「にこにこばかりもしてられない。」
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2005年03月04日(金) いってしまった

「ああ、だめだ。」

モニターには初診のときよりしっかりと大きくなった赤ちゃんが映っている。
手足も伸び始めしっぽももうない。背中にまっすぐに脊椎がみえる。

心臓が見えない

拍動しているはずの心臓が見えない


だめ?と内診台の上から先生に聞き返す。
向きを変えて先生が何度も超音波で探る。
いや、動いてるかな?動いて。動いてないね。と先生の声が小さくなる。


鼻をかんで待合に出る。

隣の妊婦さんに迷惑だから泣いちゃダメだ。
看護婦さんに迷惑だから泣いちゃダメだ。
このあとも妊婦さんの診察する先生に嫌な思いさせちゃ迷惑だから泣いちゃダメだ。

泣くな泣くなと息を止める
息をすると涙がこぼれそうになる

診察室に呼ばれて先生から話を聞く
聞いたけど
うなづくと涙がぼとぼとひざに落ちるし
返事をしようと口を開こうとするとしゃくりあげそうになるし
先生の顔を見ようと顔を上げるのも無理で
黙って頭を下げて診察室を出た。

隣の処置室で採血をするらしい。
呼ばれて採血台の上に左手を出す。

出した手のひらを握ろうとしたら
看護婦さんに両手でてのひらをぎゅっと握り締められて
手の甲をぽんぽん、と叩かれた。
わかってるといわれたみたいに。あったかかった。

もう鼻水も涙もとまらなくなって
採血台に突っ伏すように泣いた
パテーション一枚外の妊婦さんに聞こえたらいけないと思って
声を喉の奥でつぶして泣いた
看護婦さんがティッシュを束で持たせてくれて
小さい声でいいよ、泣いていいよと言ってカーテンを引いてくれたので
しばらく勢いが止まるまで小さくなって泣いた

やっと普通に息ができるほどになって
手術の注意事項を聞いて
お礼を言って帰った。




まだ ここにいるけど
もう いない
神様に選ばれていってしまった。


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