Mako Hakkinenn's Voice
by Mako Hakkinenn



 2005年F1シーズン総括
2005年10月17日(月)

 2005年のF1シーズンは、「新時代到来」「世代交代」、この二言に尽きますな。多くのフェラーリファンは認めたくはないでしょうが、これが現実です。6年にも及んだフェラーリの黄金時代が終焉し、ルノーによる新時代が到来。そして5年連続で王座に君臨したミハエル・シューマッハの時代が終わり、フェルナンド・アロンソ、キミ・ライコネンという新世代の台頭が始まった。そういうことです。

 この事実を受け入れられない者たちは、決まってこう言います。「今年はマシンが悪かっただけだ」と……。そう、それこそがF1グランプリなのです。ドライバー、マシン、エンジン、タイヤ、そして運、F1とは、これら総合力で競われるモータースポーツですから、「マシンが悪かった」としても敗者は敗者です。それを言うなら、キミ・ライコネンだって「今年はエンジンが悪かっただけ」ですからねえ。マシンが良ければ他のドライバーでもチャンピオンになれる可能性はあるわけです。そもそも「今年はマシンが悪かっただけだ」ということは、言い換えれば昨年までの5年間は「マシンのおかげでチャンピオンになれた」とも言えるわけですよね。

 あと、ものすごく不思議でしょうがないのですが、「ミハエル・シューマッハが実力で負けたわけではない」という、その根拠は一体なんなのでしょうかね。今シーズンだけを見ても、シューマッハとアロンソ、さらにはライコネンの3人の実力だけを比べることなんて不可能なことですし、「シューマッハが実力で負けるなんてあり得ない」という考え自体があり得ないですね。
 無論シューマッハはF1の歴史の中でもっとも成功したドライバーであり、その実力や技術は現役ドライバーの中では群を抜いているのは間違いありません。
 しかし、例え優れたドライバーでも、必ず体力的、精神的に衰えてくるものです。そうでなければバケモノです。一方のアロンソやライコネンは、まだまだこれから成長していく若い世代。シューマッハが実力で負けたとしても無理はないでしょう。

 「シューマッハが実力では負けていない」ということを証明することはできませんが、「アロンソが実力でシューマッハに打ち勝った」事実はあります。第4戦サンマリノグランプリ、抜きどころの少ないイモラでしたが、47周目に2位に浮上したシューマッハは、トップのアロンソより2秒以上も速いペースでアロンソを追走。勢いの止まらないシューマッハは51周目、ついにアロンソの背後に迫り、オーバーテイクのチャンスを伺いました。
 シューマッハは、マシンを左右に振りながらプレッシャーをかけ続けましたが、アロンソは要所を抑えシューマッハをブロック。テール・トゥ・ノーズの激しいバトルは実に10ラップ以上、ファイナルラップの最終コーナーまで続きましたが、アロンソがシューマッハを見事に抑え切り、マレーシア、バーレーンに続く3連勝を達成しました。第18戦日本グランプリで、アロンソがシューマッハを2度に渡ってパスしていったシーンも、まだ記憶に新しいですね。

 シューマッハの話はこれくらいにして、アロンソとライコネンの話に移りましょう。

 単純に「速さ」だけで言えば、アロンソ&ルノーよりもライコネン&マクラーレンの方が優れていたことは言うまでもありません。実際ライコネンは今シーズン、トップ独走中にマシントラブルでリタイヤを余儀なくされたレースが何度かあり、そのたびに獲れたはずの10ポイントをすべて失ってしまったわけですから、取り損ねた10ポイントを獲得していれば、2005年のチャンピオンは変わっていたかもしれません。

 しかし、先程も述べたように、F1グランプリはドライバー、マシン、エンジン、タイヤ、そして運の総合力で競われるモータースポーツです。マクラーレンはマシンとエンジンに信頼性を欠き、そしてルノーは圧倒的な信頼性と安定した速さ、そしてアロンソのミスのない完璧な走りで、ダブルタイトルをものにしたのです。
 ライコネン&マクラーレンのようにいくら速かったとしても、最後まで走り切れなければまったく意味がないのです。その点では、ルノーの信頼性の良さは際立っていましたね。ルノーを除くトップチームは、トップスピードを稼ぐため、すべて7速セミオートマティックのトランスミッションを採用していますが、ルノーは6速セミオートマチックを採用しているので、ギア比の効率も良く、エンジンやギアボックスへの負担も少なかったのが信頼性に繋がったのでしょう。

 さて、最後に、スペイン人としては初、F1史上最年少のチャンピオンとなったフェルナンド・アロンソですが、彼に対しても「マシンと(ライバルが脱落していった)運だけでチャンピオンになった」という声をよく耳にしますが。それは断じて違います。
 確かに今年のルノーの信頼性はピカイチ、マシンもそこそこ速かったですが、やはり何と言っても、アロンソの実力なくしては、チャンピオンにはなれなかったでしょう。何と言っても、同じマシンに乗る、シューマッハとは互角とも言われた実力者ジャンカルロ・フィジケラですら勝てなかったのですから。

 アロンソはまだ若干24歳ですが、その走りはすでにベテランのようなストイックな走りで、非常に冷静沈着で安定した速さを持ち、そして何と言っても今シーズンは、まったくミスをすることがありませんでした。ライコネンも非常に速いドライバーですが、ライコネンにはミスも多いですから、トータル的な実力で言えば、今のところライコネンのよりもアロンソの方が一歩秀でているのは確かですね。アロンソがこの先も何度かチャンピオンになることは間違いないでしょう。

 シューマッハの引退が囁かれる現在、F1は新たな天才を見いだしたのです。



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 2005年F1グランプリ、閉幕
2005年10月16日(日)

 いや〜、とうとう今年も終わってしまいましたね、F1シーズン。今年は史上最多の全19戦でシーズンを争われたのですが、長いと思っていたシーズンも、終わってみればあっという間でしたな。何だかF1シーズンを追いかけていると、1年があっという間に過ぎてしまうような気がします。ミカ・ハッキネンが初めてチャンピオンになった98年などついこの間のような感覚ですが、もうあれから7年も経ってしまったんですねえ。月日が経つのは早いものです。

 さて、今日は2005年F1グランプリを締めくくる最終戦中国グランプリの決勝が行われたわけですが、その決勝スタートの直前に、思わぬアクシデントが起こりました。レコノサンスラップ(グリッドに並ぶためのアウトラップ)で、ミハエル・シューマッハ(フェラーリ)とクリスチャン・アルバース(ミナルディ)が接触。両者のマシンは激しく壊れたため、スペアカーを使用することになり、ピットスタートを余儀なくされてしまいました。なおこの接触事故はレース後審議され、ミハエル・シューマッハが「厳重注意」を受けました。

 「厳重注意」とは、わかりやすく言えば「今回は目をつぶるが、気をつけろよ」ということで、つまりは不問ということですな。やっぱりシューマッハは琢磨と違って、何をやってもまったくお咎めがなくていいですねえ。え?この場合はレースが始まる前のアクシデントだから処分の対象にはならないって……?

