2004年11月17日(水) |
submerged under the music in this dark place |
半年ぶりに来店したという20代のお客さま。もちろん私とは初対面。
を、相手に、語っちゃったよ、ビートルズを。なるべく押し付けがましくなくしようと思うのだが、つい熱が入っちゃうな、ビートルズは。
ロックにはまったのは3歳でサイモン&ガーファンクルが最初。母のレコード。
ビートルズには10歳ではまった。両親とドライヴに出かけるたびに、カーステレオではビートルズがよくかかった。というか私が常にかけてくれるようせがんだ。帰宅しても私だけ車内に残り、ずっとビートルズを聴いていた。
居間のステレオでは青盤をよく聴いた。何て素晴らしいんだろう、と10歳の私は涙ぐむ。"A Day In The Life"を聴きながら。
歌詞の訳を読んだ。一箇所だけ意味が釈然としない。I'd love to turn you on. 何故これが「僕はあなたを目覚めさせたい」になるの?
家の隣の教会にいたアメリカ人の牧師さんに訊いた。そしたら顔色を変えて 「どこでその言葉を聞きました?!」 と言う。歌の歌詞です、と聞いてほっとした気配。「それは大変悪い言葉です」 としか言ってくれない。
数年後、turn (somebody) on が「麻薬で(または性的に)興奮させる」という意味だと知る。・・・目覚めさせる、か。なるほどねえ。
カハトさんご来店。以前にKSが連れてきたギリシャ人。クラプトンに少し似たすっきりと知的な顔をしている。
今は失業中で、KSに翻訳の仕事をもらっている。お金がないので一杯しか飲めないと言いながら、私にも一杯ご馳走してくれた。
昨日・今日と久しぶりに、BLACK AND BLUEのマスターが私のために編集してくれた形見のCDを流している。お客さまが 「いい曲ばかりだね」 と言ってくださったりする。カハトさんもハーマンズ・ハーミッツなどが気に入った様子。
私は結構色んなロックが好きな筈なのに。このCDの44曲は、優しい感傷的な曲ばかり。私がBLACK AND BLUEでそういう曲にばかり反応しては涙ぐんでたからだ。だからマスターはそんな曲ばかり集めてCDを作ったんだ。
今日はね。私はずっと独りだった。ずっとお客様と好きなロックの話をしながら。それでも何故かぽっかりと独りだった。音楽の中に沈んでいた。
2004年11月09日(火) |
very precious to me |
Rくんご来店。今日は日本語登録ソフトを持ってきてくれた。土曜〜日曜に22時間メンテを行った際に、私の単語登録を消してしまったのを気にして購入したらしい。律儀なこと。
我家に行ってソフトを入れ、他にも色々してくれて6時に帰る。また寝ないで仕事に行くのね。ご苦労様です。
ところで立派なPCおたくであるRくんは、前に愛用していたPowerbookを買換えに伴い手放す時に泣いたんだという。私もPCへの入れ込み具合からして泣くでしょう?と言われたが。
私は泣かないな。ルカと名づけて我が子呼ばわりしているこのPCだが、その価値は結局メモリにあるわけで、この子の外側はどうでもいい。
というより、私はある時からもうモノには一切執着しないことに決めたんだ。ずっと以前はモノをやたらと大事にしていた。本はきれいな状態のまま保存し、CDケースにも傷をつけないよう注意し、アクセサリーは内側が布のケースにそっと収納した。
それが一変したのは7年前。久しぶりに動物を飼いだしてからだ。兎やハムスターが本をはじめとしてあらゆるモノを囓る。最初はいちいちショックを受けていたが、だんだんと、この子たちに勝る価値のあるモノなんか何もないという心境になっていった。
