2008年05月22日(木) |
He knows everything |
昼にCNNのニュースを見ていたら、"National Economics Challenge"という、いわば経済クイズ大会の全米決勝戦の模様を流していた。これに出てきた男性が素敵なのなんのって。22秒のところで"155"って答える彼。
その次に"Decreasing returns to scale."と答える様子にもううっとり。デビュー当時のビートルズみたいな時代遅れな髪型、神経質そうな細い指、低くて深い声、知的なまなざし、そしてニキビだらけの顔・・・うん、高校生だからね。コレ高校生のクイズ大会だもん。
そうだ、思えば私は、歴史上で一番好きな人物が「恐怖の大天使」サン・ジュストだった。要するにおそろしく頭の切れる冷たくて美形の若造。そういえば元々頭の良さそうな理屈っぽそうな線の細いタイプが好きで、当時そういうタイプが無口にベースを弾いていることが多かったからベーシスト好きになったんだっけ。
しかし、"Decreasing returns to scale."って、「規模に対する収穫逓減」と訳すの? 何のことですかそれは。
こういうのが生活無能力者だったりすると更にぐっと来るよなあ。ケインズ経済学は理解してるけど、自分のお財布の管理が出来ないとか。
ま、無能はともかくとして。博識な男っていいなあ。しかも日常からかけ離れた、天文、物理、数学といったジャンルにおいて無闇に知識のある男って。
今、アシモフの'Black Widowers'シリーズを1巻から原書で読み返しているところなのだが。特許弁護士、作家、数学教師、画家、有機化学者、政府の暗号専門家の6人がひたすら知識と教養の応酬をするこのシリーズは愉悦そのものであり、例えば「数学の目を見張るような美しさ」なんていうフレーズが感動的に出てくるくだりもある。
ところで高校生の彼は、痩せた見た目もいいけど、声がいい。
やっぱり声は、かなり重要だな。うん。(結局そんなまとめか)
He knows everything (彼は博識) *Minor Thing / Red Hot Chili Peppers (2002) の歌詞。
2008年05月20日(火) |
Honeysuckle, she's full of poison |
生徒がスイカズラの花束をくれたので、花瓶に生ける。先週私がスイカズラを見たことがないと言ったので、自宅の庭から持って来てくれたのだ。
この話の発端は、私が読書していた時のこと。'elm'という単語が一瞬わからなくて、2、3秒後に「あ、楡か」と思い出したものの、よく考えてみたら「ニレ」がどういう樹木かわからないことに気づいて可笑しかったのだ。英語を勉強しているとこういうことはたまにある。ただ単語の意味を覚えても、そもそものモノがわかっていない。
'honeysuckle'もそうだ。スイカズラという植物名は子供の頃から翻訳小説でしょっちゅう目にしているものの、実際どういうのだか全く知らなかった。
生徒が持ってきてくれたスイカズラは、想像していたのより素朴だった。英語の'honeysuckle'は通りの名前などにもつけられるが、ホールの歌詞からすると悪女のイメージなのだが。それを生徒に話したところ、「スイカズラって、他の植物にものすごく巻きつくんです」とのこと。・・・なるほど。
花を吸うと甘い蜜があるが(だから「吸い葛」)、果実は毒性があるらしい。一見可愛らしいが、扱い方を間違えると危険なのね。
Honeysuckle, she's full of poison (スイカズラには毒気がたっぷり) *Celebrity Skin / Hole (1998) の歌詞。
2008年05月17日(土) |
Sometimes I get impatient |
15時に元ダンナが茨城から来訪。今回は一緒にレオン・ラッセルを観るのだ。前回のライヴをあれだけこきおろしたものの、来ればまた観に行くとも。何しろ愛があるから。何しろベストワン・アーティストだから。
とはいえ。今回一階席でなく安い席を取ったのは、やはり何となく「そんなんでいいか」という気持ちがあったのか。
ビルボードに来るのも既に3度目だ。小さいハコだし、レオン・ラッセル一人でやるものと思い込んでいたが。なんと5人編成。コーラスこそいないが、もう一台のキーボードがいるのに驚く。レオン・ラッセルを観るのは今回で5回目だが、ライヴ映像まで含めても、彼以外の鍵盤がいるのは初めて見る。(ちなみに5回中4回を元ダンナと観ていることに気づいてびっくり)
前回のライヴに関して私は、「結局問題は、彼がこの数年間テーブル着席式の小さなライヴハウスでやってきた演奏を、2,000人入るホールでやってしまったということだ」と書いた。今回はまさに、「320席のライヴレストラン」であるから、そういう意味ではぴったりの雰囲気だ。そして前回より格段に音がいい。(前回が悪過ぎ)
オープニングは'Delta Lady'・・・ああ声だけは本当に昔から変わらない、変わらない・・・待てよ、本当にそうか?