 ……アホか!

 それにしても、今回の件に限らず、昨年のヨーロッパグランプリでのバリチェロと琢磨の一件と言い、モナコでのシューマッハとモントーヤの一件と言い、フェラーリのバックミラーは見にくいのでしょうかねえ。どう見てもこれらの3件、シューマッハもバリチェロも後ろ全然見ていませんよ。構造上後方視界に問題があるのか、はたまた「後ろなど見る必要はない」というフェラーリの慢心なのかはわかりませんが、いずれにしても何とかしてくれないと、それこそ「危険」ですがな。

 決勝はポールポジションのフェルナンド・アロンソ(ルノー)が素晴らしいスタートを決め、トップで1コーナーへ。3番グリッドのキミ・ライコネン(マクラーレン・メルセデス)も好スタートを切り、2番グリッドのジャンカルロ・フィジケラ(ルノー)に並びかけますが、イン側にいたフィジケラがポジションをキープしたため、ルノーが1-2体制のまま1コーナーをクリアしていきます。
 一方、佐藤琢磨(BAR・ホンダ)が17番グリッドから素晴らしいスタートダッシュを見せたかに思われましたが、ジャンプスタート(フライング)の裁定が下され、佐藤はドライブスルー・ペナルティを受け、最後尾まで順位を落とす苦しい展開となってしまいます。

 ……あ〜あ、またやっちゃったよ琢磨君……。

 トップのアロンソはファステストラップを連発し、2番手以下を大きく引き離しに掛かります。コンストラクターズ・タイトル獲得のためにルノーの前に出たいマクラーレン・メルセデスでしたが、ライコネンとモントーヤはフィジケラにブロックされてしまい、アロンソは独走態勢を築きます。そして18周目、4番手走行のモントーヤが排水溝の蓋を踏むというアクシデントに見舞われ、緊急ピットインを余儀なくされてしまいました。結局モントーヤはその後リタイヤしてしまいます。
 モントーヤのアクシデントにより導入された、異物の排除とコースのチェックのためのセーフティカーにより、各ドライバーは続々と1回目のピットストップを実施する中、何とまだセーフティーカー走行中の22周目、10番手までポジションを上げていたミハエル・シューマッハが単独でスピンしコースオフ。コースに復帰できずリタイアに終わってしまいました。
 今回は予選で6番手と、まずまずのポジションからスタートするはずだったのですが、スタート前の接触と言いこのスピンオフによるリタイヤと言い、今年のシューマッハとフェラーリを象徴する幕切れとなりましたな。

 セーフティカーの導入でアドバンテージを失ったアロンソでしたが、リスタート後も快調で2番手のチームメイトフィジケラを引き離します。しかし29周目に、今度はジョーダンのナレイン・カーティケヤンが大クラッシュを喫し、マシンの撤去のため再びセーフティカーが導入されます。これよりアロンソ、フィジケラ、ライコネンをはじめ、ほとんどのドライバーが2度目のピットストップを実施。このピットストップでライコネンはフィジケラを交わすことに成功し、ポジションをアップさせます。
 
 そんな中、琢磨はピットに入らずそのまま周回したため、大ききポジションをアップさせました。レースは34周目にリスタート。8番手までポジションをアップした琢磨でしたが、ギアボックスのトラブルに見舞われ突然マシンがスローダウン。BAR・ホンダでの最後のレースは残念ながらリタイアに終わってしまいました。
 
 その後49周目に、2度目のセーフティカー導入でピットインする際、フィジケラはピットレーンで意図的にペースを落とし、ライコネンやバリチェロを塞いだ行為がレギュレーション違反と判断され、フィジケラにドライブスルー・ペナルティの裁定が下ります。フィジケラは49周目にドライブスルー・ペナルティを受けますが、幸いひとつポジションを落としただけの4位でコースに復帰しました。
 
 レースも残り5周を切ったところで、2位のライコネンがファステストラップを連発し、トップのアロンソにプレッシャーをかけます。ライコネンは4秒差まで追い詰めますが、アロンソが逃げ切りチェッカー。アロンソの勝利により、ルノーのコンストラクターズ・タイトルが決定しました。この結果、ルノーはドライバーズ・タイトルに続き、ルノーエンジンとしては97年以来、オール・ルノー体制では初のコンストラクターズ・タイトルも獲得しました。

 終わってみれば、今シーズン安定した強さを維持し、コンスタンスに上位フィニッシュを重ねてタイトルを獲得したルノーとフェルナンド・アロンソが最後に花を添え、そして今後も良きライバルになるであろうキミ・ライコネンが、速いがもろいマシンに苦しみながら何とかアロンソに食らいつき、最後も2位でレースを終えたといった感じですな。

 来シーズンも、この2人の争いになることは間違いないでしょう。



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 F1最終戦中国グランプリ予選
2005年10月15日(土)

 今週末はいよいよ2005年F1グランプリの最終戦中国グランプリですね。今日はその予選が行われました。

 中国グランプリの舞台となる上海インターナショナル・サーキットの天候は晴れ。気温23℃、路面温度23℃というコンディションの中、午後1時(日本時間午後2時)、まずは前戦日本グランプリでレース結果から除外という無念の裁定を受けた佐藤琢磨(BAR・ホンダ)がアタック。琢磨は大きなミスもなく手堅く1周をまとめ、フリー走行でのベストタイムから、1.8秒遅れの1分38秒083を記録しました。トップチームが1分34秒台を記録しているので、この琢磨のタイムは決して速いタイムではありませんが、まだ路面コンディションが悪いトップバッターでのアタックだったこと、そして決勝で後方からスタートすることを想定して燃料を多めに積んでいるものと思われ、ま、今回は致し方ないですな。