以来私の携帯電話は、いくら機種変更をしても必ず動物の歯形がつくようになった。「うちの子」の歯形や爪痕がついた携帯は、逆に愛しく見えた。
今では私にとってかけがえのない「モノ」は殆ど存在しない。思い出という付加価値すら滅多にないのだ。
この世で本当に価値のあるものは、大抵かたちがない。そして本当に愛しいのは生き物だけだ。
ルカ。私は自分のPCにこの名前をつけたんだけど。
本当は私の兎の名前。飼えなくなって手放した子。今ではよその家で幸せに暮らしている。
ルカ。今でもこの名前を言うだけで、懐かしい温かさと切なさがこみあげる。
ルカ。おまえが元気でいるんだったら、おまえの写真はいらない。
私は何もいらない。文学と音楽と愛する人たちがいれば、他には何もいらない。
2004年10月31日(日) |
Oh, this rain it will continue. |
昨日ロンドンのカーボー(g)から電話があった。私の愛するロンドンにいながら、日本を恋しがって帰りたがっている。ライヴハウスにも行ったけど、下北沢のほうがいいってw ロンドンのアマチュアは子供っぽいのが多いでしょう?と言ったら、その通りだと言う。
冬のロンドンは最悪だ。日照時間は夏の半分になり、15時にはもう暗くなる。寒いし雨は多いし。――それでも私はうっとりするほど好きなんだけどね。
drizzleという単語は「霧雨」というほどの意味だが、凍えそうな音の響きがロンドンの雨にぴったりだ。本来は「血の雨が降る」という意味の単語らしい。
久しぶりのお休みだ。先週のお休みはNakeesに捧げたので、今週はどこにも行かずに家にこもる。
スザンヌ・ヴェガは1枚きりしか聴いたことがない。昔2ndアルバムを買ったのだが、いつの間にか手放してしまった。それが店にあったので、最近時々一人で聴いている。
1曲目に"Tom's Diner"というアカペラの曲が入っている。一本調子で淡々と歌っている。
I am sitting in the morning
At the diner on the corner
朝。降りやまぬ雨。角のダイナー。一人でコーヒーを飲む。常連客が入ってきて店員と談笑している。新聞には知らない俳優の死亡記事が載っている。ふと顔を上げると、外からこちらを見ている女性がいる。
There's a woman on the outside
Looking inside
Does she see me?
No she does not really see me
Cause she sees her own reflection
彼女は私を見てるんじゃない。ガラスに映った自分(her own reflection)を見てるんだ。その先に他人がいるのにも気づかず、自分だけを見ている。自分だけを。
Cause she sees her own reflection の1行を聴いた瞬間にぐっと泣いた。
―――数日前の話だ。
子供の頃から一人でいるのは好き。一人の時間は大切だ。
この2年半一人で暮らしてきて、寂しいと思ったことはなかった。恋人がいなければ欲しいし、いれば会いたいが、それはまた違う。
なのに今、ふとPCの画面から目をそらし、部屋を見回して思う。あれ? 私は独りきりだ。どうして私は独りなんだろう。
今年の記憶だけ振り返っても、私と結婚したいと言った男は何人かいたし、一緒に暮らそうと言った男、つきあいたいと言った男、このまま一生一緒にいたいと言った男、生活の面倒を見たいと言った男、妻に内緒でかこいたいと言った男までw それを全て無視し断り駄目にしておいて、今頃「寂しい」?
