2007年09月11日(火) |
途上国の給食支援_社員食堂利用ごとに寄付 |
(日本)途上国の給食支援_社員食堂利用ごとに寄付
自社の社員食堂でカロリーや栄養バランスに配慮した食事を提供し、一食ごとに20セントを寄付する。伊藤忠や日本IBM、日本航空など日本を中心とした32社・団体が参加。20セントは途上国の児童の給食一食分に相当し、国連世界食糧計画(WFP)などを通じて寄付する。 (9月9日付け 日本経済新聞)
戦略ポイント:社員の健康管理を社会貢献活動につなげる
20セントは約23円ほどです。週に5回社食で食べるとしたら年間約5,750円の寄付ですね。この金額をまとめて寄付をしようとするとちょっと考えてしまう金額かもしれませんが、一食ごとに23円ならとても払いやすい金額です。
そしてその一食が健康に配慮した食事であれば寄付する側のメリットも高まります。外で食べるより社食で食べたい気になりやすいですし、そこに寄付という新たな価値を生み出せるとしたら社食へ行くインセンティブになります。
このように、寄付する側、される側がウィンウィンになっているわけです。また、その間を仲介するのが社食を運営する企業と、分配を担当する国連機関がボランティアとして動いています。すばらしい価値の連鎖だと思います。
中国でも寄付を必要としている多くの団体があります。9月は中国でも学校が始まる月ですが、大学に合格しても入学金や授業料を払えず入学取り消しになる農村出身の学生が毎年数多くいるそうです。北京青少年発展基金会では寄付の窓口をウェブ上に設置し、学生の大学名と学年、必要な寄付額を公表して寄付をつのっています。 ↓↓ 北京青少年発展基金会
また、上海日本商工クラブでは上海市や安徽省の児童に学費援助を行っています。日本人駐在員としてはとても取り組みやすい寄付の一つです。 ↓↓ 上海日本商工クラブ
中国で私たち日本人でもできる貢献を改めて考えてみるのもいいと思います。
中国で3億人に飲み水の危機_川は干上がり地下水は汚染
国家環境保護総局の周生賢局長は「全国都市の半数で深刻な地下水汚染が起きており、農民3億人の飲み水に安全上の問題がある」と述べた。一部地区では「川は干上がり、地下水は汚染」という状況が起きているという (9月7日付け 中国情報局NEWS)
戦略ポイント: 生活用飲用水の危機
3億人に飲み水の危機というのは大きな問題です。最近、中国では飲料水の不足や、河川及び地下水の汚染に大きな関心が寄せられています。
「財経」という中国の雑誌によれば、世界銀行の調査による水質汚染の推定被害額試算が各省別で載っていました。最大の被害額は河北省の188億元、2位は江蘇省の181億元、三位は広東省の117億元、ここ上海は9位の78億元だしょうです。川の下流ほど被害が大きいようです。
このような大きな社会問題はなかなか個人の努力や智恵で解決することはできません。行政や企業、住民が一体となって水量回復や水質改善のための努力を地道に続けて行くことが必要だと感じます。
従来中国で言われているのは工場廃水の問題です。国の排出規制があるにもかかわらず、罰則規定が軽いため工場が平気で基準値以上の排水をして、平気な顔で罰金を払うという悪循環があるそうです。排水時の浄化施設を建設するより罰金のほうが安いという感覚も大きく影響しています。罰則を厳しくしつつ監視の目を強化する必要がありそうです。
一般住民はどのような努力が可能でしょうか?まず考えられるのは生活廃水をなるべく出さないようにすることです。シャワーの時間を短くしたり、まとめて洗い物をしたりして排水を少なくすることができるでしょう。
また、以前日本のキャッチコピーで、「家庭の排水口は海への入り口です」というのがありました。家庭用洗剤(洗濯洗剤や食器洗剤)には多くの界面活性剤(ABSやLAS)が含まれています。界面活性剤を除去するには約20倍の活性炭が必要となるそうで、界面活性剤が入った洗剤を使わないようにするのも水質改善に大きな貢献が可能です。
では界面活性剤を使わない洗剤ってどのようなものがあるのでしょうか?先日このブログでもご紹介した「シャボン玉石けん」が販売しているEM石けんやパジャン(洗濯石けん)です。(広告目的ではありませんのであくまでご参考まで) ↓↓ シャボン玉石けんhttp://www.rakuten.co.jp/pancup/599896/604013/
中国でも界面活性剤のない洗剤開発を推進し、一般市民がその効果を理解して積極的に使うようになれば、少しでも水質改善や地下水汚染の現象に役立てると思っています。
2007年09月09日(日) |
ハイブリッド型の複合店舗が増加 |
(日本)ハイブリッド型の複合店舗が増加
カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)はAVソフトレンタル店」TSUTAYAの出展を増やしているが、中心になっているのは書籍販売やカフェと組み合わせた複合店舗。複合店舗の「ついで買い」促進効果を無視できない。 (9月3日付け 日本経済新聞)。
戦略ポイント:ワンストップショッピングが生む「ついで買い」効果
記事によれば、サンリオも郊外型百貨店でキャラクター商品売り場にセルフ式のカフェを併設したそうです。家族を含めゆっくり商品に接してもらおうという意図ですね。
先日、日本で二つの「ららぽーと」を回る機会がありました。ららぽーと豊洲と、ららぽーと甲子園です。両方とも売り場を曲線的に配置して視覚から飽きにくい設計になっています。低層階を広く取って開放感のあるお店づくりにこころがけています。また、ワンストップで買い物が終えられるのでさまざまな世代のお客様が楽しめるようになっています。
夏休み時期だったのでお子様連れが多かったのですが、広さもあるので混雑してはおらず、ゆっくり買い物を楽しめました。大手スーパーを核として、雑貨(東○ハンズ)やビデオ、ブティックは個性的なセレクトショップもかなりありました。
上海ではまだまだここまでのレベルはできていません。上海ではショッピングモールは数多くあるのですが「ついで買い」効果まで考えて作りこんであるモールはありません。また、どのモールも同じお店が入っていることが多く、あまり新鮮味が無いのも現状です。
上海は現在モータリゼーションの真最中で、自家用車で行く今後郊外型のモールがもっと注目を浴びていくと考えられます。しかし、店舗選定やモール設計がマンネリ化していて、どこでも同じようなモールが作られ続けています。
「ここにしかない商品やお店」、「ここでしか体験できないもの」をもっともっと集めて欲しいと思っています。そうすれば「ついで買い」効果がもっと高まるのではと感じます。
2007年09月08日(土) |
泡で消化する消防車のウィンウィン |
(日本)泡で消化する消防車のウィンウィン
消防車メーカーのモリタは泡状の消化液を使い従来のたった17分の1の水で火を消す新技術を搭載した消防車を発表した。火災現場でのメリットは4点。 1.水が接触する面積が13.5倍(火元への放水が短時間で済む) 2.水が飛ぶ速度が二倍(飛距離が長くなり安全) 3.水が飛ぶ高さが4倍(ビル火災でより高く飛ばせる) 4.ホース先端部分の重さが10分の1(二人で持っていたホースを一人で) 消化剤を開発したのは無添加石鹸で有名なシャボン玉石けん社。同社は消化剤の応用研究で無添加の液体石けんを作るノウハウを習得し大ヒット商品になっている。 (9月3日付け 日経ビジネス)
戦略ポイント:八方よしの商品って、やっぱあるんですね。
いやぁ、本当にすごい消防車がでてきたものです。従来のたった17分の1の水で消火できるだけでなく、泡状の消化剤は水より軽いのでより早く高く遠くに放水できるのだそうです。また壁などでの跳ね返りが少なく付着して広がるため、効率よく火を消せるとのこと。(日経ビジネス)
そしてまた、無添加石けんの消化剤を必死になって開発したシャボン玉石けん社は、消化剤開発で培った技術を応用して、今まで固形の無添加石けんのみだった商品ラインアップに、液体無添加石けんを3年前に開発して発売したところ日本中で大ヒットしました。
先日は上海の百貨店でもこの液体無添加石けんが発売されているのを見ました。まったくウィンウィンのすばらしい協力関係です。このシャボン玉石けん社には面白い歴史がありますのでまた後日改めて紹介します。
但し、一台の価格は約3,000万円と従来の2倍近くだそうで、かつ消化剤のコストも必要です。導入と維持コストは高いものの、火災での被害が少なくなるほうが被災者にとってのメリットとなるでしょう。世の中にはときどき、「こりゃスゲぇ!」と言える技術や商品が出てきますが、この消防車は久しぶりになるほどと思えるものです。
上海でも時々火事で出動する消防車を見かけます。上海では内装に使うさまざまな部材には防火用の基準を満たしたものを使うように決められていますが、施工主や業者のコストカットのため、防火基準を満たしていない壁紙やカーテンなどが多く使われているそうです。火事を起こさないように、そして燃えにくいものを使うようにしていきたいものです。
2007年09月07日(金) |
中国、独占禁止法を採択 |
中国、独占禁止法を採択
中国の国会にあたる全人代は独占禁止法を採択した。中国はこれまで「反不公正競争法」などでカルテルを禁止してきたが書縛規定が不十分だった。独禁法は価格カルテルや行政による不当介入を禁止する。日本の公正取引委員会に当たる反独占委員会も新設する。違法企業には最高で前年度売上高の10%分を罰金とする。 (8月31日付け 日本経済新聞)
戦略ポイント:価格カルテルや不公正取引を減らす引き金になるか?
