てくてくミーハー道場

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2009年01月11日(日) 初てくてく

実を言うと今年は、しばらくてくてくしたくない気分で正月を過ごしたんですが(理由は追々お話しします)、舞台は待ってくれない。(上演期限があるからね)

ましてやタカラヅカは「今日の切符とってあります」と連絡が来たとき、「あのー後日でも・・・」と返事をしようものなら、「もう売り切れで他の日はとれません」と厳しいお言葉が返ってくるので、ワガママ言わず伺いました。



宝塚歌劇団月組公演。(まず)本編。源氏物語千年紀頌「夢の浮橋」

「日本物の拓ちゃん」「平安拓ちゃん」こと(こら)大野拓史センセイによる源氏物語ものでございます。

さすがに、この時代の作品を作らせたらタカラヅカ一の拓ちゃんですから、主要なキャラクターそれぞれに見せ場もあり、ストーリーも破綻のないきっちりとした作品に仕上がっていたのですが、あえて(別に「あえて」言う必要もないのだが)文句を言わせてもらうと、「原作を予習していかないとわかんない」ところが多過ぎたのではないか? と思いました。

こう言ってはナンだけど、来る方皆さんが「源氏物語」の「宇治十帖」を基礎知識として持っているという期待をしちゃいけないと思う。

たとえ「小学生向けの少女漫画のようだ」と揶揄されようと、各登場人物が登場した時に、植田紳爾センセイばりの説明ゼリフで、「私とアナタとは、父親がどうのこうの、母親がどうのこうので、まるで兄弟のように育った義理の従兄弟同士なのですよね」「ええ、私たちにとっては○○にあたる六条院すなわち光の君が逝去されて××年、早いものです」みたいなことをしゃべらせるべきだったのでは? と思ったのだが、やはり今の観客たちにとっては、それはかったるくてNGなのかな?

だがぼくは思うんですが、タカラヅカってのは昔から、「3歳児から上は無制限」全ての年齢層が、分け隔てなく楽しめなくてはいけない、というのが小林一三先生の掲げた「あるべき姿」だと思うの。

一定の教養や知識を観客に求めるのは、創り手側の傲慢(言い過ぎ)ではないかなと。

まぁ今回は、ん十年前に某三流私立大学文学部国文学科を出てるくせに(しかも「国文講読III」で源氏物語を履修したくせに)、「あり? 匂宮と薫って、どういう関係だっけ?」とあたふたしてしまった自分の情けなさをごまかそうとしてそう言ってるだけなのだが(責任転嫁かよ!)


そういうことを別にすれば、非常に良い出来の作品でした。

一般的にこの「浮舟」と言えば北條源氏が有名で(歌舞伎で上演されたのを、ぼくも観ています。サイッコーのキャスティング(浮舟=玉さん、匂宮=なかむらや、薫=仁左サマ)でした)、ふつうこの話は、どっちかというと浮舟視点で描かれている苦しい恋物語で、

「性格はちょっと堅いけど、血筋も身分も申し分なく、仕事もできるAさん。嫁いだら、一生安定が約束されてるけど、ちょっと退屈しそう」

と、

「プレイボーイだけど、やっぱり血筋も身分も申し分なく、仕事もできるBさん。嫁いだら、優越感に浸れるけど、浮気されまくって一生苦労しそう」

の両方から求婚されて、どうしましょう、どっちも選べないわ、と悩みまくるヒロインにどうぞ思う存分感情移入してください、ってな話(相変わらず解釈が俗っぽいぞておどる)だと思うのだが、タカラヅカはやはりひと味違った。

タカラヅカでは、そんな小娘の恋バナ(?)なんかどうでもいいんで、それより大事なのは、匂宮 vs 薫の、甲乙つけがたい二人の男同士の恋の鞘当てに、ヒロインそっちのけで萌えたいというのが、昨今のお客様方のご希望でして(←歪んだ認識)

このように、男同士の対決が中心となるので、むしろ「女子供が観る」タカラヅカの方が、アイだコイだよりも、政治的策略とかの話が詳しく出てきて、意外に骨太で面白くなっちゃってるのが興味深かった。

しかも、女から見た匂宮は「危ない香りのプレイボーイ」なのだが、この人をタカラヅカのトップさんが演じるからには、単なるエロ男爵(こらっ)ではダメなのであって、浮舟に対しての彼の愛が、

「散々遊んできたプレイボーイの、本気の恋」

に描かれてたりして(原作では全然そんなことなくて、ずばり「薫へのライバル意識」でしかないのだが)、萌え趣味のない正統派の(?)観客だったとしても、ヒロインに感情移入してうっとりできるようになっている。


と、このように、作劇には文句のつけようがなかった(最初に文句つけてるけど)

