないのだけれど。
こうこうと光る灯台。 くるくるとまわる光。
こころが長崎へ行った。 研修旅行というもの。 2泊3日。 なんでよりによってこんなときに・・・と、思ってしまった、駄目母。。。
「皆さん、おはようございます!」 先生が挨拶すると、それまでがやがやしてた女子生徒たちは姿勢を正し、口を揃えてこう言った。 「おはようございます。 『心 清き者は 幸いかな』」
この言葉、知ってる。 でも、誰の言葉かは覚えていない。聖書に出てくる言葉。
心清き者。
清き者。
心の清らかな者。。。。
少女たちは、意味を知って言っているのだろうか? それとも、ただ、毎朝、反芻しているだけ? うまく飼いならされた?もっと極端に言うと、洗脳された? 違う。。。そんな感じはしない。 少なくとも、彼女たちの顔は、そんな顔じゃない。
それでも、そのリズム正しい言葉を聞いたわたしは、思わず笑ってしまった。 端っことはいえ、仮にも、彼女達の目の前にいるのを忘れて。 不謹慎この上ない。でも、素直な気持ちでもある。。。 こころを含めた何人かの少女が、わたしを見て、悪戯っぽく笑った。 その笑顔。。。 敵わないなぁ・・・と、思うわたし。
わたしの目から見た少女たちは、それはもう清らかだ。 素直で、心開いてて、希望に満ちてる。 きっと(こころももちろんそうだが)、ひとりひとり、それなりの悩みはあり、その子の感じている世界は、暗く、辛いものであったりする のかもしれない。自覚の有無、関係なく。
それにしても、清らかな心って、どんなだろう? 何かを信じて疑わないこと? それとももっと身近なところでは、嘘をつかないこと?
・・・その言葉は、わたしの心に、聖母マリアを思い起こさせる。
聖母 Mother Mary 女神 その呼び名は、なんとでも。
清らかな心か。。。あーーー難しいなぁ・・・と思う。 清らかでいたい、と願う心は、もう既に汚れているから。 それとも、そう願うだけでも、まだ救いがあるというの?
こころはクラスメイト達と、それはもう楽しそうにけらけらと笑っていた。 あの子の毎日の努力は、このためなんだなぁ・・・と、しみじみ思う。 その姿を見て、あー清らかだなぁ。。。と、思った。
わたしは、たくさんたくさん、言葉には出来ないくらい、汚れてしまったけれど、でも、清らかな心に憧れる。 そうありたい、と今でも願う。
そんな、地べたを這う、ちいさな魂でいい。。。と、思う。 ちさき者でありたい、と、思う。。。
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