別の報道ですと、中国独禁法の施行は来年8月からだそうです。あと1年で中国政府はいろいろと準備をしなければなりません。なかなか大変な道のりだと思います。
以前読んだコラムでは「中国は法治国家だ。先進国が制定している法律で中国にまだ制定されていないのは独禁法だけだ。」と書いてあったのを記憶しています。このコラムが正しければ独禁法の制定で先進国並みの法律体系は整ったということになりますね。(真偽のほどは分かりません。)
日本企業の製品で中国の独禁法にひっかかりそうなのは「デジタルカメラ」だそうです。キャノン、ソニー、ニコン三社の合計で中国市場の70%前後のシェアがあるそうです。(日経)
同じ記事で日経が指摘していたのは、中国では価格カルテルや入札談合、地方政府の出資企業に優先販売している実情があり、独禁法が施行されればこうした商習慣は違法になるという点です。日本企業のコンプライアンスはしっかり浸透してきていますので、今後は中国の独禁法を根拠にカルテルを拒否するオプションが増えるということになるわけです。
中国でビジネスをする際によくぶつかる課題として、中国側のパートナー企業が何らかの許認可を取得する際に、相当グレーな手法で取得してくるという場面があります。また、入札も実情は相当に談合体質があるらしく、建設などでも有力各社が交代で受注をするようになっているとも聞いたことがあります。
独禁法の制定により、従前の価格カルテルや入札談合、優先販売が違法となるため、今までのやり方を変えていかなければなりません。しかし業界の慣習は一朝一夕では変わらないため、政府側も各業界に独禁法の趣旨や罰則をしっかり周知しなければなりません。
日本企業も中国事情の社内説明として、今までのように「中国のやり方はこうですから!」と現地の慣習をムリヤリ本社に理解してもらっていることが多いと思いますが、独禁法などの法体系が整備されていくと今後中国でも更にコンプライアンスが求められるようになってきています。我々駐在員も頭を切り替えていく必要があります。
中国農村の大規模化
生産性が低く小規模の運営が中心だった中国の農村が大規模化になりつつある。農民が自ら出資設立する専業合作社がその起爆剤。浙江省大市村は大規模化を機に「残留農薬の少ないナシづくり」を目指し、食の安全を求める消費者の心をつかもうとしている。 (9月1日付け 日本経済新聞)。
戦略ポイント:中国の農業でも時代のニーズをつかみはじめている
1950年代から中国の農村はソ連をまねた「人民公社」として大規模集団農業を推し進めましたが、飢饉や非効率性から収穫が伸びず80年代の改革開放政策と共に人民公社は消滅しました。
また、中国の流動人口は約1億5,000万人と言われていて、大半は農村からの出稼ぎ労働者です。胡錦濤政権は戸籍の再整備と共に、地方都市周辺での製造工場による労働者吸収を長期目的として推進しています。
農村自身でも変化が始まっています。この記事のように次第に大規模化などを通じて消費者が必要とする商品の開発に着手しはじめました。大都市近郊の農場では商品作物(現金化が容易な商品)を中心に都市部消費者のニーズをうまくとらえています。
今後、中国においても農産品のトレーサビリティ(どこでどう作られたかの情報開示)や有機無農薬化、また遺伝子組み換えのない品種の生産など、付加価値のある商品が求められます。上海の久光百貨でも中国各地の付加価値の高い農産物が並ぶようになってきました。
このあたには日本の農業生産技術や流通方法にノウハウのある分野であり、多くのビジネスの可能性が残っています。
2007年09月05日(水) |
特殊光で光るプラスティック_真贋判定利用 |
特殊光で光るプラスティック_真贋判定利用
プラスティック開発のプラゲノム社は特殊な光を当てると光るプラスティックと、専用の携帯型検出器を開発した。製品の一部にこのプラスティックを使えば模造品と見分ける真贋判定に役立つ。価格はプラスティック1キロあたり10円(数%)高くなる程度で、検出器は一台約10万円。 (9月4日付け 日本経済新聞)
戦略ポイント:新しい発想
これはとても応用が利くすばらしい技術だと思いました。何しろ、玩具から日用雑貨までプラスティックを使う範囲はとても広いですし、単価がそんなに高くないので一気に普及する可能性を秘めています。