 琢磨に続いて2番目にアタックに入ったのは、前戦日本グランプリのオープニングラップのアクシデントでリタイアに終わったファン・パブロ・モントーヤ(マクラーレン・メルセデス)。ルノーと争っているコンストラクターズ選手権を奪取するためには、ここでモントーヤが、どこまでスターティンググリッドを上げられるかということも大きなポイントとなります。しかし、決してコンディションがいい状況とはいえない序盤のアタックながら、琢磨のタイムを約1.9秒も上回る素晴らしいタイムを記録し、マシンのポテンシャルの差をまざまざと見せつけました。

 その後、3番目アタックのヤルノ・トゥルーリ(トヨタ)、10番目のルーベンス・バリチェッロ(フェラーリ)、13番目のラルフ・シューマッハ(トヨタ)と実力者がアタックに入りますが、モントーヤのタイムを上回れないまま、14番目のミハエル・シューマッハ(フェラーリ)を迎えます。
 昨年シューマッハは初開催だった中国グランプリの予選で、1コーナーでの大スピンによりノータイムに終わりました。今年もフリー走行からタイムが伸びず苦しい展開が続きましたが、注目のタイムアタックでは1コーナーから2コーナーにかけてやや膨らんだものの、セクター3ではこの時点のベストタイムを記録し、暫定トップのモントーヤを上回ることはできなかったものの、2番手につけました。

 そして、今シーズン最後の予選は、いよいよ最終組を迎えます。最終組最初の出走はジェンソン・バトン(BAR・ホンダ)。無駄のないスムーズな走りで、セクター1、セクター2とベストタイムをマークしたバトンは、モントーヤのタイムを上回り暫定トップに躍り出ます。
 そして2005年チャンピオン、フェルナンド・アロンソ(ルノー)がアタックに入ります。フリー走行ではマクラーレン・メルセデスに及びませんでしたが、全セクターでベストタイムを記録する素晴らしい走りをみせ、バトンを交わしてトップに立ちます。続くジャンカルロ・フィジケラ(ルノー)は、1コーナーの進入でミスがみられたものの、セクター2ではベストタイムを記録し、アロンソのタイムには及ばなかったものの、僅差で2番手につけます。
 
 ルノー勢がこの時点でワンツー体制を築いたところで、日本グランプリで劇的な逆転劇を見せたキミ・ライコネン(マクラーレン・メルセデス)が最終出走者としてアタックに入ります。この日2回のフリー走行ではいずれもトップタイムを記録するなど、マシンを仕上げてきたライコネンでしたが、予選ではコーナリング時に修正を加えるところが見られ、結局それがタイムにも影響し、ルノーの2台を上回ることができず3番手に留まりました。これによりルノーはフロントローを独占。コンストラクターズ・タイトル獲得に向け、最高の形で決勝を迎えることになりました。アロンソは今シーズン6回目、記念すべきミシュラン100回目のポールシッターとなりました。

 結果、明日の決勝はアロンソ、フィジケラ、ライコネン、バトン、モントーヤ、M・シューマッハ、クルサード、バリチェロの順でレースがスタートされます。佐藤琢磨はジョーダンのナイレン・カーティケアンにも及ばず17番手からの出走ですが、明日の追い上げに期待したいですね。今シーズンの不調や不運を払拭する、素晴らしい走りを見せて欲しいものです。



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 F1日本グランプリ、最終結論
2005年10月14日(金)

 今更ですが、先週末行われたF1第18戦日本グランプリの決勝中に起こった、最終シケインでの佐藤琢磨(BAR・ホンダ)とヤルノ・トゥルーリ(トヨタ)の接触事故についての、僕が判断した最終結論をご報告いたします。

 まずもう一度アクシデントの状況を振り返ってみましょう。


アクシデントが起こった最終シケイン
(c)F1-Live.com

 アクシデントは10周目の最終シケインで起こりました。佐藤琢磨は前をゆくトゥルーリを交わそうと、右に曲がる最終シケインの入口でトゥルーリのイン側に入りました。しかしアウト側にいたトゥルーリもコーナリングをするために右へステアリングを切り、両者は接触。琢磨の左フロントタイヤがトゥルーリの右サイドにヒットし、トゥルーリはその場でリタイアとなってしまいます。琢磨もマシンにダメージを受けますが、交換できるパーツではなかったためそのまま走行を続け、最終的に13位でフィニッシュしました。
 しかし、レース後の審議で琢磨に過失があると判断され、琢磨は13位完走というリザルトを抹消されるペナルティを受け、この結果次戦中国グランプリの予選でもっとも不利な1番手出走を余儀なくされました。

 レース中継の映像はアウト側のトゥルーリ側から撮られた真横からの映像しかなかったため、どちらに否があるのかという判断ができなかったのですが、アクシデントの瞬間をほぼ正面から捉えた写真を発見したので、今回改めて判断することができました。

 最終結論、今回のアクシデントは、どちらにも否はない。

 

アクシデントの瞬間
(c)F1-Live.com

 写真を見てもおわかりのように、接触した地点はシケイン入口のイン側の縁石付近で、この時点で琢磨の左フロントがトゥルーリの右サイドにヒットしているのを見ても、琢磨が少なくともコーナーに進入する時点でトゥルーリにマシンの半分以上並んでいたことがわかります。
 これは琢磨がコーナー手前ですでに完全にトゥルーリのインに入っていたことを意味し、その場合トゥルーリは、ルール上琢磨にラインを譲るためにイン側をマシン1台分開ける必要がありました。ところが、トゥルーリはイン側のスペースを開けず、通常のコーナリングと同じようにターンインしたために接触してしまいました。

 しかし、琢磨のためにイン側のスペースを開けずに、通常のコーナリングをしようとインに切り込んできたトゥルーリに否があるとも言い切れません。琢磨がシケインでインに入りトゥルーリをパスしようとした試みは、ここ数年のF1シーンでは見られないようなチャレンジングな試みであり、トゥルーリもまさかここで仕掛けてくるとは思っていなかったでしょう。トゥルーリはあの瞬間、琢磨が引くと判断して通常のコーナリングを行おうとしたのです。ところが、琢磨は一歩も引かずインを突き、両者は接触してしまいました。

