相変わらず頭のくもりのようなものは取れず、調子は今一つのまま。
夕方まで部屋に引きこもりっぱなし、寝てばっかりだったが、これではいかんと一念発起し、大学の図書館に行くことにした。
久しぶりの大学図書館は懐かしく、学生時代に戻ったかのような感覚に一瞬囚われた。
空いている席を見つけると、早速勉強を始めてみた。
ところが、30分と本を読み続けることができなかった。
うつのせいか、本を読んでいるとだんだんとイライラしてきて落ち着かなくなり、貧乏ゆすりが激しくなり、集中力がなくなってくるのである。
これはこのところずっと僕が悩まされている症状だ。
ある程度以上難しい本を読もうとすると、頭が拒否するのだ。
結局、僕は一時間くらいで図書館を出て、すごすごと再び家に帰ることになった。
帰り際、僕の頭の中は焦りと情けなさで一杯だった。
「このままの状態じゃ仕事の復帰なんてできるはずがない……。かといってこれ以上復帰の時期を遅らせたくはないし……。ああ、どこかにいなくなってしまいたい」
そんなことを考えながら車を飛ばした。
家に帰ってきた僕を迎えたのは、そんな僕の気持ちなど少しも気にしていないフェレットたちだった。
フェレットたちは無邪気に飼い主が遊んでくれるのを期待の眼差しで見つめてくる。
「ああ、僕がいなくなったらこいつらは生活できないんだな」
そう思うと、また何とかやっていこうという考えに切り替わった。
少なくとも、僕は今フェレットにとってはなくてはならない存在なのだ。無価値なわけではないんだ。そう思った。
フェレットに救われた、そんな日だった。
夜7時頃、「P−ぽ」というペットショップに彼女と一緒に足を運んだ。
目的はフェレットを飼うために必要なグッズを揃えることだった。
その店の品揃えはなかなか良く、フェレットの毛玉取りやおやつを買うことができた。
ついでに、と軽い気持ちでその店で売られていたフェレットを見た。
売られていたのは3匹だったが、そのどれもが可愛い奴らだった。
店の人に頼み、抱かせてもらったのだが、驚いたことにその店のフェレットは全然人を噛まなかった。
今までの店では必ず抱かせてもらうたびに手ひどく噛まれていたので、噛まないことだけでも驚きだった。
「噛まないフェレット」
それは僕らが探していたフェレットだった。
出身地はアメリカのパスヴァレーというところとのことだった。
「決めちゃおうか?」
僕らは話し合って、その場でそのフェレットを買うことに決めた。
言ってみれば衝動買いだったが、迷いはなかった。
その出会いにちょっとした運命的なものを感じていたのである。
店員さんは丁寧で、事細かにいろいろなことを教えてくれた。
持ち運び用のゲージも購入し、それに入れて持ち帰ることにした。
自分たちで決めたことだったが、突然の急展開に胸の高鳴りが収まらなかった。
「本当にフェレットが家に来るんだ……」
家に着き、ゲージにフェレットを入れるまでそれが信じられなかった。
ゲージに入れられたフェレットは、生活の場が変わったことに興奮している様子だった。
ゲージの中を右往左往、飛び跳ね回って夜遅くまで休まることがなかった。
フェレットを見ているこっちも、興奮でなかなか気が休まらなかった。
何はともあれ、新しい家族が今日から増えたことになる。
明日からどんな日々が待っているのか、今から楽しみだ。
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