2011年05月20日(金) |
「ガブリエル・シャネル」 |
思いっきりラテンなビジュアルの今井さんが、
昨年に続きガブリエルの最愛の人にして英国人実業家アーサー・カペルを演じています。
今井さん目当てに観に行くわけですが、観ればやはり、真央さまの舞台人としての凄さに圧倒されるばかり。
12歳のガブリエルは最高にキュートでやんちゃで憎たらしく、
時代の先端を走った壮年期は本当に美しく威圧感があり、
71歳で再起を誓う姿は、いかにも老人らしい動きと、それでも信念を貫き通そうという
凛とした雰囲気が本当に見事。
フランス社交界にガブリエルを引き入れ、多くの芸術家と出会わせたマダム・ミセルを演じた
高橋惠子さんも、最高に美しくてエレガント。そして、初演の時より確実に歌が上手くなっておられる。
真央さまといい、アットフィフティーズな女性たち恐るべしでございます。
自分がこれから向かうフィフティーズにこんな方々がいらっしゃるわけですよ。どーするよ。
女優と一般人、月とすっぽん(おお、久々に使った表現だ)という、元の作りから全く違うという大前提はあるにしろ、
それプラス日々の努力と心がけなくしてこれほどの美しさエレガントさパワフルさは維持できまい。
はー。同じ人間なのにねー。(←あきらめが感じられるな。)
枡毅さん演じるエチエンヌはアーサーの恋敵ではあるのですが、
係長(@デカワンコ)のおかげでさらに親近感をおぼえるようになったせいもあり
エチエンヌとガブリエルとの関係修復を以前よりずっと応援したくなったり。
そんなステキな役者さん勢ぞろいで、お話の流れもすーっといい感じに入ってくるこの舞台は、
たとえ今井さんが出演していなかったとしても、とても好きな作品のひとつになりました。
で、今井さんはと言えば、これだけの芸達者に囲まれると、存在感という面ではやはりちょっとおとなし目。
よく言えば紳士的。
でも、ガブリエルがひとつ戦いを終え、あるいはひとつ転機を迎える度、
彼女のもとにすーっと現れ(生きていても死んでいても)、励ましたり叱咤したり「怒った横顔が好き」とか言っちゃったり
しつつもそれ以上でしゃばらない感じは、いかにもアーサーらしいです。
ガブリエルの生き方を理解し、精神面でも経済面でも大きく支えたアーサーに
ふさわしい立ち位置とも言えますね。
まあしかし英国人紳士というより正装したスペイン人なビジュアルでしてよ。
出演者はみな、日本人のお顔のまま特に顔色や髪色を変えずともフランス人や英国人やロシア人の設定なのだから、
ラテンの匂いを漂わせた今井さんが英国人でも全然かまわないのだけどね。
つい先日フラメンコを踊る姿を見てしまったせいで特にそう感じるのかもしれないけどね。
そしてやはり今井さんは声が良い。
声は良いのだが、セリフでの表現力よりも歌での表現力の方が勝ると思われる。
演技での表現力よりも、ダンスでの表現力の方がはるかに勝ると思われる。
となるとやはり、今井さんの良さを一番生かすのは「World's Wing 翼 Premium」みたいな舞台、
ということになるのかしらん。
よりいっそう進化したWWTPをいつかまた観たいものでございます。
2011年05月18日(水) |
大きなどんよりと小さなどんより |
月曜日の夜、近くをやけに頻繁にパトカーの音がするなー、とは思っていたのですが、
ものすっごい近所(歩いて3分くらいの場所)で少年犯罪が起きていた模様。
中二の少年ひとりが、同じ中学の4人に殴る蹴るされて亡くなったのだそうだ。
全国各地、どこでも起きていることだとはいえ、やはりちょっとショック。
息子もかつて通っていたその中学は、数年前までは公立にしては珍しいほど穏やかな環境で、
彼もいい先生といい友達に恵まれて、無事に中学生活を終えることができたのに。
もちろん荒れている子だっていたけれども、学校全体が危機感を持つほどではなかった。
ここ数年、相当荒れてきたという話は耳にしておりました。
近所の商店からは「この中学の生徒グループの入店禁止」の張り紙まで出されてたしね。
頼りがいのあった先生、厳しいけどカッコいい先生、などが異動になっちゃったからとか、
とんでもないこと言い出すモンスターな親が増えたからとか、いろいろ言われておりますが、
真相はわかりませぬ。
息子やその友人達は、なんだかんだありつつも特に不登校にもならず中学を終え、
その後はほぼバラバラになったけれども高校も終え、大学生や浪人生になっても、
近所の駅で会えば一緒にラーメンなど食べながら近況報告したりと、いい感じに友人のままです。
無事に普通の学生生活をおくれたことは、こんな時代にあっては、宝くじに当たるほどの
珍しくラッキーなことだったのかもしれませぬ。
超ラッキーだったにせよ、彼らが何の努力もしなかったとは思わないけれど。
けっこうキツくても逞しく乗り切った本人たち、ちゃんと指導してくれていた先生たち、
ちゃんとにはほど遠かったけど、なんとなく見守り続けてはいた保護者たち。
そんな諸々が、たまたまのラッキーの時間を、さらにちょっとだけ長くしてくれたのかもしれないね。
いやでも本当に、大震災もそうだけど身近でこんなことが起きると、無事に生きていられるのは
それだけで本当に幸運だと思ってしまいます。
それと同時に、生きていられるのはやらなきゃいけないことがまだあるからだ、とも思うのです。
そんなちょっと重いどんよりがあったりもしたのですが、
個人的にかっるーいどんよりとしましては、TEAM NACS(というか大泉洋ちゃん)の舞台観たさに
OFFICE CUEのファンクラブに入ったのですが、何をどう間違ったのか、2口入会してしまったという。
だいぶ以前に一度入会したものの、会員証が届くまでの数ヶ月のうちにそれをすっかり忘れ、
また最近入会してしまい、先日2口分まとめて会員証と会報が届いてしまったのですよ。
ナックスのためになんで2口も・・・(すっげー失礼)。
まあいいや、これも寄付の一種と思えば(さらに失礼)。
でも、毎週BS朝日で見ている「水曜どうでしょう」の再放送が、本当に本当に面白いので、
そんな出費も惜しくないのです!(いや実は若干ほんのり少しだけ惜しい)
そして自分のボケっぷりには盛大にがっかりなのです!