だがそれ以上に、やはり瀬奈じゅんを筆頭に、現在の月組の皆さんの演技のクオリティの高さに嬉しい感動を覚えたのである。

きりやん(霧矢大夢)が、薫の「堅さ」を出そうとして、ちょっと口調が硬すぎたのだけが難だったが、他の役付の子たちは、みんなその役を活き活きと演じてた。

娘役に関しても、前作『ME AND MY GIRL』で実力派娘役・彩乃かなみが退めてしまって、どうなるのだろう月組・・・と思っていたが、今回のストーリーでは、まだ未知数(別に「主演娘役」に決まったわけじゃないらしい)の羽桜しずくに、主体性のない(おいこら)ヒロインをあてがうという技も見事だったし、それなりに実績のある娘役にはそれなりに活きる場所を与えていたし、男役も上から10人ぐらいまで(普段の本編としては多い方だと思う)個性的でおいしい役が与えられていたし、非常に満足できる作品でありました。

それにしても、あさこの、それこそ「今が盛り」の充実度と言ったら、とても言葉では表せられません。

浮舟のいる部屋に、御簾を「ばっ」と払って入ってくるたび、ドキッとしてしまうその色香。

まさに、「匂う」の宮!(←ボキャブラリー貧困でごめん)

プンプン匂ってくる!(←表現下手クソで逆効果!)

・・・すいません。

こんなに充実してると、やっぱり近々(以下、当然ながら発言禁止!!!)



続いて、ショー。ファナティック・ショー「Apasionado!!」

一言で表現すると、「かっこいいっす!」(←表現下手クソ加速中)

藤井ちゃんのショーなので、またJ-POP歌わせんのかと思ったら(こらっ)それは今回はなくて、最近どのセンセイも感染したみたいに(こらこら)繰り出してくる「ザ・二丁目シーン」(男役十年選手が、一場面だけ女役で出てくる)が今回もあって、ちょっと頭を抱えてしまいました(×_×;)ぬーん

なんでなんですか?(知るか)

なんで、“本当に”女の子なのに、“女装”にしか見えないんですかっ?!(あ、そっち?)

「この人は男役なのよ」という、こっちの先入観のせいかと思ってたんだけど、最近ぼくは全然下級生の顔を覚えてなくて、そういう先入観はなかったはずなのに、「な、なんか違う・・・」(可愛い可愛い明日海りおちゃん除く←コラッ)と思ってしまってる。

なぜでしょうか、と一緒に行ったHさんと話し合ってたら、

「男役って、肩周りがごつくないですか?」

というヒントをいただいた。

なるほど。

娘役をがっちりホールドしたり、リフトしたり、自然と逞しくなってるんだな。

謎が解けました。

んで、とうとう二番手のきりやんまで女装して(決してベッキーではありませ☆☆☆\(−−;))出てきたので、最後は御大(つまり瀬奈じゅん様)ご登場か?! とワクワク(?)してたら、御大は男役のままだった(_ _ ) ←なんでがっかり?

だって、意外と(失礼)キレイよ? あさこの女装って。(“女装”言うな!)

まー、過去に女装どころか、大きな「女役」してるしね。


ショーに話を戻すと、結局あさこの相手役が未定なので、最後の大階段前のデュエットダンスがなく、そこだけが少々もの足りなかったのだが(その代わりなのか、ベッキー女装きりやんとの短いデュエットがあったわけです)、あとは様々なラテン系場面が続く、男役好き(って、みんなそうだが)にはたまらんショーでございました。

あと、歌が上手い子がけっこういっぱいいるのに驚いた。

いっとき、バレエ巧者ばっかりが音楽学校の試験では有利で、歌はあんまりできなくても(特に男役)合格してたフシがあったのだが(娘役はソプラノで歌える子が例年そこそこいる)、最近は男役の声で歌える子が増えてきたのが嬉しい。

生徒さんたちのプロポーションと技術力は、全般的に時代が下るごとに向上してますよね。

あとはやはり「らしさ」だと思うのだが、こればっかりは「入る時点」や「入って数年」では身に付かない。

フィナーレを観てて、「最近また一組当たりの人数が増えてきたなぁ」(5組制になった直後は1組当たり65人前後。今日の月組は総勢85人)と思ったのだが、つまり退める子が少ない、長くいる子が増えてきたってことなんだね。

大人数の迫力も宝塚歌劇の魅力の一つ(その代わり、組子の80%以上が“その他大勢”になっちゃうんだけど)だし、今言った「らしさ」を熟成させるまでには長くいた方がいいわけだし、良いことだとぼくは思います。




というわけで、まだまだ実は「あの人たち」のライブの思い出に浸っていたいのに(←一行目の種明かし)やっぱり行って良かった初てくてくでした。

とにかく東京宝塚劇場(もちろん宝塚大劇場も)ってとこは、空気がきれいなんす。思い込みかもしれないけど。

客席の一部ではお香水のお香りが少々・・・てことがたまにあるけど(余計な一言!)、とにかく舞台からとってもいいニオイ(舞台化粧の匂いってわけじゃなくて)が吹いてくる。

精神的胸焼けが、すっきりと治まる。

ありがたいことです。

チケット代がさりげなーく値上がりしやがったことは、許してやろう。(最後に結局暴言)


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