今回初めて思ったこと。何故'Stranger In A Strange Land'を3倍速で、平坦化した歌メロでやるのか。彼の歌い方は一音ごとを粘らせてインパクトを持たせているが、実はこの発声法は肺活量も腹筋もたいして必要としない。それを更に上下を切ったメロディで速くやれば、もう全くラクに歌える。
・・・もしかしたらそういうことなのかもしれない。とにかく間違いなく言えることは、今の歌い方と演奏では、1970年代当時の演奏の持つ感動には遥かに及ばない。
'Hummingbird'でちょっと涙目になるが。これはもう条件反射だからして。
しかし。前回同様今回も客が最低。ベースやギターがボーカルを取ったりソロを弾いたりするところで一番沸くのは何なんだ。レオンが弾いてすらいない時に限って歓声が上がる。最前列の女性客は、ビートルズやストーンズの曲だと全部一緒に歌うのに、レオン・ラッセルのオリジナルは全く歌詞を知らないらしい。そもそも今日やったカヴァーは全部、レオン・ラッセルが'70年代からやっているお馴染みのナンバーばかりなのに、「へえ、こんなのやるんだ!」という反応が多い。
レオンでないキーボードが一人で弾き語りをしたが。ビートルズの'Blackbird'を一番だけ歌い、そのまますいっと'Yesterday'に移った。思わず元ダンナに「不愉快」とうったえる。ビートルズをただのエンターテインメントに堕とす適当にお洒落な演奏。まして'Yesterday'を。中指立てたいのを我慢する。
それが終わって、レオンが'A Song For You'を弾いた。しかしここにももう一台のキーボードがからむ。このきんきんした音が邪魔でしょうがない。何故一人で弾かないんだろう。音数が少なくて困るような音楽じゃないだろうに。
――――― 一人でやればいいのになあ。
と、いうわけで。もしも「適当に」楽しみたいという意識ならば非常に良いライヴだったけど。レオン・ラッセルという、私にとっては既に24年間来のベストワン・アーティスト(一応言うと好きなアーティストは100以上)のライヴだと思うならストレスの溜まる出来だった。そしてその原因の大半は、レオンが一人でやってくれれば解決する。
本気でメールでも送ってみようかな。一人でやって下さい、って。
―――こういう感想って書かないほうがいいんでしょ? お前だけがレオン・ラッセルを理解してるつもりかよ、って不快になったりするんでしょ? わかってますとも、そんなん。
でも音楽と文学にだけは時々こらえがきかないんだよ。そこだけはまだまるくなりたくない。だから思ったとおり書くわ。どうせただの素人だしね。
新宿ルミネでブッフェ・レストランに入り、イタリアンとアジアンの料理を山ほど食う。メイン3皿にデザート3皿。
西荻BITCHへ。前からマスターに元ダンナを紹介したかったのだ。
他の客にレオン・ラッセルを観て来たと行ったら、「行こうかと思ったけど、Bunnyさんが前回のライヴを良くないって言ってたから行かなかった」という。・・・あっ。
実はマスターもそうなのだ。も、もしや私、レオン・ラッセルの集客数下げてますか?(皆さん次回はきっといい出来ですよぉ! ・・・いや、根拠はないけど)
タクシーで3時頃帰宅。元ダンナはコーヒーを飲んだ後、うちから3分のホテルへ戻る。私は帰宅して7時に寝る。
Sometimes I get impatient (時々こらえがきかない) *Hummingbird / Leon Russell (1970) の歌詞。
2008年05月16日(金) |
Watch the plain clothes |
以下全部、昨日の日記のつけ足し。
昼過ぎに私服警官が一人現る。2月の空き巣の捜査らしい。何故今更?
