仕事の最中、ふと気が付くと机の上に消しゴムが二つある。
誰か消しゴムをおれの机に忘れたのだろうと思って周囲に聞くも、なぜか持ち主が出てこない。
そうこうしているうちに、二つの消しゴムはよく似ているので、どっちがおれのかもわからなくなった。
仕方なく、引き出しの中に一つをしまった。
おれの引き出しには、そういう風にして増えた鉛筆やホッチキスなんかがいくつもある。 一体誰がおいていくのか検討もつかない。
まあ、置いていく人も人だが、どっちがおれのかわからなくなったおれもおれだ、と思う。
仕事場で使う文具は、なぜか愛着がわかない。普段使っているペンのかたちが思い出せないことなんかしょっちゅうで、学生だったころとは大違いだ。
学生時代は自分の鉛筆1本1本が判別できたのに、と思う。
やっぱり、自分で買うかどうかが重要なんだろう。 自分の小遣いで買った中学校時代の筆箱を、おれはいまだに使っている。
とはいえ、消しゴムを置いていった人の気持ち、というか状況というのもわからなくもない。
おれの経験上、消しゴムというものは、あるときに突然消えてしまうものなのだ。
おれは人生で消しゴムを一回も使い切ったことがない。 あるところまで使い続けていると、いつの間にかなくなってしまう。
きっとおれも、おれの机に消しゴムを置いていった人と同じように、気づかぬまま、消しゴムをどこかに置き忘れたか落としたかしてしまっていたのだろう。
どうも疲れているらしく、寝坊してしまったので普段乗るバスの便に乗れなかった。
次はもう遅刻確定の便しかないので、バスはあきらめて自家用車で職場に向かった。 職場の駐車場は使用できないことになっているので、近くの有料駐車場にとめたのだが、30分100円と、これが結構高い。 定時になった途端に職場を抜け出して車を取りに行ったとしても、一日1700円かかってしまう。 バスを利用するのと比べると、1000円くらい高い。
ほんの5分遅刻したせいで、1000円損をしてしまったわけだ。
しかも今回が初めてではないので、損をした分を合計したらかなりの金額になるだろう。
もったいない話だけれど、深く考えると落ち込んでしまうので、気にしないことにした。
それに、無理をして早起きする方が結果的に損をすることだってある。
大体、起きられないというときは、体だけでなく精神的にも疲れていて、羽目を外したいというか、楽をしたいという無意識的な強い思いがあるときが多い。 そういうときに無理をすると体を壊してしまう。 実際、そういうときにがんばりすぎて、これまで何度も風邪をひいたりしている。
だから、1000円は体への投資だと思って、納得するようにしている。
とはいえ、絶対遅刻しないちゃんとした人なら、そんな投資は必要ないんだろうなあ、と思うとちょっとくやしい。
まあ、くやしいも何も、自分がだらしないのでそうなっているだけなんだけども。
今になってやっと、皆勤賞のすごさを知った気がする。 学生時代、遅刻欠席当たり前で、皆勤賞をバカにしていた自分がはずかしい。
毎日出勤することのなんと難しいことか……。
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