|
|
■■■
■■
■ 「ミスティック・リバー」を観る
2005年09月16日(金)
DVDデッキに録り貯めていたWOWOW映画の中から、「ミスティック・リバー」という映画を観ました。 この映画は2003年に公開された映画で、クリント・イーストウッドが監督・製作を手がけ、何と音楽まで手がけるという多才ぶりを発揮しています。しかしイーストウッド自身は映画に一切出演しておらず、今回は制作側に徹しています。
そして、この映画を彩るのが3大スターの共演。ショーン・ペン、ティム・ロビンス、ケヴィン・ベーコンという個性派俳優が揃い、人気作家デニス・ルヘインのただでさえ濃密な傑作ミステリー小説を、より重厚に演出している超豪華な映画です。 かつての幼馴染みが、ある殺人事件をきっかけに25年ぶりに再会、事件の真相究明とともに、深い哀しみを秘めた3人それぞれの人生が少しずつ明らかになっていくさまが、静謐にして陰影に富んだ筆致で語られていきます。主演の3人、ショーン・ペン、ティム・ロビンス、ケヴィン・ベーコンをはじめキャスト全員の演技が高次元でぶつかり合い、素晴らしいアンサンブルを披露していますぞ。
ストーリーを解説しましょう。ジミー、ショーン、デイブの3人は少年時代、決して仲が良いわけではなかったがよく一緒に遊んでいた。ある日、いつものように3人が路上で遊んでいたところ、突然見ず知らずの大人たちが現われ、デイブを車で連れ去っていってしまう。ジミーとショーンの2人は、それをなすすべなく見送ることしか出来なかった。数日後、デイブは無事保護され、町の人々は喜びに沸くが、彼がどんな目にあったのかを敢えて口にする者はいない。それ以来3人が会うこともなくなった。それから25年後。ある日、ジミーの19歳になる娘が死体で発見される。殺人課の刑事となったショーンはこの事件を担当することになる。一方、ジミーは犯人への激しい怒りを募らせる。やがて、捜査線上にはデイブが浮かび上がってくるのだったが……というお話。
この映画はアカデミー賞とゴールデン・グローブ賞でショーン・ペンが主演男優賞を、ティム・ロビンスが助演男優賞を揃って獲得し、さらに全米批評家協会賞でクリント・イーストウッドが監督賞を受賞。その他アカデミー賞とゴールデン・グローブ賞で助演女優賞、監督賞、脚色賞にノミネート、また英国やヨーロッパ、日本でも高い評価を受けました。
やはり、ショーン・ペンとティム・ロビンスがアカデミー賞を受賞しただけあって、特にこの2人の演技は非常に光っていたと思います。小さな町を牛耳っているワルだが、実は家族を何よりも大切にしていて、最愛の娘が殺されたことにより、深い悲しみと激しい憤りに震えるショーン・ペン。そして、少年時代に誘拐・監禁され性的暴行を受けたという暗い過去を持ち、現在は一人息子とキャッチボールをし、毎朝息子をスクールバスまで見送りに行くという平凡な父親としての人生を送るも、未だに心に陰を持つティム・ロビンス。この2人は大人になっても町を離れることなく、それぞれの妻が姉妹であることもあり、ショーン・ペン演じるジミーの娘が殺害されたことにより、再び交流を持つことになります。この2人のやりとりと感情の変化が、映画全体を通して非常に濃密に描かれていると思いました。
ケヴィン・ベーコンは、町を出て殺人課の刑事となったショーン役を演じていますが、彼は事件の当事者ではなく捜査する立場であるという役柄上、一歩引いた形でかつての幼なじみである2人に関わってきますが、ケヴィン・ベーコンもなくてはならない存在感を醸し出しています。やはり彼は主役ではなく、こういったちょっと引いた役がとても似合うと思います。彼の存在は、映画の中でいつもスパイスとしての効果を見事に発揮していると思いますね。
実は僕、ショーン・ペンが出演している映画を観るのは、マイケル・ダグラス主演の「ゲーム」(1997)以来2度目なんです。この映画でのショーン・ペンはそれほど目立った演技はしていなかったので、実質最近の彼の演技を観るのはこれが初めてと言うことになります。なので今回の彼の役にはすんなり入っていくことができましたが、驚いたのはもう一人のティム・ロビンスでした。
ティム・ロビンスの出演作品も実はそれほど観ているわけではないのですが、僕の中でのティム・ロビンスと言えば、やはり無実の罪で脱獄不可能と言われた刑務所に入れられ、そこから奇跡の脱獄を果たすというスティーブン・キング原作の感動作「ショーシャンクの空に」(1994)が印象的です。しかし、今回の映画では「ショーシャンクの空に」の時のような活き活きとしたイメージは見る影もなく、非常に老け込んでしまったなあという印象を受けました。まあ「ショーシャンクの空に」から10年も経っているわけですから、だいぶ恰幅がよくなり、髪の毛も白髪が増え、落ち着いた雰囲気で抑制の利いた演技が評価されて、彼自身初のアカデミー賞を獲得することができたんでしょうけどね。 最近では「宇宙戦争」でもチョイ役で出演しているのですが、そのときの役なんて、一見ティム・ロビンスだとはわからないぐらいの老け役でしたぞ。 ティム・ロビンスって、調べてみたらトム・クルーズ主演の「トップガン」(1986)でも脇役で出演していたんですね。知りませんでした。そういえば「トップガン」にはメグ・ライアンもチョイ役で出てたなあ。
さて、ケヴィン・ベーコンですが、彼の普通の役、というか正義感あふれる役を観たのは久しぶりな気がします。彼は「13日の金曜日」の第1作目(1980)で、キャンプ場でカノジョとエッチをした後、カノジョが部屋を出ていき、独りでベッドの上で待っている時に、ベッドの下から串刺しにされるというホラー映画では古典的な殺され方でシリーズ初の犠牲者となりましたが、10年後の「フラットライナーズ」(1990)では普通の好青年、翌年の「JFK」(1991)では服役中の証言者というチョイ役を演じていました。しかし、「激流」(1994)で初の悪役を演じて、以後はその悪役顔が印象として定着したのか、どうも悪役というイメージが強いんですよね。実際他の悪役と言えば「インビジブル」(2000)ぐらいしかないんですけど。 彼は「激流」の後、全米一悪名高きアルカトラズ刑務所を閉鎖に追い込んだ、一人の囚人と彼を支えた若き弁護士の友情を描いた衝撃の実話「告発」(1995)で、囚人ヘンリー・ヤング役を見事に演じ、演技派俳優という地位を確立しました。
今回の映画では、僕が観た映画の中ではトム・ハンクス主演の「アポロ13」以来久々の“普通の”ケヴィン・ベーコンが見られたと思います。責任感と正義感のあふれた刑事で、でも疑惑をもたれている幼なじみが犯人であると認めたくないと言う人間らしさもあり、さらには何らかの理由で妻と別離し、時々電話をかけては、受話器の向こうで何も言葉を発しない妻に向かって語りかけたりと、非常に魅力的な男性像を演じています。風貌も刑事だけあってスーツでビシッと決め、髪型も短くさっぱりと切り揃えられており、清潔感にあふれていて婦人警官にも食事に誘われていましたぞ。こんなに小ぎれいなベーコンを観るのは珍しいですが、顔がかなりシャープなので、こういったスーツ姿もけっこう似合うなあと実感しました。
この映画、オススメ度はかなり高いですぞ!
明日は、監督クリント・イーストウッドの魅力に迫ってみたいと思います。
|
|
|