妙ににこにこして、「怪しい者には気をつけてくださいね。いや、いきなり現われたお前が一番怪しいって思うかもしれませんけど。ちゃんと本物の警察官ですから」などと言う。上がって部屋の写真をデジカメで撮り、「連絡先の電話番号を訊いていいですか? 何時ごろなら電話しても大丈夫ですか?」などと訊く。
顔がちょっとリーダー(g)に似ていた。多分、私がビジュアル記憶障害だと知ったリーダーの変装なんだろう。
シャワーを浴びていてキレる。自制心が前より強まっているのに、それでも実際に抑えられないという現実があって、もろに体に負担がかかる。シャワー途中で飛び出すと部屋の床が水浸しになるから、後で拭くのが面倒だから、だからもうやめろよ、馬鹿みたいだから。そう口に出して言う。
カリフォルニアの最高裁が同性結婚を認めたという。判決を聞いて喜ぶ同性カップル達の中にはかなりの高齢者も多く、これが何故か一様に微笑ましい。
このニュースで驚いたのは、強硬な反対派がいるということ。既に次の対抗措置に向けて動いているらしい。・・・何とまあ。他にやることがないのか。
己には何の得にもならず、他人を不快にさせるだけなのに、ただ「気に入らない」だけの理由で反対運動をするとは。そんなの私が「でぶ」とか「納豆」の撲滅運動をするのと一緒じゃないか。アホか。
Watch the plain clothes (私服警官にご用心) *Subterranean Homesick Blues / Bob Dylan (1965) の歌詞。
2008年05月15日(木) |
I could give you lessons |
私の好きなジョン・エドワーズがオバマ支持を表明。おお。これで民主党の候補は決定だな。
しかしここでクリントンが落ちると、初の女性大統領誕生が大きく遠のくおそれが。
アメリカで「黒人男性」が選挙権を獲得したのは1870年、「女性」は1920年。黒人差別はすべきでないが、しかしこの数字を見る限り、人類の半分である女性はそれより更に差別されていることになる。ヒラリー・クリントンという人は、常にそれと戦ってきたのがよくわかる。CBSのインタビューによれば、彼女は子供の頃宇宙飛行士になりたくて、NASAにどうすればいいのか問い合わせたら、「男でないと駄目」と言われて泣いたんだという。そういう経験のせいか、結婚後も(それが夫の政治活動に不利に働くまでは)旧姓を名乗っていた。
頑張ってきたんだと思う。しかし、そのがむしゃらな姿勢が全部顔に表れていて、品がない。そして、彼女は例えばABCのチャールズ・ギブソン(大統領相手でも足を組んでふんぞりかえってインタビューする偉そうなおっさん)と話す時は非常に嬉しそうなくせに、CBSのケイティ・コーリック(女らしい知的美人)が相手だと妙に態度が硬い。女に敵対意識があるように見えるのだ。だとすれば、何より良くない。
ところでアメリカで、黒人男性と白人女性の上司ではどちらが嫌かというアンケートに対する回答は、圧倒的に「黒人男性上司が嫌」なんだそうだ。理由は、現実に白人女性上司がかなり増えてきたのでもう抵抗感がないかららしい。そうやって一人一人の女性が頑張って、「慣らして」いくしかないんだな。
I could give you lessons (あなた達を慣らしていく) *Loves Me Like a Brother / Guess Who (1975) の歌詞。
2008年05月13日(火) |
Quiet Life |
ABCのニュースで中国で地震があったことを知る。テレビがなくてPodcastのニュースだから、情報が少々遅い。
イーバンクのサイトが救援義捐金の募金をしていたので、口座から1,000円寄付。イーバンクが一番面倒がなくていい。ユニセフだと手続きが煩雑な上、えんえんと郵便物が来る羽目になる。
今読んでいるアシモフのエッセイ「変わる!」に、ちょうど地震の話が出てきたところだ。1556年の中国山西省で83万人が死傷し、今でも地震による最大死者記録だという。それ以外でも中国は大きな地震が多い。