 琢磨のように一瞬のチャンスを突いて前に出ようとするのもレース。そしてトゥルーリのように「易々とぬかせはしないぞ」と抑え込もうとするのもまたレース。レースとは、ドライバー同士の熾烈な意地のぶつかり合いなのです。おそらくあのアイルトン・セナも、ジル・ビルヌーヴも、ナイジェル・マンセルも、今回の琢磨と同じことをしたに違いありません。

 上記の理由から、琢磨もトゥルーリも“レース”をしていた上でのアクシデントであり、単純なレースアクシデントであったと結論づけ、処分は「両者不問」が適正であると判断します。従って琢磨に否があるというFIAの判断は不当であったと断言します。ましてや、リザルト抹消という処分は、今年の予選ルールからすれば極めて重すぎる処分であり、まったくあり得ないものであると言わざるを得ません。

 仮に今回の処分に「常習犯」に対する見せしめの意味があるのだとしたら、前々回のベルギーでミハエル・シューマッハに追突した際に受けた、「次戦10グリッド降格」というあまりにも厳しい処分は何だったのでしょうか。通常、例えベルギーの一件のように完全に琢磨に否があるケースだったとしても、決して悪質なものではなかったのは紛れもない事実であり、厳重注意か、重くて罰金程度が妥当です。
 もしこのベルギーでの「次戦10グリッド降格」という処分自体が、すでに過去幾度か起こしている接触事故を含めた「常習犯」という意味での重い処罰だったとしたら、それこそお門違いというものです。

 琢磨は過去にも接触アクシデントに見舞われていますが、その多くは琢磨には否はありません。現代の生ぬるいF1シーンの中で、琢磨の攻撃的なドライビングスタイルが、他のドライバーの常識を越えていたと言うだけです。言い換えれば、今のF1はあまりにも幼稚でのほほんとした“お遊び”に成り果ててしまったということです。

 琢磨の日本グランプリでの試みが否定されるのであれば、もはやF1はレースなどではありません。琢磨のドライビングスタイルこそが真のレーサーに必要なものであることは、海外のF1ファンも認めていることです。佐藤琢磨は、この甘っちょろい現代のF1にこそ必要なドライバーなのです。

 それから、琢磨に対する度重なる重い処罰は、単なるFIAの人種差別ですよ。そんなにFIAは日本人が嫌いなのか?F1がヨーロッパの文化と言われたのはもはや過去の話。今や日本を始め、アメリカ、中国、バーレーン、マレーシア、トルコと世界各国を転戦する現代において、未だにこのような人種差別が存在しているというのが愚かとしか言いようがありませんな。

 今回の僕の主張に意義のある方はBarまでどうぞ。受けて立ちますぞ。



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 サッカー、日本代表VSウクライナ
2005年10月13日(木)

 東欧遠征中のサッカー日本代表は昨日、ワールドカップ出場を決めているウクライナ代表と対戦し、0―1で敗れました。後半44分、途中出場したDF箕輪が自陣ゴール前で反則を取られ、MFフシンにPKを決められました。後半8分、MF中田浩二が退場となり10対11の戦いを強いられ、DF陣を中心に懸命にしのぎ続けたましたが、最後に力尽きてしまいました。

 ウクライナはエースのFWシェフチェンコ、もう1人の主力FWボロニンが欠場していたのですが、日本は序盤にペースを握られ、中盤からの激しいチェックを受け、なかなかリズムをつかめませんでした。それでも、徐々に速攻から好機を作り始め、0―0で前半を終えます。
 日本は後半から高原に代え、FW鈴木を投入。しかし、同8分に悪夢が訪れました。1ボランチのMF中田浩が背後からのタックルで一発退場となってしまったのです。今回から新投入した戦術「ダイヤモンド型」の中盤のテストは、東欧遠征のテーマでした。前のラトビア戦では華麗なパス回しを披露しましたが、今回は数的不利なって、構想は破たんしてしまいました。

 その後、日本は代表初出場の箕輪らを投入。3バックに変更しましたが、押し込まれる場面が続きます。その後も何とかしのいでいたのですが、後半44分に箕輪がPKを取られ、これをMFフシンに決められてしまいました。判定に納得のいかないジーコ監督が顔を赤らめて激怒していましたね。

 気温10度、冷たい雨、アウエーのブーイング。劣悪な環境が続く後半44分、DF箕輪の反則で献上したPKが日本のゴールを揺らしてしまったわけですが、ジーコ監督は試合後のインタビューで、「私はしゃべらない。レフェリーをここに呼んで答えてもらえばいい。あんなのは犯罪だ。黒い服を着た人に試合を台なしにされたッ!」と怒鳴り散らしていました。
 試合は僕が見ても首をひねりたくなる判定の連続でした。そして訪れた最後のPK判定で、ラトビア人のラユックス主審に対するジーコ監督の怒りが爆発しました。試合終了のホイッスル直後には、雨の中を突進して「恥を知れ!」と怒鳴りつけていたそうです。しかし「選手は1人足りなくなってもよくやった。選手には、この試合は忘れていいといった。切り替えるしかない」と、選手達に対する気遣いは忘れていませんでした。

 しかしジーコ監督、試合直後に主審に「恥を知れ!」と吐き捨てたことに関して、会見では「それでも自分に対して何も反応を示さない。後ろめたいことがあるからだろう」と“八百長疑惑”まで訴え、「あれは犯罪。警察を呼んでもらってもおかしくない」と、かつてないほどの荒れようでしたね。
 前半からダイヤモンド型の新しい中盤が機能した手応えはあったと思います。ゴールこそありませんでしたが、FW高原を中心に攻撃の形は作りました。しかしジーコ監督は主審の不公平な判定に気付き、選手に注意も促していたそうです。その直後の後半8分、中田浩がレッドカードで一発退場。ジーコ監督は「あれが退場なのか。その前の高原へのファウルはカードすら出なかった。露骨すぎる」とどなり散らしていました。

 アウエー戦、土砂降りの雨、数的不利。ワールドカップで起こりうる事態を経験したことは収穫だったでしょう。しかし何を言っても「敗戦」という記録は残ります。ハンガリー戦と違うのは、ジーコ・ジャパンが海外遠征で初めて未勝利で帰国することですね。ワールドカップまで8ヶ月。この屈辱を怒りをバネに変えるしかないですね。



