いつだったか、私が抗がん剤治療中の頃。 実家で副作用が辛く、布団に横になっていた。
洗い物をしていた母が、 「綾ちゃん!やめて!」と怒鳴った。 何を怒られているのか、分からない私。 「なに?」 「これ、これやめて」
何かと思ったら、私が胸の上に両手を組んで 置いていた姿を見て、母が叫んだのだ。 結局、何で怒られたのか理解できず不機嫌になったんだけど。
今思えば、きっと私が死んでしまったら・・ということを 考えていたんだと思う。 坊主で横たわって、両手を胸で組む姿。 母は嫌でもあの姿を想像してしまったんだろうな。
あの頃は、私も母も家族もみんな「死」ということに 敏感になっていた。
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