真贋判定では特殊なシールを貼ったりタグをつけたりと、いろいろな智恵を絞ってやっていますがあまり効果がないといわれています。シールやタグをコピーされてしまうことが普及しない原因だそうです。上海蟹も爪にタグをつけていますが、タグだけを売っている業者があって消費者は信じていません。
製品のプラスティックの一部に特殊な光を当てると光る特殊プラスティックが埋め込まれていたらそう簡単には真似ることは難しくなります。製造側は定期的に使用する箇所を換えることで、真贋判定を用意にすることが可能です。
ニセモノ対策や欠陥判定には多くのコストがかかります。先日もアパレル業界の方のお話を伺ったのですが、私たちが日本の大手スーパーで買う日曜衣類のほとんどが中国で生産されています。商品に入っている厚紙やボタンにもいろいろな工夫がされていて、関係者が見ればどの工場のどのラインでいつごろ製造されたものか判別できるように作っているそうです。ここまでコストやノウハウをかけながら製造しているのですね。
このプラスティック、応用範囲が広いです。中国でも海外から流入する携帯端末が市場価格を混乱させる要因とされていますが、とあるボタンだけにこのプラスティックを使えばすぐに国産かどうか判別できるようになります。アパレルでも衣類包装の留め具に使うとかいろいろ用途が浮かびます。更なる発展を期待しています。
2007年09月04日(火) |
中国産食品の安全性について |
中国産食品の安全性について
厚生労働省によれば、中国産食品の輸入届出件数に対する残留農薬発見などの違反件数は0.6%で、米国からの輸入品1.0%より低い。同省は「輸入量を考慮すると違反率は高くない」としている。 (9月1日付け 日本経済新聞)。
戦略ポイント:イメージ回復の切り札は必ず見つかる
中国産食品や玩具、日用品の安全性に対する不信感が世界的に高まっています。中国だけが悪いかのようなイメージが先行していますが、このデータが示すとおり、中国産食品の残留農薬の違反件数は米国からのそれより低いわけです。
日本の消費者としては、「監視の網をすりぬけた物が出回っていると疑う人が多い(日経新聞)」という気持ちが強いのもよくわかります。トレーサビリティがしっかりしていないので、いったいどの中国産野菜が安全なのかは分からないのが現状です。しかし、価格競争力や輸入量を考えると中国からの食品輸入をやめるわけにはいきません。
記事によると食品輸入の管理体制は年々厳しさを増し、検査費は生産・や輸入サイドに負担させることがほとんどだそうです。つまり小売側は検査費の負担は一切しない流通習慣なのですね。これは本当に消費者が望んでいる流通体制なのでしょうか?
上海で暮らす多くの日本人も、価格以上に安全・安心を優先して食材や消費財を買っています。中国でも安すぎる商品は不安感がぬぐえないからです。おそらく現在の日本でも、安心できる食材を求める声はどんどん大きくなっていると想像できます。
中国の生産側にはしっかり管理して安全な商品を生産してもらい、日本の流通サイドは安心できる食材のトレーサビリティを明確にして、少々高くなっても安全性を明示して買ってもらう工夫が必要になってきました。中国側の農場名や生産者名、農場の特徴やポリシーなどをスーパーの棚で表示できないものかと思います。「ワケがあって少し高い商品」でも買いたいお客様は日本にはかなりいるのではないでしょうか。
中国政府は改めて日本の流通業との協力関係を見直し、すぐにでも「安全な中国食品」を証明し日本市場内でキャンペーンを打つ必要もあろうかと思います。イメージを失墜するのは一瞬ですが、回復するには長い時間がかかります。このあたりのマーケティング手法は中国政府がまだ不慣れなところですので思い切った対策を期待したいところです。
2007年09月03日(月) |
中国、食品と玩具にリコール制度を導入 |
中国、食品と玩具にリコール制度を導入
中国の国家品質監督検査検疫総局は食品と玩具を対象にしたリコール(無料の回収・修理)制度を即日実施すると発表した。メーカーに問題製品の自主回収を義務づけ、実行しない場合は当局が強制的なリコールに乗り出す。国内外で高まっている中国製品の安全性に対する懸念を沈静化する狙い。 (8月31日付け NIKKEI NETウェブサイト)
戦略ポイント: 新たな制度をどこまで徹底できるか