ニュースでは更に、ミャンマーのサイクロン、アメリカの竜巻、インドの爆弾テロの件が立て続けに流れる。・・・毎日毎日不慮の事態で命を落とす人間が夥しい。日本でこんなに平穏に暮らすことが普通ではないんだということを実感する。気候は穏やかで政治情勢は安定、それどころか、スイッチひとつで部屋は数分で適温になり、蛇口をひねれば即座にお湯が出る。これが、金持ちでも何でもない庶民の生活レベルだ。SFみたいな話だと思う。
Quiet Life (平穏な生活) *Japan の曲。(1979) *'Quiet Life' by Japan→「日本の平穏な生活」ってことで。
2008年05月12日(月) |
みんな毎日同じこと話す 同じ服着て、同じテレビ見て |
ここんとこずっとスマッシング・パンプキンズの'Adore'にはまっている私だが。思えば昨年7月に出た新譜(ですらないか既に)をまるっきり聴いていない。持ってるのに。
加えて、9月に出たフー・ファイターズ、今年3月に出たキルズとブラック・クロウズ、4月に出たR.E.M.、全部ほとんど聴いていない。
それどころか、ストロークスの一番新しいアルバムさえ聴いていない。・・・2006年1月発売ですけど。持ってますけど。
何故かって? 別に何故でもない。実は私は元々こんな人間なのだ。
好きなバンドでも、新譜が出るたびにすぐ買って聴くという発想がそもそもない。新譜どころか、過去のアルバムだって聴いていないのもあるんだし、と思う。バンドが新譜を出すやその宣伝ツアーをするやり方も好きではない。
まして新譜がいちいち良いとも限らない。例え良かったとしても、それを私が今聴きたいかはまた別の話だ。本も音楽も、本気で取り組むにはそれなりの体調と体力を要するのであって、良いタイミングで向き合ってこそ最大の理解と感動が得られる筈だ。
ベストワンミュージシャンのレオン・ラッセルであっても、聴きたくない時は聴きたくない。
私の嫌いな言葉のひとつに、「僕らの世代は」というのがある。「いやあ僕らの世代はビートルズとか聴かないですよ」、「僕らの世代はメタルだから」、「僕らの世代だとそこは通ってきてないですね」、どれもむかむかする。何故同年代というだけで同じ体験をしないといけないんだ。何故群れでの行動を大前提にする。羊かおまえは。
他人と違えば偉いわけではないが。最も流通しているものを唯々諾々と受け取る義務もないだろう。私は同年代と同じテレビなんか見ていない。自分のリアルタイムにどんなバンドが流行っていたのかなんてよく知らない。
何の自慢にもならないが、カート・コバーンが死んでしまったと泣き声で電話してきた知人の女の子に「誰それ?」と言い放ったことがある私は、ニルヴァーナはしっかり「後追い」だ。別にそれを悔やむ気はない。然るべき時にしか出会いは来ない。
逆に言えば私はビートルズをリアルタイムで体感した気でいる。だって実際にビートルズはそこにあったんだ。私の家のステレオの上に。
私はよくこの日記で、母にビートルズを、K叔母にストーンズを、祖母にカーペンターズを教わったなどと書くが。実際はどれも、「これいいよ」と薦められたわけでもなんでもない。自分で彼女たちのレコード棚から見つけたのだ。
例えば小学生の頃、ある日D伯母の家に遊びに行った私は、一人二階のD伯母の部屋でレコード棚をあさり、一枚抜いてかけた。一曲目が、どこかで聴いたことがある気がした。とにかくすごく綺麗だった。もう一回聴いた。そしてもう一回聴いた。イーグルスってのがバンド名なのかな。'Hotel California'っていうタイトルはダサいな、などと思いつつ。何故か電気をつけずに薄暗くなった部屋で、何度も一人で聴いていた。
――――こういう体験を、たかが「同年代」と分け合う気はない。
結局、新譜が出るというだけで大騒ぎするのは、レッド・ホット・チリ・ペッパーズだけだ。―――レッチリだけはちょっと平静じゃいられない。何が違うのか、説明すら出来ません。うん。
みんな毎日同じこと話す 同じ服着て、同じテレビ見て *愛がなくちゃね / 矢野顕子 (1982) の歌詞。
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