わたしは皮膚が薄い 血管が透けるほどの薄い皮膚 少しでもこすると裂けたりミミズ腫れになったり 日焼けさえ うまく焼けることが出来ずに 火膨れになってしまう 齢を重ねるほどに薄さは増して 何にでも敏感で 狭量で 脆弱だ いつしか考えるようになった 形は内面を表していて それは全くその通り 皮膚の薄さは わたしの薄さ
青唐辛子を刻んだ たくさんの青唐辛子 小口に薄く刻んで 醤油に漬け込んでゆく 青唐辛子の香りは夏の香り 唇の上の小さな汗の玉 プールの水のカルキの匂い お昼寝のタオルケット…
気がつくと左手が腫れ上がっていた ほのかに唐辛子の匂いがして 青唐辛子にやられたらしい ぽっぽぽっぽと脈打っている 職場で りちこさんが言った わたしの掌を眺めて言った 悲しいことをたくさん乗り越えた皺が出てる… りちこさんは、最近手相にこってる だれもみな悲しいことたくさんあるはず わたしのその皺は きっと 心が薄いからだ 青唐辛子にもすぐにかぶれる そんな薄い心
光が炸裂したような午後 白い昼下がりの窓 ごくごくと水を飲む 白い窓に向かって ごくごくと水を飲んだ 気が遠くなりそうな感じを呼び起こすように 窓に向かって目を細めた 陽炎の向こうのバス停 おばあちゃんが立っている 巾着の手提げ袋 おばあちゃんはいつもあれだね あの袋ばかり その隣の女の子は きっと あたしだね ごぼうみたいに細くて 不機嫌に立ってる 気の遠くなりそうな暑さの昼下がり あのふたりはいったい いつから バスを待ってるんだろう…
カラスが好きだとか 草食系の小さなへびなら 結構愛せるだとか 小さな頃からピーマンもにんじんも好きだとか わりと好き嫌いはないほうだろうか…と考えてみると 女の集団が嫌いだなとか 大きな声は許せないとか 狭量な自分にも思い当たり けれど 歯医者は好きなのだ。 好きになるコツは マメに検診にいくこと。 痛くならないうちにね。 それから信頼できるドクターを見つけること。これ、一番かな。 今日、半年に一度の検診。 虫歯なし。 歯茎も健康。 おまけに 茉莉夏さん ぼくのとこ忘れずにいつも来てくれてありがとう。 と有り難き言葉。 先生、いつまでも元気でお仕事続けてくださいね。 もう 17年のお付き合い、こちらこそ ありがとうなのでした。
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