――――馬鹿じゃないの。
そのくせ Cause she sees her own reflection と聞いて泣いている。ひとが、ひとを見ないのは悲しい。私はいつも、誰かをひっつかんで力いっぱい愛してやりたいと思っている。なのになんで今、独りでいるんだろう。
スザンヌ・ヴェガのそのアルバムのタイトルは Solitude Standing (孤りぼっち)という。
お客のいない一人きりの時だけ聴いている。
2004年10月25日(月) |
wipe off the memory of loss |
sueokaさん(vo)来店。レッチリの By The Way をリクエストしたので、ジョン・フルシャンテの Loss も聴かせたら、いきなり気に入ったらしく4回連続リクエスト。4回かかったところでひかるちゃんが来店。途端に邪魔臭そうにするsueokaさん。ひかるちゃんが来なかったらもっと聴いたのかな。
Lossに出会ったのは8月上旬。タイミングもあってか、この曲は私の人生にくっきりと爪痕を刻んだ。
'We make the music that divides you.' の1行は呪文のようで、今に至るまで私を魅了し続けている。BLACK AND BLUEのマスターが亡くなった時に書いた詞にもこのフレーズを使った。詞をAKIHI にぽんと渡したら、彼がすぐに曲をつけた。それを二人でステージで歌って、私の追悼は終わった。
2時半に店を閉めてひかるちゃんと近所のショット・バーへ。カクテル1杯だけ飲んで4時帰宅。
2004年10月24日(日) |
tipsy music |

朝方、届いたばかりのピンク・フロイドのDVD(Early Recordings 1967-1970)を見て、あまりのかっこ良さに寝そうになるw
1st の'Interstellar Overdrive'。画面は赤や青のにじんだ光の明滅や、サイケデリックな切れ切れの映像。―――催眠術みたいだ。
軽くスナップをきかせてニック・メイスンがリズムを刻む。かちかちかちと時計、かと思えばふと途切れる脈拍。シド・バレットのギターはもはやメロディ楽器ではない。交信または共鳴。傲慢な台所のリノリウムのようなロジャー・ウォーターズのベース。たまにバロックという名の詐欺が――いや、そもそも'baroque'とはいびつという意味だ――どちらにしろこれはリック・ライトのオルガン。ニックはスティックをマレットに持ち替え、シドは時折テレキャスターを膝の上に置き、両手で和琴のようにはじいたり、拳で叩いたりしている。
――――こんな演奏が30分近くも続くのだ。・・・私は44時間寝てないのよ。しかも30分間、目を耳をそらすことが出来ない。気絶しそう・・・・・。
終わったらまたリプレイして、えんえんと見てしまう。
20時半に下北沢でひかるちゃんと待合せ。の、筈が。
21時過ぎ到着。Nakeesの演奏は21時から。「押しといて!」とNOGGYくん(b)にメールして、Stompに駆けつける。
間に合って真正面の席を取り、ジン・トニックをぐいぐい飲む。Nakeesはお酒が合うからね。
昨日は音響が悪かったので、今日はそのストレスを解消出来て良かった。
「キッチン」がいつもより速いのでぎょっとする。その速さは不安となって、逆に曲のテンションを上げる。この曲はオサムさん(vo,g)がギターを弾かない。リズム隊がここぞとばかりに本領発揮する。シャッフル感溢れるドラムに渋くうねるベースがなかなかの快感。
・・・なのだが、曲の真っ最中にひかるちゃんが笑い出す。笑うべき「4126」ではきょとんとしてるクセに。何であそこで馬鹿ウケなんだか・・・。
実は今日も含め、彼女と行動する時のお支払いは全部彼女持ち。お金がないのでそれは感謝してるんだけど。やっぱり次回は一人で来ようかなあ・・・。
しかしNakeesに見事にはまったひかるちゃんは、「次も行こうね!」と盛り上がっているのであった・・・。
演奏後にメンバーとKumaちゃんと飲む。ひろりんも一瞬現れた。
白石さん(drs)の奢りでタクシーで1時半帰宅。
2004年10月23日(土) |
river of treacle |
10:40に三軒茶屋着。駅からNOGGYくんに電話したら、今日のライヴは11時から12時に変更とのこと。・・・げっ。
とりあえず近くでコーヒー飲みつつひろりんを待つ。こんな時に限っていつも持ってる本を持っていない。しかしガービッジのMD持っていたので、全然退屈はしなかった。