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 早朝のダイラをワインディング
2005年10月12日(水)

 いや〜、ここ数日は天気も良く、風もすっかり冷たくなり、良い気候が続いていますな!僕は最近朝方なのですが、引っ越した新居のすぐ目の前に新しくできたばかりの片側2車線の幹線道路があり、早朝はまだクルマがほとんど走っていないのでとても気持ちがいいですぞ!まるでまだ誰もいないサーキットに来たような感じです。

 さて、某Yさんがプレステ2のレースゲームの最高峰「グランツーリスモ4」を買ったらしく、某KさんとともにS2000でタイムアタックを競い合っているのですが、それが影響してか、S2000で走りたくなったので、今朝は朝の6時に家を出て、仕事に行く前に久しぶりにダイラでワインディングをしてきました。

 ダイラとは日本平という静岡市郊外にある小高い山の通称で、その山頂には展望台やお土産屋さん、さらには静岡市のテレビ電波を受信しているテレビ塔、また徳川家康が埋葬されている久能山東照宮に行けるロープウェイなどもある観光名所で、富士山や駿河湾や清水の街を一望できるので「日本三大絶景」のひとつに数えられ、「サザエさん」のオープニングでも紹介されたほど有名な場所です。

 また、ダイラは地元の走り屋のメッカとしても知られており、登り口から舗装された山道を登り、「ジェットコースター」「おでん屋コーナー」「小おでん」「アルプスコーナー」「セリカコーナー」など、昔から走り屋の間では知られている数々のチャレンジングなセクションを抜けて山頂までアタックしていくチューンドカーやバイクが集まります。
 「ジェットコースター」は、アップダウンが激しいタイトな蛇行セクション、「おでん屋コーナー」はその昔コーナーの外側におでん屋があり、そこにギャラリー達が集まってアタックを見物していたという、ダイラではもっとも有名な名物コーナー、「小おでん」はそのおでん屋コーナーとよく似た一回り小さなコーナー、「アルプスコーナー」は崖沿いの南アルプスが見える高速コーナー、「セリカコーナー」はその昔セリカが激しくクラッシュして炎上したことからその名が付いた伝説のコーナーです。ちなみに友人のサトルが以前そのセリカコーナーで、自慢の愛車アルテッツァをクラッシュさせてしまったので、一部では「サトテッツァコーナー」とも言われています。

 うちからダイラの登り口まではクルマで10分ほどで行け、そこから山頂までは普通に走るとクルマで5分ほどで行けます。先程書いた走り屋さんたちは、さすがに一般車両や観光バスなどが走る日中はアタックしませんが、主に早朝や夜に集まってきます。

 で、早朝に来る人たちと夜に来る人たちは大きく種類が分かれていて、どちらかというとのんびり朝日の山道をクルージングして、山頂に朝焼けの富士山を愛でに来るような健康的な往年のドライバーやライダーは、早朝にやってきて、仲間達としばらくクルマやバイクの話に花を咲かせて帰っていきます。そう言う人たちは、昔のフォードGTとかシェルビー・コブラとかロータス・エリーゼとかフェラーリ・スパイダーといったマニアックなクルマに乗っていることが多く、朝っぱらからダイラの山頂には珍しい名車が集まり、さながらダイラ・モーターショー2005といった感じです。なので話題もどちらかというと「あのクルマはどうだ」とかいった名車談義が多いです。

 一方、「頭文字D」のように、コーナーを攻め込んでタイムアタックをするような戦闘的な人たちは、ヘッドライトの光で対向車を遠くから発見できるように、主に夜にやってきます。通常は登り口から山頂まで目指すときに、まず1本目はパトカーがいないかとか事故車がいないかとか路面コンディションはどうかといった偵察をかねて、クルージングペースで登っていくのですが、血気盛んな若造はいきなり一本目から限界アタックを開始します。
 そんな彼らが乗るクルマは、GT−Rやシルビア、ロードスターやRX−7,インテRやシビックR、インプやランエボ、さらにはトレノやレビン(AE86)、果てはカプチーノやビートなどといった蒼々たる国産スポーツカーたちで、皆何かしらのチューニングを施しています。なので話題も「サスのバネレートがどうだ」とか「車高がこうだ」とか「スタビライザーがああだ」といったかなり専門的なものが多いです。

 さて、今日は僕も健康的に朝のダイラを走り、あいにくまだハードトップをつけているのでオープンにはできなかったですが、雲ひとつかかっていない美しい富士山を堪能してきましたぞ。登ってくる間は、スピードこそそれほど出しませんでしたが、1速と2速だけを使って、S2000が回せる9000回転ギリギリまでエンジンを回して、7500回転以上で初めて切り替わると言われるVテックエンジンを久々に堪能してきました。

 ただし、Vテックに切り替わる瞬間の感覚は、僕にはほとんどわかりません……。

 僕のS2000は皆さんもご存じのように完全ノーマルですが、ノーマルでもエンジンが9000回転まで回せる上に純正の太いマフラーが2本もあるので、甲高いエンジン音を響かせながら山頂まで登りました。すると、ホンダのバイクに乗るおじさんが「いい音響かせてたねえ〜!」と山頂で声を掛けてきてくれました。
 山頂には、今朝は何と日本車唯一のボンドカー、トヨタ2000GT、さらには1960年代のフォードのクラシックカーも来ており、名車博覧会と化していましたぞ!

