毎週土曜日は、「嫁の日」。
正確には「嫁を演じる日」と言った方がピッタリでしょうか。
土曜日は、主人の両親が、我が家に来る日です。
雨が降ろうと、槍が降ろうと、誰かが風邪などひいていても、なんのその、
という感じで、土曜日はやってきます。 一週間は早い!
だから、週一だけネコを被って「にわか嫁」に化けている私は、
ずっと毎日、旦那様の御両親と同居されているお嫁さんを、
心から尊敬しているのです。
でも、そんな週一嫁にとっても、先日の土曜日は、良い日でした。
かねてから、親達のグチの原因となっていることについて、
私達夫婦と両親と、いろいろ話し合いをしました。
この日の義父母はとても心穏やかで、明るくて、子供や孫のことを、
心から思ってくれている優しい親でした。
むしろ、私が一番、感情的だったかもしれません。(お恥ずかしい・・・)
子供達が就職や進学などで、親元から離れてしまうことを、自分達は決して止めない、
ということを主人は上手に説明したと思います。
大昔、稲作の技術が入ってくるまで、人間は狩猟民族だったこと、
稲作が定着し、人間が農耕民族となり、土地に定着するようになり・・・
と、そんな話から説明した主人でしたが、聞いていて面白かったのです。
代々サラリーマン家系の我が家は、狩猟民族ということなのですね。
生活のために獲物を求めて、移動することも必要なのでしょう。
特に、今の就職難の時代に大阪で就職しなければダメだ、などの制限をかければ、
ますます就職が難しくなってしまいます。
主人の説明を、快く理解してくれた両親でした。
そんなものかも知れません。
わかっていても、何かのひょうしに、出てしまうのがグチというもの。
体調や機嫌のよい時は、理解力溢れる優しい人なんです。お互いにね。
年寄りに自分達の気持ちを理解してもらおうと、穏やかに、筋道をたてて話した主人も、
それなりに歳をとったんだなあ、と感じました。
若い頃は、気短かな一面もあったのに。
いろいろな日々を繰り返しながら、私達も歳をとっていくのですね。
でも、心配なんです。
いつまで、週一だけのネコ被り嫁でいられるのでしょう。
同居して、毎日ずっと顔を合わす生活になったら、もう「素」で勝負するしかないのね。
毎日嫁になるなんて、私には無理なようなー
とても不安です。
でも、私以上に、他の人達はもっと不安でしょうね。
それにしても、土曜日以外の私って、嫁でなければ何なんでしょう。
妻? 母? ただのオバサン?
ちょっと昔の話ですが、
今でも、時々思い出して笑ってしまう、私と義母との会話です。
某宅配便の事務所でアルバイトをしていた頃のこと。
定年後、会社から依頼された義父が、管理していた職場でした。
朝、義父から、「ハイ、おばあちゃんから」と言って、キュウリを渡されました。
畑で採れたばかりのデカキュウリが、五、六本、入った袋です。
せっかくの義母から貰った採れたて新鮮野菜、
なのに私は事務所の机に置いたまま、忘れて帰ってきてしまったのです。
車で三十分か四十分の事務所、わざわざ取りに戻るのもちょっと面倒でした。
まあ、いいや、明日も行くのだから、と思っていた矢先に、
義母から電話がかかってきました。
「あんた、まだキュウリ、もらってないんやろ」 なんだか深刻な口調。
(大げさやなあー キュウリごときで・・・)
「あっ、今朝、貰ったんやけど、私、忘れてきてしまったんやわ」努めて、明るく。
「えっ? どこへ?」と、びっくりする姑。
(もう、たいそうやなー、キュウリごときで・・・)
「机の上に置いてきたんよ」明るく、明るく。
「ええっ! なんで、机の上に置いたん。すぐにカバンの中に入れんとアカンで!」
ちょっと、怒ったような感じ。
(もぉ〜、大げさなんだから・・・ キュウリごときでぇー)
「でも、私のカバン、入れへんし・・・」
「えっ、そんな、小さなカバンか!?」
(財布とハンカチとティッシュだけ入れてる、バッグなんやけどなあ)
「カバンに入れへんのやったら、机の引き出しにでも入れなアカンやんか!」
ちょっと、声が高くなる義母。
(引き出しに、キュウリを入れるのもなあ・・なんだかなあ・・)
と、そこまできて、やっと、やっと、私は気付いたのです。(鈍感かも・・・)
私はキュウリのことを言い、義母はキュウリョウ(給料)のことを言っていると。
たしかに身内の気安さからか、義父は私のアルバイト代を時々忘れてしまい、
その時も、何日か過ぎていました。
それを知った義母が、私がお給料を受け取ったかどうかを気にして、電話をくれたのでした。
私は、自分の忘れてきたキュウリのことばかり思い、
義母は支払い忘れている、お給料のことばかり思い、
しばらく、平行線の会話が、トンチンカンに続いたのでした。
バッグに入りきれないほどのお給料、欲しかったなぁ