今年、一番の寒波が街を襲い、 僕らはコートの襟を立てて、背中を丸めながら歩く。 街路樹まで氷ついてしまったように見える交差点は、音に溢れているのだけれども、どこか静謐な雰囲気が漂っている。 「冷たい空気は音を吸収するんだよ。」 「それを言うなら雪でしょうが。」 隣りを歩くアベックの会話が耳に入る。 きっと二人にとっては、この体の芯から冷えるような寒さも、 互いの温もりを確認するための小道具に過ぎないんだろう。
「しょうがねぇなぁ」 僕は声に出して一人呟いて、 マフラーを巻きなおして、また歩き出した。
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