 だいたいダイラに行くと、朝夜関係なく事故車に遭遇するのですが、幸い今朝は事故車はいませんでした。しかし、よく見かける事故車の多くは、「どうやったらこんな場所で事故るの?」といった場所でよく事故っています。



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 ひっそりと「それマコ」アップ
2005年10月11日(火)

●「それゆけ!マコ・ハッキネン」第8集をアップ

 えー、日本グランプリ開幕前のBarでの告知通り、日本グランプリ決勝終了後に「それマコ」の最新作をアップしたわけですが、今回の日本グランプリは、特に琢磨ファン、トゥルーリファン、トヨタファンにとっては複雑な思いがあったようで、完全にアップするタイミングを誤ってしまったようですな。

 ま、一応告知だけしておきますが、今回は「それマコ」の話題もひっそりと流れていくことでしょう。イラストを仕上げてくれたそばさん、いつもありがと〜ッ!いち早く「それマコ」を読んで下さったゆうきちさん、ありがと〜ッ!そして僕が謝るのも何なんですが、トヨタファンのゆうきちさん、トゥルーリファンののりPさん、ごめんなさい。

 きっと琢磨に憤慨しているんだろうなあ……。



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 2005鈴鹿、期待から落胆、そして失望……
2005年10月10日(月)

 先週の日曜日にF1第18戦日本グランプリの決勝が行われましたが、前日の予選で5番グリッドを獲得し、母国での表彰台も期待された日本人ドライバー佐藤琢磨(BAR・ホンダ)は、スタート直後の1コーナーでアウト側に流れてしまいコースオフを喫してしまいました。さらにコースに戻ろうとしたところにルーベンス・バリチェロ(フェラーリ)が現れ接触。両者はコースに復帰しますが、マシンを修復するため、ピットインを余儀なくされました。琢磨はフロントウイングの交換と給油を行い、バリチェロとともにいきなり最後尾に後退してしまいました。

 その後琢磨は懸命に追い上げを試みたのですが、今度は10周目の最終シケイン手前で、ヤルノ・トゥルーリをパスしようとしてインに入ったところで接触してしまい、琢磨のマシンには大きなダメージはなかったものの、トゥルーリのマシンはサイド部分が大きく破損し、その場でリタイヤとなってしまいました。

 佐藤琢磨は今シーズン、不運やミスが重なり思うような成績を上げられず、2戦前のベルギーグランプリではミハエル・シューマッハに追突して波紋を呼びました。その直後にBAR・ホンダはジェンソン・バトンの来季残留を発表し、琢磨は事実上BARのレギュラーシートを失うこととなりました。
 ところが、その数日後に状況が一変し、まずホンダがBARを完全買収したと発表し、来シーズンはBARがオールホンダになることが明らかになりました。さらにその発表と同時に、来シーズンは新チームがF1に参戦し、ホンダがそのチームにもエンジンを供給するという驚愕の事実も明らかとなりました。そしてそのホンダエンジンを搭載する新規参入チームから、佐藤琢磨にレギュラードライバーとしてのオファーが来ていることも発表されました。

 そんな状況の中での、琢磨の今回の出来事は、少なからず来季のドライバー生命に影響してくることは間違いないでしょう。琢磨はこれまで幾多に渡って接触事故の原因を引き起こしているとされ、FIAではブラックリストに入っているという噂が流れ、最悪の場合F1参戦に必要なスーパーライセンスの剥奪もあり得るという噂まで飛び交っています。
 また琢磨と接触したヤルノ・トゥルーリは「琢磨はF1に必要ない」と厳しく批判し、トヨタの冨田務代表は「ドライバーは攻撃的であるべきだが、しかしフェアに戦わなくてはならない」とコメントしました。

 今回の琢磨とトゥルーリのアクシデントは、レース後にFIAのレース・スチュワードによって審議され、双方のドライバーとチームマネージャーを別々に呼んで映像を見せて事情聴取を行い、最終的に琢磨に否があると判断され、琢磨は今回の13位というレース結果から除外する処分が下されました。

 結論から言いましょう。琢磨は、今のF1には向いていないようです。

 放送された事故の瞬間の映像は真横から捕らえられたもので、上空から撮影されたものではないので、僕の目から見てどちらに否があるのかは判断できませんが、今回の琢磨とトゥルーリの一件は、もはやどちらに否があるという問題ではありません。琢磨が立て続けに接触事故を起こしてしまったことが問題なのです。

 今回のレースでは、共にシケインで1周目と10周目にそれぞれ接触して一方のマシンがはじき出されるという同じようなアクシデントが起きました。しかしその処分は明らかに分かれ、前者のビルニューブが25秒タイム加算に留まったのに対し、後者の琢磨には失格処分という重いペナルティ。琢磨は先に述べたようにベルギーグランプリ時にもペナルティを受けていますが、この時もピッツォニアが罰金の処分なのに対し琢磨には予選グリッド10番降格という重いペナルティを受けていることから、FIAからはブラックリスト登載者にされていると受け止められているようです。
 今回も再びアクシデントの原因者ということで、周囲の目は厳しいものがあります。当事者のトゥルーリが批難するのはともかく、トヨタの冨田務代表が公式リリースで名を挙げて琢磨について批難したことは衝撃を与えています。

 今回の琢磨とトゥルーリのアクシデントは、両者レースをしていた結果、アクシデントを起こしてしまっただけのことです。そしてたまたま琢磨は運悪くアクシデントが重なってしまっただけのことです。
 しかし、立て続けに接触事故を起こしてしまった以上、言い逃れはできません。単独事故で勝手にコースアウトしてリタイヤするならともかく、今回もベルギーの時も、トゥルーリやシューマッハといった、とばっちりを食ってしまったドライバーがいるわけですから。そう言う意味では、琢磨は批判されても仕方がないと僕は思いますね。「またあいつかよ!」と言われて当然でしょう。

 ただ、今回は鈴鹿に観戦に来ていたファンはもちろん、日本中の多くの琢磨ファン、トゥルーリファン、トヨタファンが期待していたのは紛れもない事実です。そんな多くの期待を、琢磨は台無しにしてぶち壊してしまいました。はっきり言って期待を大きく裏切られました。失望しました。
 トゥルーリとの接触だけではありません。1コーナーでのオーバーランもそうです。琢磨は鈴鹿で期待に応え良い結果を残すためにも、予選5番手という絶好のチャンスを無駄にしないためにも、もっと慎重に行くべきでした。

 トヨタの冨田務代表が言っていた言葉は、半分は同意できます。ドライバーは攻撃的であるべきです。しかし僕は、琢磨がフェアではなかったとは思いません。ただ、慎重さが足りない。

 さて、ここから書くことは、今回の件に関して琢磨に否定的な方、そしてトヨタファン、トゥルーリファンの方にとっては許し難い内容かもしれませんが、あえて書かせていただきます。