日本では食品衛生基本法やPL法(生産者責任)があって、不具合が分かった商品はメーカー側の責任と費用負担で全品回収したり修理したりするこれらの法律で厳しく管理しています。リコールは多大なコストがかかるのと同時に、対応を誤ると会社のブランドや価値を大きく減損してしまい、雪印や不二家のように会社の存亡の危機にまで及んでしまうことがあります。
中国では、最近特に食品関連の安全性に関して人民の関心が高くなっています。国家食品薬品監督管理局の前局長・鄭篠萸被告が新薬の承認を行う際に649万元(約1億円)を収賄したとして、今年7月に死刑になりました。中国も食品や薬品の安全性確保に真剣に取り組んでいるようです。
しかし、中国でリコール制度を導入したからといってすべてが解決されるわけではありません。リコール制度の導入はまだ食品や玩具の安全性を高める第一歩であり、これからさまざまな決まりを作っていかなければなりません。
例えば、小規模な食品メーカーでは出荷の記録が残っていないとか、問題のあった食品製造時のレシピやサンプルが残っていないとか、日常の製造工程管理が十分でない中で製造販売しているのが現状です。流通経路も多岐にわたっていて、回収がどれだけ徹底できるかもまだ疑問が残ります。また、回収するコストさえ負担できないという、「無い袖は振れない」状況も多く発生すると思われます。
国の安全基準や回収・修理まで徹底させるにはまだ多くのコストや現場の意識改革、そして長い時間が必要です。リコール制度の導入を皮切りに、人民が安心して購入できる食品や玩具の流通を期待しています。
2007年09月02日(日) |
中国が特別国債を6千億元(約9兆円)発行 |
中国が特別国債を6千億元(約9兆円)発行
中国財政部は8月29日付で特別国債を6千億元(約9兆円)発行したと発表した。国債の期間は10年で年利4.3%。国債で調達した人民元は、外貨準備として持っている米ドルに換金されて、政府が9月に設立を予定している資金運用会社の設立資本金に使われる予定。 (8月30日付け 日本経済新聞)。
戦略ポイント:国家のお金を投資で運用するのはどうなのでしょう?
同じ記事によると、中国の外貨準備高は07年6月末時点で1兆3,300億ドルあるそうで、もちろん世界最大の外貨保有国です。輸出力が高い中国は輸出業者が受け取った外貨が莫大に増えていて、外貨を人民元に両替する圧力がとても巨大です。ほおっておけば外貨が売られて元が買われるので元高になります。政府は元高を阻止するため外貨の買いオペレーションを行いますので政府にどんどん外貨がたまるわけです。
今まではこの外貨準備で米国の財務省証券(米国債)を買うことが多かったのですが、中国政府は米国債に偏った運用ではリスクもあると判断したようで、思い切って国家のお金を投資で運用する国有投資会社の設立を決めました。
日本には外貨準備を活用した国有投資会社はありません。有名なのはシンガポール政府が大株主となっている国有投資会社「テマセク」です。2006年3月末の運用残高は1,290億シンガポールドル(約10兆円弱)もあるそうで、これはシンガポールのGDPの60%に相当する金額だそうです。
テマセクはシンガポール航空やDBS(銀行)などシンガポールの主要な企業へ投資するだけでなく、アジア各国の企業に投資しています。中国ですと建設銀行や中国銀行にも投資しています。おそらく中国政府もテマセクに追いつけ追い越せで投資先を広げてくると思われます。
テマセクのように上手に投資して運用できると理想的ですが、最近はサブプライムローンの破綻問題が端緒となって証券市場に信用収縮が発生しまだ収まっていません。これからしばらくの間はそうとう慎重な投資姿勢が必要となる中で、中国の国有投資会社設立のニュースは投資業界に明るい希望となっているようです。
また、先日もプライベートエクイティ(未上場株の投資)のブラックストーン社に中国政府が30億ドル(約3500億円)の株式取得による出資行いました。しかし、上場を予定していたブラックストーン社はサブプライムローン問題に足をすくわれて上場の見通しさえ立たなくなってきました。株式上場によるキャピタルゲインも狙っていた中国政府の思惑はすでに大きくはずれた格好になっています。
国家投資会社が運用する原資は人民が額に汗して集めた外貨です。投資は常にうまくいくとは限りません。人民の努力の結晶を安易に投資という形で市場に委ねていいのかどうか、議論が残るような気がします。
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