ささやかな日々

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2021年01月14日(木) 
夜明け前、息子とコンビニまで自転車を走らせる。帰り道はいつものように競争。息子が勢い余ってゴールを越えてもずいぶん走っていってしまう。寝ぐせでぐっしゃぐしゃな髪の毛に向かって「髪の毛は爆発だ!」なんて意味不明なことを言っている。私はくすくす笑いながら彼の髪の毛を梳く。

昔の日記を書き写していて、そこに清宮質文先生の名前を見つける。ああ、この時に展示をしたんだったと改めて思い出す。
当時、私にとってそれが全てだった。それを為したらもう、死んでもいいとさえ思っていた。全身全霊を賭けてそれを為した。
夢半ばで出版社を辞めざるを得ない状況になり、ずっと後悔がつきまとっていた。どうしてもそれを拭いたくて、気づいたら清宮先生にのめり込んでいた。あれほど展示や対談集制作に執念を燃やしたのはきっと、何とかして自分のトラウマを上塗りしたかったからに違いない。今ならそう、思う。

あんな事件があっても、大丈夫だと持っていた。あんな被害に遭っても、自分は大丈夫だと思い込んでいた。それがことごとく、ひっくり返った。
何もかもを失って、自分がこれっぽっちの存在だということを痛感した。自分なんていてもいなくても同じ程度の存在で、むしろ私がいない方が都合のいい人間の方が当時いっぱいいるように思えた。

孤独だった。

独りって、こういうことか、と、毎晩のように思った。病気になってしまったことも会社を辞めざるを得なかったことも何もかもが、自分のせいに思えた。自分さえもう少し強かったら、自分さえもう少し。そうしたらこんなことにならずに済んだんじゃないか、と。
今ならまた、違ったことを言えたかもしれないけれど。当時はそれが全てだった。

亮子奥様は、その後ホームに入ったと人づてに聞いた。今はどうなさっているのだろう。まだご存命だろうか。分からない。もしもう一度お会いすることがあるのなら。もう一度、お礼を、感謝を、伝えたい。


浅岡忍 HOMEMAIL

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