ひどい雨。
また台風が近づいている。
おもしろいくらいに急カーブを描いて、
日本列島に向かってきている。
それはまるで台風を引寄せる磁石みたいなものが、
九州あたりにひっついているみたいだ、と思う。
ぐいーんって、曲がってる。
おかしいなぁ。
*
今日はずいぶん真面目にお仕事に取り組む。
月末なので、いくぶん仕事量が増してきているから。
*
来月あたり、友達と飲み会をすることになった。
今からめぼしい人たちに声をかけなくてはいけない。
久しぶりの飲み会。
うれしいなぁ。
私が一人の大人になる時間。
飲み会は私にとって、
お酒を飲んで、成人らしく振る舞う時間だ。
それはちょっぴり孤独で、ちょっぴり自由になる時間。
きちんと一人で立つ。
そういう時間も時には必要なのだ。
楽しみ★
| 2004年09月28日(火) |
【800字小説】ひとりひとり |
ゴザンス800字小説
お題は(旅立ちの朝/部屋で/あの人が)
「ひとりひとり」
うすく紫色にそまった朝焼けは、いつ見ても美しい。
引越してきたばかりの部屋のベランダは、東向きに面していて地上9階建てのマンションの最上階にある。
あの人はそこで煙草を吸う。
片手にはコーヒーの入ったマグカップを持ち、濡れた髪のままぼんやりとしている。
新しいマンションで、新しい生活が始まろうとしている。
あの人が部屋の中に戻ってくるまでに、私は朝食をととのえ、テレビ番組の代わりに、軽いピアノの音色で部屋の中を満たす。
私はあの人の肩越しに紫色の空を見つめながら、あの人が早く振向いてくれないかと願う。
部屋の中はもう充分にととのえられていて、あたりにはこうばしいパンの香りがしている。
あの人は、煙草を吸いながら何を思うのだろう?
まだ明けて間もない空の、そのずっと向こうを見つめながら。
だんだん明けてゆく空は、紫色から徐々に白とブルーの空になっていく。
「ねぇ。」
私は結局、あの人の腕にそっと手をかけて、あの人をこちら側へ連れ戻す。
「ゆーちゃん、きれいな朝焼けだねえ。」
あの人はにっこりと笑顔で振り返り、そんな風に言う。
「ごはんできたよ。一緒に食べよう。」
私は苦笑まじりにそう言って、濡れた髪のあの人を部屋へいざなう。
今日からふたりの生活だね。
心の中だけでそうつぶやいて、私は目でそれを伝える。
あの人は向かい側の席で、新しく注がれたコーヒーを飲みながら、やさしくうんうんとうなづく。
あの人の笑顔の向こうに見える空は、今日も晴天だと確信に満ちた光をそそいでいる。
あの人が食器を洗っている間、私はベランダでぼんやりするだろう。
ひとりひとりで、ふたりどうしだ。
| 2004年09月27日(月) |
こころの中はまだ夏で、 |
旅行の間にいくつか本を読みました。
これはメモとして。
銀色夏生さんの「庭を森のようにしたい」
恩田陸さんの「球形の季節」
ダフネ・デュ・モーリアの「レイチェル」
以上の三冊。
しかしながら、タヒチの陽射しというのは読書には向いていません。
あ、タヒチに行ってきたのです。
ポリネシアに浮かぶ、小さな島々からなる国。
かといって水上コテージのすばらしい部屋の中は、
外とは対照的に薄暗くて、夜更かしも読書もままならないのでした。
それで昼間は海へぼちゃんとつかり、夜は眠るという生活をしていました。
読書は夕方の、日が落ちるまでの時間に。
あと、飛行機の中と。
銀色夏生さんのエッセイを読むと、いつも心がきゅっと引き締まる。
そして読みやすく楽しい。
娘のカンチとのやりとりなど、はらはらしながら読む。
恩田陸の話も、とてもおもしろい。
想像の中の街が、自分の後ろ側にずーんと広がる感じ。
あまりにタヒチと関係のない本を読んでいたので、
読みながらいつも変な気分になった。
もうすこし、夏らしい、からっとした本を持っていけばよかった。
日本に帰ってみればすっかり秋の気配で、
洋服も雑貨も、NEW ARRIVAL!!の文字が躍っている。
もしかしたらもうすぐ、
金木犀が街をつつむのかもしれない。
けれども私のこころの中はまだ夏のままだ。
あのタヒチの陽射し。こういうのを青空と呼ぶんだなぁと思う空。
うすいエメラルドグリーンと、ふかいセルリアンブルーが重なる海。
そして満天の星空。
写真の中に入り込んだような景色だねと、
言いあいながら目を細めて眺めた景色。
最後の楽園とよばれる島は、
永遠に夏のまま時が止まったような島だった。
ずーっとここにいたら、本当にどこかで
時間のねじがゆるんでしまうんじゃないかと思える。
あるひとつの魔法。
あるいは誰かの大きな夢の中なのかもしれない。
タヒチの現地のことばで「こんにちは」は「イアオラナ!」
アとオを同時に発音するような感じで、
イオラナ!と言ってるように聞こえる。
でも圧倒的に、おはようございます!こんにちは!と
日本語で話しかけられる回数の方が多く、
それは、島に訪れている観光客(多くがハネムーナー)の、
半分くらいが日本人で、従業員は皆、
日本人向けに日本語の教育がなされているからなのだろう。
ホテルには日本人スタッフもいて、
言葉の心配もあまりしなくてすむ。
そういう意味では、とてもリゾートナイズされていて、
日本人のいる海外には行きたくない、という人には
むむむっと思うかもしれない。
向こうの人は、皆すれ違うたびに笑顔で挨拶をしてくれて、
こちらもつられて笑顔で挨拶を返すような、
そうするうちに、自然とこちらからも笑顔で挨拶をしていて、
それがあたりまえのようになっていた。
あたたかい国特有の陽気さ。
いいなぁと思う。
ひとりで読書するより、誰かと歌っていたいような時間。
タヒチでの時間はそんなふうだった。
日本の空はあいかわらずの曇り空。
それはとても読書向きで、とても心安く、
私にとっては、日常の時間で。
徐々に徐々に、こころの中の夏を過ぎ越し、
こころの中に秋をもたらしたいと思う。
日本の時間。
それは平らかで落ち着いた時間。