考えてみれば、江戸時代は今よりずっと「死」が身近だったはずで、
特に子どもが成長途中で病気や事故で亡くなることは多かっただろうし、
もちろん成長してからも、今では薬や手術で完治できることが命取りだったはずで。
だから、たとえ短命でも「これが寿命」「これがさだめ」と、
受け入れる覚悟はしっかりできていた時代だったに違いなく。
そういう時代だからこそ「長寿」は何よりも価値があるように思われたかもしれませんが、
反対に、そういう時代だからこそ、「Quality of Life」なんて言葉などなくても、
短くても精一杯生きること、自分なりに納得して生ききれること、の大切さがわかっていた時代
なのかもしれませぬね。
仁先生は、その「Quality of Life」のための医療を現代で叩き込まれてきたはずなのです。
それなのに、歴史の修正力への対抗心に燃えるあまり、やけに「延命」ばかりにとらわれてしまった。
その「延命」ですら、結局ほんのわずかだけ伸ばすことしかできていないのではないか、
いやむしろ、結局自分は誰も助けておらず(その人の寿命に従っただけ)、結局何も変えてはいないのではないか、
と、再びの無力感にうちひしがれる仁先生。
それに対して咲ちゃんの言葉。
「延命だけではいけないのですか? すべての医術は所詮、延命にしか過ぎぬのではございませぬか?
未来はいかに進んでいるかは存じませぬが、人はやはり、死ぬのでございましょう?
(歴史の修正力に)勝つの負けるのおっしゃいますが、吉十郎さんを鉛中毒から救い、
70まで生き延びさせたとしても、先生がここに来る前からそういうさだめだとしたら、
それだって勝ったということにはならないのではございませぬか?」
咲ちゃん、例によって素直で柔軟な感性で、真理をさらっと口になさいます。
でも、こう言われてしまったら、
「じゃあ、わたしは何のためにここに送られてきたのでしょうか。」
という仁先生の疑問はごもっとも。というか仁先生のみならず、視聴者全員の問いでございますからそれは。
坂東吉十郎を演じたシゲさん(おいっ)は、まんま病人のようなコケ方やつれ方すさみ方で迫力ありましたなー。
最大限の治療をしても結局舞台直前に倒れ、「芝居は俺だけのものじゃないよな」と、自ら身を引く吉十郎。
寝ている吉十郎の耳に木の音が聞こえてくるのがなんとも哀しい。
サポーターを着けて寝床の上で芝居をしてみせる吉十郎に、それまでひと言も口をきかなかったよきちが
「大和屋!」の声を掛けるあたりは泣けますな。
もう一度舞台に立つ以上に価値のある、役者人生最高の幕引きができたわけですから。
でもよきちの背中を押したのは咲ちゃんだ。どこまでも人の気持ちがよくわかる咲ちゃんだ。
「つかのまの延命は、もしかしたら延命にすらなっていないのかもしれない。
こうしたことで、命を縮めた可能性すらある。
だけどこの瞬間には、長さでは語れない命の意味がある。
残された時間を輝かせるという、医療の意味がある。
世代を超え、受け継がれてゆく芸のように、世の営みを超えてゆくもの。
歴史の修正力に抗えるものを、俺も残したい。」
仁先生は本当に何のためにここに送られてきたのでしょう。歴史に何を残されるのでしょうね。
では最後に本日の咲ちゃん(&その他のツボ)。
・庭石を動かそうと「ふんっ! ふんっ! ふーーーんっ!」とがんばる咲ちゃん。
(その姿勢は腰を痛めますよ。ちゃんと足広げて膝曲げて腰落さないと。仁先生ちゃんと教えたらんかい。)
・ペニシリンの粉末化に最大の貢献をしてしまった咲ちゃん。白濁した液体に「何ゆえ?」と驚く顔がちょーらぶりー♪
・すでに寺田屋事件まできてしまった龍馬さんと関わるのは危険、と、ペニシリンを届けるのをためらう仁先生に、
「では何のために粉末化を?」「ここで行かずしてどこで行くのですか?」といつもかわいい笑顔で勇敢な咲ちゃん。
「これは仁友堂の使命でございます。」龍馬さんのとこへ行くのねー。
・がんばったつるつるおにぎり漢方医、福田。
・「わたしは医術を極めたい。だからあなたが最後まで芸を極めたいという気持ちもわかる。」佐分利センセかっけー!
・よきち。役者としての将来が楽しみなお顔立ちだ。
「マルモのおきて」もどんどん楽しくなってきましたよー。なごむわー。これはまた後日。
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