2010年12月23日(木)
2日ほど前に届いた悲しい報せを、私は信じていなかったのかもしれません。 地図を確認しながら式場に到着し受付をすませて会場に入ろうとしたとたん、足がすくんで前に進めなくなりました。 白い花たちに囲まれた友人の遺影に、あの悲しい報せが本当だったことを証明しているかのようで、胸が熱くなりました。 しばらく会場の外のベンチに座っていると、次々の仲間たちがやってきました。 口を開くとこれまで我慢していたものがイッキにあふれでそうで、私は誰とも目を合わさず、ぎゅっと口をつぐんでいました。
それでも、会場に入りイスに座らなければなりません。 彼の祭壇の両脇に積み上げられた缶ビール。 その頂上には北海道限定販売のサッポロクラシックビールが1本。 そして、阪神タイガースのハッピ。 おそらく百名山をいっしょに登ってきたであろう山シャツ、山ズボン。 旅のお供をしてきたガイドブック。 あちこちで集めた切手。
そのひとつひとつに彼は息づいていて、そのひとつひとつをあたかも自慢されているように感じます。
でも、もう、彼は、どこにもいません。
会場のイスに座ったとたん、涙がぽろぽろ、ぽろぽろとあふれてきました。 白山に登ったとき、槍ヶ岳に登ったとき、私は彼の「言葉」がなければ、途中でへこたれていたでしょう。
いつも彼は言ってくれました。
「大丈夫。もうすぐ頂上です」
大丈夫。 大丈夫。 大丈夫。
彼の「大丈夫」は、誰のどんな言葉よりも信頼できて、力がわいてきました。
「ありがとう」
棺の中の彼に向かって、私が伝えた精一杯の言葉です。 もっと、もっと、生きたかったろうに。
無念、です。
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