Just A Little Day
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駅前で高校生が「ゆず」を歌っていた。 あたしが高校生の頃によく聞いた曲。 思わず立ち止まってしまった。 パンツが見えないのが不思議なくらい短いスカートの女の子たちは、コートも着ないで大声ではしゃいでいた。
あたしは二度目の家出。 飛鳥山の紅葉は、知らないうちに半分以上散ってしまっていた。曇天で雨に濡れてわびしい。
電車の中も薄暗くて、みんな憂鬱そう。 さっきの女の子たちは、一体何がそんなに楽しかったんだろう。 電車の中の憂鬱な大人にも、あたしにも、あんな時期があったはずだと思うと不思議な気分。
日暮里で乗り換える。 あたしが仕事をしていた頃に建設中だったマンションの骨組みかできていた。 駅横の高層マンション。
ホームの立食い蕎麦のにおいで気分が悪くなった時に電車が来た。
このまま、母と暮らそうか。 犬の飼えるマンションを探して、あの家を出ようか。 あたしにはどうしても、毎日残業の彼を笑って迎えてあげられない。 胃は故障寸前。 泣いてばかりで目が痛い。 溜息を噛み殺しすぎて喉につかえたままなので、呼吸がうまくできない。
ただ一緒に居たいだけなのに。 どこにも行かなくていい。 欲しい物もない。 笑っていたいだけなのに。
母はまだ帰ってこない。 夕飯でも作って待っていよう。
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