1時間後にひろりん到着。結局今日のライヴは13時半からになったらしい。・・・げげっ。
今日・明日は、「三茶de大道芸」という年に一度のイベントとのこと。街のあちこちでパフォーマンスが行われている。Nakeesも今日・明日と路上で3ステージずつやるのだ。
時間があったのでカフェへ。白石さん(drs)にタイ・カレーをおごってもらう。木曜の夜以来初めての食事だ。美味。
1度目の演奏。今日はいつもの3人+トランペットとピアニカ。ドラムの音が遠かったり、ピアニカが聞こえなかったりしたが、なかなかリラックスして楽しそうにやっていたので良かった。
Nakeesの場合、場所によって多少なりとも変わるのはオサムさん(vo,g)だけで、NOGGYくん(b)と白石さんは全く変わらない。どこでも同じようにかたや楽しそうに、かたや陶酔して演奏している。いいリズム隊だなあ。
1度見たら帰るつもりだったが。結局15時からの2度目も見る。
この時はちょっと環境が悪かった。まずマイクの音が通っていないので、ボーカルが生声に近くなってしまった。見る位置も今回は道路を挟んだ為、時折車も通る。それと、これは言うと申し訳ないんだけど、子供と犬がいた。可愛い赤ちゃんと犬で、そりゃ私から見ても可愛かったけど、演奏中もずっとバンドに背を向けてその子たちを愛でるのはどうかと思う。頼むからもう少し彼らの音楽を尊重してあげて。いいバンドなんだから。
そんな悪環境で聴いた、大好きな「蜜の川」。そんな環境でやっぱり涙ぐんでる私。パブロフの犬状態だな、これは。
17時帰宅(22時間ぶり)。19時出勤。特に眠くはないが、ピンヒールブーツで殆どの時間立ちっぱなしだったので足が痛い(水脹れが出来ていた)。
ネットで知り合ったmarikoさんが、彼と一緒に店に来てくれた。お会いするのは初めて。お二人とも非常に感じの良い方たち。彼の方はミステリー好きらしく、スタンリイ・エリンやロアルド・ダールの名前が普通に出てくるのが嬉しい。
「ロックのことは何も知らないんです」 というmarikoさん。「ジミ・ヘンドリックスって人がいて、その人が死んだってことは知ってるんですけど」 と言うのを聞いて、その発言のあまりの爽やかさに好感を持ってしまった。いいなあ、このヒト。
手作りの石鹸をいただいた。有難うございます!
ひろりんと白石さんも来てくれた。ひろりんが物凄く眠そう。夕べオールナイトでバンドのリハして、そのままNakeesを見に行ってるから当然だよね。・・・とは言うものの、私も同じなんだった。特に眠くないのは何故だろう?
そして実は私、明日もNakeesのライヴに行くんだな。ファンの鑑だわ。
3日ぶりの出勤。(土日は元々休み。月曜は辞めるつもりで予定を入れていたので休んだ)
店に行ったら本当にお給料が置いてあった。オーナーからのメモもあり、月末も必ずきちんと払うとのこと。・・・あらら、どうしたのかしら。
KSが一番乗りで来店。入ってくるなり、「あれっ、いたんだ? 違う人がやってるのかと思ったよ」だって。思わず「なワケないでしょう!」と吐き捨てるように言ってしまう。KSはよくこうやって、会話する為だけに思ってもいないことを無意味に口にするのが嫌い。
UK来店。ニュー・ロマの好きな歯医者さん。以前来た時にジャパンが好きと言っていたので、約束通りBBCライヴをかける。これは激レア音源。だって私がラジオから録ったやつで、正規の音源は存在しないから。(ブートも聞いたことがない) 4枚目発表後の'81年のライヴで、公式ライヴ盤よりよっぽどいい演奏だ。
UKは9/25に一度来たきり(この方は毎月上海だの沖縄のM島だのに出張するので)だったので、お名前をすっかり忘れていた。にも関わらず、入ってくるなりジャパンをかける私。そっちは忘れないのねw
ひかるちゃんから、メールを再送してくれというメールが来た。意味不明(彼女のメールは大抵日本語として成り立っていない)なので電話して訊いたら、「30日がヒマって書いてくれたメールよ」 と言う。・・・送ってない。30日は仕事だし。私じゃないよと言ったら、「え、でも見たのよ。で、もう一度見たらそのメールが消えてたの」 と虚ろな声で言う。
・・・怪奇現象かよ。というか幻覚か?
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