 今回のトゥルーリとのアクシデント、そしてベルギーでの明らかに琢磨に否があるミハエル・シューマッハとのアクシデントも含め、琢磨がこれまで起こしてきたすべてのアクシデントは、他のドライバーが起こしてきたアクシデント同様、単なる「レースアクシデント」に過ぎない。
 そして、F1はただのパレードではない。レースなのだ。すべてのドライバーは、前をゆくライバルを抜こうとし、後ろから追い上げるライバルに抜かれまいとする。レースは、その意地と意地のぶつかり合いに他ならない。よってコーナー手前で一方が一瞬のチャンスを突いてインに飛び込み、もう一方は抜かれまいとインを締めようとする。その結果両者が接触してしまうのは、レースとしてごく当たり前のことであり、あって当然のことである。

 しかしながら、ここ数年のF1は、ただでさえグルーブドタイヤという意味のないタイヤのせいでオーバーテイクが激減しているにもかかわらず、接触した際の処罰がうるさくなり、はっきり言ってレースとしては生ぬるいものになってしまった。そしてその処罰は、明らかに琢磨に対してだけ厳しすぎる。これは紛れもない事実である。

 僕は声を大にして言いたい。公平に処罰を与えられないのであれば、処罰などやめてしまえ。そして相当悪質で危険なアクシデントを除いて、いちいち接触や追突でピリピリ審議などするな。審議したいなら、処罰を与えたいなら、公平にせよと。

 もし来年彼にシートがあるのなら、来年に期待しましょう。



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 ミカ・ハッキネンの再来と世代交代
2005年10月09日(日)

 今日はF1第18戦日本グランプリの決勝が三重県の鈴鹿サーキットで行われました。今回のレースは様々なことが起こりました。見終わった今は、正直非常に複雑な心境です。母国での表彰台も期待された佐藤琢磨(BAR・ホンダ)は5番グリッドという好位置からスタートしましたが、その直後の1コーナーでコースオフしてしまい最後尾に後退、その後10周目に最終シケインでヤルノ・トゥルーリ(トヨタ)と接触し、トゥルーリをリタイヤに追い込んでしまいました。

 琢磨については明日改めて書くことにして、今日はその他の点に触れましょう。

 さて、マクラーレン・メルセデスのキミ・ライコネンは12歳からカートでレースキャリアをスタートさせ、英フォーミュラ・ルノー、フォーミュラ・フォードを戦い、F3未経験で2001年にザウバーからのデビューを決めました。その年の開幕前、ライセンス問題では揉めに揉めましたが、シーズン中盤には誰もがその事を忘れるほどの旋風を巻き起こし、翌年にはF1からの離脱を決めていたミカ・ハッキネンに見初められ、彼の後任としてマクラーレンに大抜擢されました。2003年マレーシアグランプリで念願の初優勝を果たし、2003、2004、そして今シーズンと3年連続でチャンピオン争いを演じ、もはやその才能は誰もが認めるものでしょう。

 ただ、ハッキネンファンである僕としては、もちろんライコネンは応援しているものの、まだ若造というイメージが強く、ライコネンの強さもマクラーレン・メルセデスのマシンの速さによるところが大きいという認識で、初優勝はハッキネンより圧倒的に早いものの、実力ではまだまだハッキネンには及ばないと思っていました。

 しかし僕は今回、ライコネンを「ミカ・ハッキネンの再来」であると認めました。

 今回の日本グランプリでは、初日のフリー走行で、もう毎度お馴染みとなってしまったメルセデスエンジンのトラブルによって、またもエンジン交換を余儀なくされ10グリッド降格が確定。さらに予選では、前戦で優勝しているため本来ならもっとも有利なはずのラストアタッカーであったにも関わらず雨にたたられ、決勝は17番手からのスタートとなってしまいました。
 しかし決勝ではオープニングラップでは一気に12番手まで順位を上げ、その後新チャンピオンのフェルナンド・アロンソ(ルノー)とともに皇帝ミハエル・シューマッハ(フェラーリ)をパスするなど、マシンの速さを遺憾なく発揮して怒濤の追い上げを見せます。

 レース終盤の45周目にライコネンが最後のピットインを終えた時点で、ライコネンはすでにピットインを終えているトップのジャンカルロ・フィジケラ(ルノー)から十数秒遅れの2位につけてました。しかし、こここからライコネンの最後の追い上げが始まります。ライコネンはトップのフィジケラより1秒以上速いペースで猛追し、50周目にフィジケラの背後を捕らえ、チャンスを伺います。
 そしてフィジケラとライコネンはテール・トゥ・ノーズのまま最終シケインを抜けファイナルラップに突入。ライコネンはホームストレートでフィジケラのスリップストリームに入り、1コーナーで鮮やかにオーバーテイクしトップに躍り出ると、そのままトップでチェッカーを受けました。

 この悪魔のような速さ!まったくミスをしない冷静さ!そして何と言ってもファイナルラップでの勝負強さ!今回のライコネンの走りは、まさに「ノッているときの」ハッキネンのキレた走りそのものでした。何と言っても17番手からの優勝ですからねえ!いくらマシンが速いとはいえ、おそらくライコネンでなければ、優勝するまでには至らなかったでしょう。見事な勝ちっぷりでした。

 今回のレースは、はっきりと世代交代が浮き彫りになったレースでもありましたね。ライコネン同様16番手という後方からのスタートを余儀なくされた若き新王者フェルナンド・アロンソも、マシンの優位性を活かして、ペースの上がらないF1史上最強の男ミハエル・シューマッハを2度に渡ってオーバーテイクしていきましたからねえ。そのオーバーテイクシーンは、まさに世代交代以外の何物でもないでしょう。

 もちろん、ミハエル・シューマッハの実力は、今もまったく衰えているとは思いません。スピードで劣るフェラーリのマシンで、迫り来るアロンソやライコネンを抜かせまいと抑え続ける彼の「ライン上の駆け引き」は今回も冴え渡り、最終的に抜かれはしましたが、実に見事だと改めて実感しました。シューマッハの最強たるゆえんが垣間見られた場面でしたね。

 しかし、F1はドライバーの実力だけでなく、マシン、タイヤ、エンジン、チーム力、そして運と、すべての要素がうまく噛み合って初めて勝つことができるのです。そしてその「総合力」を競うのが、チャンピオンシップなのです。今シーズンはシューマッハにとって、マシン、タイヤ、そして運に見放されたシーズンだったということですね。そして新チャンピオンとなったアロンソは、「総合力」でシューマッハに打ち勝ったということです。

