2006年12月30日(土) |
中学の同級生と。毎年恒例行事にて。 |
今日は十二月三十日、中学時代の友達と酒を交わす日だ。
場所はいつもの通り地元のスナック。 幹事がそこの常連だからという、ただそれだけの理由でチョイスされた店だ。
今年のメンバーは、例年より一人増えた。 中学時代、同じ部活だった奴が今回から参加することになった。
そいつとは親友とは言わないまでも仲良くしていたので、僕としては大歓迎だった。
僕がスナックについたときには、他のメンバーはもう全員がテーブルを囲んで座っていた。
「うおー、久しぶりやなあ」 今回から参加することになったKが、僕と目を合わせた瞬間に言った。
「中学以来やから、もうこれで十三年ぶりになるんだっけ?」 僕が言う。
「すっげえ久しぶりだよなあ」 Kがしみじみと言う。
Kは中学のときより少し身長が高くなり、髪型が変わっていたが、当時とあまり変わらないように僕には見えた。
Kは今料理人として働いているという。
「ふぐ調理の免許も取ったよ」 Kの言葉に皆が感嘆する。
「すげえな。今度ふぐ食わせてくれよ」 皆でKをはやし立てる。
その後、自分たちの近況に話題が移ったとき、友人Tが意外なことを話した。
TはCBCに勤めていたのだが、今は退職し、大学のときに所属していたゼミの教授の下で助手をしているという。
助手という職がどのくらいの給与をもらえるかどうか知らないが、おもしろい転身の仕方だなと思った。
少し羨ましいなと思ったけれど、まあ隣の芝は青い、というやつだろう。
幹事のYは、もともと太っていたが、さらに体重を増したように見えた。腹がそれこそふぐのように膨らんでいる。
他のメンバーは、特に変化のない一年だったようだ。 まあもちろん、それぞれに抱える悩みのようなものはあるだろうけれど。
宴も終わり、帰途に着くとき、ふと思った。 「また会うのは一年後なんだなあ」 そのとき、皆はどう変わっているだろう。そして僕はどうなっているだろう。
Tのように華麗なる転身、ということはないだろうけど、きっと波乱の多い一年になるに違いない。
まずは復職。それからどうするかは、まあ、風の吹くまま、なのかなあ。
今日はクリスマスイブ。 僕は彼女を連れて石川県を離れ、車に乗って高速道路を使って名古屋へ向かっていた。
僕と彼女が付き合い始めてから一緒にクリスマスイブを過ごすのは、今年でちょうど十回目となる。
毎年、クリスマスが近づくと、何をプレゼントするかということにとても苦心するのだが、今年は違った。十二月の初めにはそのことについて僕の心は決まっていた。
ヒップホップアーティスト「SEAMO」の名古屋でのライブチケット。それが彼女へのプレゼントだった。
まあ、二人で見に行くのだから、当然チケットは二人分買うことになるので、正確には「自分と彼女へのプレゼント」ということになるのだろう。
ちょっと恥ずかしい話だけど、僕はこれまでコンサートやライブには行ったことがなかった。それは彼女も同様だった。
ということで、今日のSEAMOのライブが僕らのライブデビューということになる。
どうしてライブデビューにSEAMOを選んだのか。それには(些細なことだけれど)理由があった。
僕の出身地とSEAMOの出身地が同じだったからだ。
僕がSEAMOの曲を初めて聴いたのは、本当に偶然だった。
ふらりと立ち寄ったCD店に、SEAMOのシングル「ルパン・ザ・ファイヤー」が試聴できるように置いてあり、ルパンの大ファンである僕はその題名に魅かれ、ヘッドフォンを手に取った。そしてその歌詞とメロディーにおもしろさを感じ、すぐにそれを購入した。
その後、ウィキペディアでSEAMOのことを調べ、同郷の人物だと分かると、僕は俄然SEAMOその人自身に魅力を感じるようになり、アルバムも購入し、いつもSEAMOの曲を聞くようになった。
そうしている間に、SEAMOの全国ツアーが決定し、クリスマスイブの日に名古屋でライブを行うことがわかると、僕はもう絶対今年のクリスマスイブはそのライブを聞くんだと心に決めた。
そして無事チケットを入手し今日に至った、というわけだった。
車の移動中、かけていた曲はもちろんSEAMO。 今日のライブでどの曲が聴けるのか、どんな登場の仕方をするのか、ライブステージのクラブダイヤモンドホールとはどんなところなのか、彼女とはお互いに想像を膨らませて話し合った。
会話は弾み、あっという間に愛知県に入った。
車は一宮市の駅前の駐車場に置き、電車で名古屋へ向かった。 そうした方が車で直接名古屋へ行くよりも何倍も早く、そして楽だったからだ。
ライブは五時開場、六時開演だった。 僕らが入場したのは五時半頃、そのときにはダイヤモンドホールがあるビルにはすごい行列が出来ていた。
幸い、僕らが持っていたチケットは普通の整理番号が記載されているチケットよりも早く入場できる、整理番号の前にAがついたチケットだったので、それほど待たずに入場することができた。
ホールの中はとても混み合っていて、熱気が漂っていた。
ステージに入ると、既に前座のバンドが観客たちを盛り上げていた。
僕らはステージの後ろの方、一段高くなったところの一番前に陣取り、SEAMOのライブを見ることにした。前の方に行くことも出来たけれど、前の方は込み具合がひどく、身長の低い彼女がステージを見ることができなくなることが嫌だったからだ。
やがてSEAMOが登場し、興奮の渦の中、二時間強のライブはあっという間に終わった。
ライブの内容はとても満足できるものだった。何せ初めてのライブだったので、もしかしたら見ようによってはもっと楽しめたかもしれない。でも、とにかく、SEAMOのライブはSEAMOらしさが出ていて(僕の想像の中での「SEAMOらしさ」だけど)ますますSEAMOに魅かれたことは確かだった。
何より、パンツ一枚になって股間に天狗のお面を着けて歌って踊る「ストロングスタイル」や、「ぺヤング」を生で見れたことは、貴重な(?)経験だった。
演劇でもそうだけれど、やっぱり「生」で見ることはとても重要なことだと思う。生だと伝わってくるエネルギーが違う。大げさだけど、生だと生身の人間の「生(せい)」が伝わってくる。生きているという存在を感じさせてくれる。
一日で金沢―名古屋間を往復する旅だったけれど、ライブの満足感からか、少しも疲れを感じることがない帰路だった。
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