2005年03月25日(金) |
しあわせって何だろう?なんて考えてみる |
泣きそうになって、
あわてて食器を洗う手を忙しく動かした。
泣きそうになって、
あわててコーヒーをごくりと飲んだ。
そんな朝。
*
今日も「トニー滝谷」の映像があたまから離れない。
白い空。宮沢りえの細く白い首と手足。イッセー尾形のうずくまった後姿。
もともとが村上春樹さんの原作を映画化したものだから、ということが関係しているだろうけれど、
まるで上質な小説を読んだ後のような高ぶりとふわふわした感じが、ずっとつきまとっている。
小説の「トニー滝谷」をもう一度読み返そうと思っているのだけれど、
(まったく記憶に残っていないけれど、私は確かにこの小説を読んでいるはずだと思う。)
ダンボールに詰め込まれたままのたくさんの本の中から、
この小説を探しだす気力が沸いてこない。
それでずっと、音のない映像だけが、
一週間たった今日も、まだいったりきたりしている。
*
今夜は送別会。
その人と別れること自体は悲しくない。
ただその人との記憶がよぎるたびに、心がしゅっとしぼむのだ。
しゅっとしぼんで、
きれいな笑顔だけが残る。
*
おいしいと評判のパン屋さんのパンにはまっている。
今日で3日目。
「いい」と思っても、それを続けて買ったり食べたりすることが少ない私には珍しい。
なぜだか毎日食べたくなる味。
同じ店のおなじパンばかり買う。
2005年03月23日(水) |
安全でも適切でもない人生ほど美しい |
久しぶりに
「泳ぐのに、安全でも適切でもありません」を読み返しています。
この小説が発売されたのが2002年の3月ということで、
もうまる3年も前に出た小説ということになります。
なんだか信じられない思いで「2002年」という数字を眺め、
この小説が出たばかりの頃に交わされた会話の、
近くて遠い、
でも、つい昨日のことのような、
親しくてやさしくて温かい感じのことを、
いろいろと思い出しました。
あの頃みえなかった、この短編集の良さが、
また違った形でみえたりもして、
3年という月日の、長いような短いような、微妙な感じを味わっています。
もちろん、この短編集の、
あの表紙と同じような、読んだ後のつるりとした手触りや、
どこか明るい印象のする、安全でも適切でもない人生の一場面のそれぞれも、
ちゃんと感じて味わっています。
*
「トニー滝谷」について書こうと思うと、
まず最初に浮かんでくるのが、いくつかの美しい映像のことで、
映画のことはよくわからないけれど、
独特な角度で切り取られた画面の、
その空の美しさにぼおっとなったことを覚えています。
土曜日。
私の土曜日は朝から忙しい。
夫を6時半に送り出し、
ばたんと扉が閉まったところから一日の家事がスタートする。
まず洗濯機をまわし、朝食の後片付けをする。
それから寝室を整え、家中掃除機をかけてまわり、
日頃手入れの行き届かないキッチン周りの油をおとし、
洗濯物を乾してから、必要であれば雑巾がけもし、
もう一回くらい洗濯機をまわしてシーツやらを洗い、
お風呂掃除とトイレ掃除にも着手する。
目に付いたところから掃除するので、
効率が悪いのだけど、
そういう性格だから、しょうがない。
今日は午後2時半に、
大阪環状線の「新今宮」という駅で人と待合わせをしている。
どこの町にもあることだろうけど、
たとえば京都なら、北へ行くほど地価が上がり、
町並みも高級住宅街らしくなっていく。
その反対に、
南へ行くほどなんとなくうらぶれていて治安だって良くなかったりする。
神戸なら山へ行くほど、そしてその逆に海側へ行くほど、ということになる。
大阪も、環状線のその円の、南の方へ下がっていくと、
それなりにうらぶれた、下町がひろがり始める。
その服、いったいどこで売っているの?みたいな
ベタベタな大阪っぽい服が、そうか、ここで売っているのか、
と納得するぐらいあちこちで売られている。
串かつ屋とどて焼きの店がひしめいていて、
土曜の3時から赤い顔をしたおじさんたちがいる。
オシャレなカフェなんてどこにもないし、
きれいな若い女性の華やいだ笑い声がひびくこともない。
そういう街。
そんな街に降り立って、
「オシャレ不要!」と宣言していた連れの言葉の意味がようやくのみこめた。
オシャレをして歩いたら、とても浮いてしまっていたことだろう。
おじさんばかりが目に付く。
自転車を押すおじさん。昼間から赤い顔をしているおじさん。
おじさんかと思うようなおばさん。
おばさんかと思うようなおじさんも。
「てんぐ」という名の串かつ(と、どて焼きもある)屋さんに入る。
午後3時30分くらいのこと。
基本は「どて2、カツ2」。
とりあえずビールで乾杯し、「どて1、カツ1」を注文する。
どて焼き1本と串カツ1本が出てくる。
あいまにキャベツを食べながら、
れんこん、アスパラ、えび、玉子、を更に食べる。
もう一回どて焼き。
約30分で店を出る。
次のお客さんが待っていたし、私たちには次に向かうべき店があったから。
環状線で京橋へ。
午後5時前から、「とよ」という路上のお店で立ち飲みをする。
熱燗と、うに・いくらのどっさり乗ったかっぱ巻きを食べる。
それからホタテの酢の物、まぐろの頬肉(えらのあたりかしら?)のたたき、トロ。
熱燗は、4人で7合くらい。
大阪でしかありえない、いかした店。
おばちゃんとお姉さんの「ありがとうございましたー」が気持ちいい店。
そして3軒目。
桜ノ宮。
京橋からここまで歩いていく。
酔い覚ましと、おなかをすかせるため。
ここで一人、私の夫が合流する。
知らなかったら普通に通りすぎてしまうような、普通の焼肉屋へ。
お店の名前を思い出せない。
店のおじさんとおばさんとの会話は、
「カルビ何グラム?」
グラムで注文する店もめずらしい。
店の内装の質とか店主の質とか客の質とかは、もうどうでもいい。
ただただ上等なお肉だ。
肉の味がする。
でも既にものすごくおなかがいっぱいで、
各種ひときれずつしか食べられなかった。
またぜひ行きたいが、慣れた人と一緒でないと、すこし不安な店でもある。
そして梅田に戻って4軒目。
今日は「大阪B級グルメツアー」と称して、こてこての大阪の店をまわってきたわけで、
最後のしめも、また私の知らない大阪の店。
そこは「北京」という名の立ち飲みバーで、
少し腰をかがめてくぐった入り口の奥に、
不思議に親密な明るいバーの世界がある。
マスターの気分次第で、10時とか10時半には閉まってしまう店だけれど、
この日はマスターの誕生日の前日で、ごきげんで11時くらいまで空いていた。
7時半くらいにあんぱん屋さんの前でもう一人合流。
連れの奥さん。
総勢6人で、14,5人しか入れない店に入る。
店に着いた頃は酔いもほどよく醒めていたのに、
店を出る頃にはまたすっかり酔っ払っていた。
焼酎(しかも泡盛)のロックを3杯(だったかな)飲む。
マスターご機嫌で、ありえない分量をグラスにそそぎ、
最後はボトルごと渡してくれた。
大阪ばんざい。
*
そして帰り着き、みごとに酔いつぶれ、
明け方、二日酔いと腹痛に襲われる。
私も胃腸薬を飲んでおけばよかったなぁと、少し思う。
(連れの人たちはコンビニで飲酒系胃薬ドリンクを2本飲んでいた)
そんな長い土曜日。
長い長い土曜日。