 F1はフェラーリ&シューマッハの時代から、ルノー&アロンソ、マクラーレン&ライコネンという、新しい時代に突入しました。今日のレースは、それを象徴する素晴らしいレースだったと思います。フェラーリを凌駕するチームが、そしてシューマッハを凌駕するドライバーが、ようやく台頭する時代がやってきたんですね。

 最後に、世代交代を認めたくない方々もいらっしゃるようですが、世代交代というものは、遅かれ早かれ必ず訪れるものなのですよ皆さん。ミハエル・シューマッハといえども生身の人間です。「シューマッハに限って衰えるとこなどあり得ない」なんていうのは、「ヨン様はおならなどしない」と言っているのと同じぐらい幻想に過ぎませんよ。それに、若いドライバーが芽生え、シューマッハを越えるドライバーが現れてくれないことの方が、F1にとって憂いですよ。シューマッハが最後まで負けないまま引退した日にや、その後のドライバーがどんなに頑張ったって、F1は物足りなくなってしまいますよ。「シューマッハのいないF1はつまらない」とね。

 若いドライバーがベテランに打ち勝って引導を渡し、次の時代のF1を引き継いでいくからこそ、F1はこの先もずっと続いていくんです。それとも、シューマッハ引退とともに、F1観るのをやめますか?



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 F1日本グランプリ、大波乱の予選
2005年10月08日(土)

 さあ!今日は待ちに待ったF1第18戦日本グランプリです!前戦ブラジルグランプリで新世代チャンピオンが決定したF1グランプリが、いよいよ海を渡って鈴鹿にやってきます!史上最年少チャンピオンとなったフェルナンド・アロンソ(ルノー)、最後までタイトル争いを繰り広げた最速男キミ・ライコネン(マクラーレン・メルセデス)、今回ついに王座から陥落するも鈴鹿にはめっぽう強いミハエル・シューマッハ(フェラーリ)、ジャパンパワーを引っ提げたジェンソン・バトン、佐藤琢磨のBAR・ホンダ勢とヤルノ・トゥルーリ、ラルフ・シューマッハのトヨタ勢対決など、見所盛りだくさんのグランプリになりそうですね!

 さて、今日はその予選が行われたのですが、路面コンディションはウェット。午前中まで降っていた雨は午後の予選セッションまでには止みましたが、路面は濡れたままの状態で、トップバッターのデビッド・クルサード(レッドブル・コスワース)はスタンダード・ウェットを履いて、水しぶきを上げながらのセッションを開始しました。
 そのクルサードですが、最近ではファンの間で「先生」と言われているほどのベテランとなったクルサードが、非常に判断が難しい中でのアタックで熟練の走りが冴え渡り、1分46秒892というタイムをマークし、トップバッターだったにもかかわらず最終的に6番手につけたのがさすがでした。

 2組目8番目に出走したトヨタのヤルノ・トゥルーリは、チームの母国グランプリで、今季のトヨタの躍進を予選を通じて引っ張ってきただけにポールポジションを狙う走りが期待されましたが、デグナーカーブの2つ目の進入でバランスを崩し、コースオフを喫してしまいました。
 その後3組目のトップ(11番目)の佐藤琢磨(BAR・ホンダ)がコースインする直前に再び雨が降り始め、難しいコンディションとなりました。そんな中佐藤は落ち着いた走りを見せ、セクター1ではクルサードを上回るタイムを記録。中間区間のセクター2ではやや遅れますが、セクター3では最速タイムを記録し、1分46秒841で暫定トップに躍り出ます。雨の中佐藤の走りを見守ったスタンドのファンは一斉に湧き上がりますが、喜びも束の間、クリスチャン・クリエン(レッドブル・コスワース)が暫定トップに躍り出ます。

 13番目にはトヨタのラルフ・シューマッハ。初代フォーミュラ・ニッポン・チャンピオンで鈴鹿を得意としているラルフは、すべての区間でクリエンのタイムを上回るタイムアタックを見せ、母国グランプリに賭けるトヨタの期待に見事に応える暫定トップタイムを記録しました。そしてもう一方の日本勢、ジェンソン・バトン(BAR・ホンダ)はコンマ035秒と僅かに及ばず2番手。続くルーベンス・バリチェロ(フェラーリ)は8番手タイムに留まってしまいました。

 そして注目の最終組。雨を得意としているジャンカルロ・フィジケラ(ルノー)はセクター1でラルフを上回る走りを見せましたが、アタック中に雨脚がさらに強くなる不運が重なり、この時点で3番手に留まりました。そしてさらに不運だったのはフィジケラの次にアタックに入ったミハエル・シューマッハでした。この時点でヘビーウエットとなった中、スタンダードウエットでのアタックを強いられたシューマッハは、マシンをコントロールするのが精一杯で、暫定トップのラルフから6.570秒差に終わってしまいました。
 
 続くフェルナンド・アロンソ(ルノー)は、悪天候用のエクストリームウェザー・タイヤを履いてアタックに入りますが、路面コンディションはさらに悪化し、その後のキミ・ライッコネン(マクラーレン・メルセデス)はさらに大きく遅れてしまいます。最後のアタックとなったファン・パブロ・モントーヤ(マクラーレン・メルセデス)は、タイムアタックを諦め、ピットに入ったため、この時点でラルフ・シューマッハのポールポジションが確定しました。

 トヨタのラルフがポールポジション、そしてBAR・ホンダのバトンが2番手につけたことで、明日の決勝は、トヨタとホンダが母国優勝をかけてフロントローから激しく火花を散らすことになりそうですね。そして3番手にはフィジケラがつけましたが、今回アロンソとマクラーレン・メルセデスの2台が後方に沈んでしまったため、ルノーのコンストラクターズ・タイトル獲得のためには、少しでも多くポイントを獲得しておきたいところです。4番手はクリエン、佐藤は5番グリッドを獲得しました。得意のスタートが決まれば、母国GP表彰台も決して夢ではない好位置につけました。

 明日の決勝は非常に面白いレースになりそうです!果たしてトヨタとホンダのどちらかが、母国グランプリでF1初勝利を決めてくれるのでしょうか!そして鈴鹿では4年連続で入賞している佐藤琢磨は、日本のファンが見守る鈴鹿で表彰台を決めてくれるでしょうか!今から興奮してしまいますね!



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