やんの読書日記
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2003年01月02日(木) 落日の剣

ローズマリ・サトクリフ作  原書房

落日の向こうへ行く、と言うのは死を示す言葉
アーサー王、大熊アルトスの最期が
わかり切っているだけに、逆に明るい兆しが現れないだろうかと
一縷の望みを抱いてしまう。
アルトスの滅亡の原因は二つ
イゲルナとの罪の関係によって生まれたメドラウト
妃グエンフマラと親友であり忠臣であるベドウィルの不倫

イゲルナとの関係が壊れようとするとき
なぜあんなにももどかしい態度を取るのだだろう
悪の根源とわかっていながら自分がまいた種だとして
メドラウトを包含してしまうのはなぜなのか
そこにはどうすることもできないしがらみに
自信喪失のアルトス、弱い人の子アルトスがいた

九頭の馬の下に眠る黒い媚人の少女
サクソンによって殺された少女をアルトスが手厚く葬り
黒い人たちを味方につけたシーン。
この墓の跡が実在すること。
アーサーのモデルとなった人物が必ずいると信じていた
私にとってこの本は、その思いを確実にしてくれた

ともしびをかかげてに引き続いて登場するアクイラ、フラビアン
アンブロシウス。彼らがいつかはブリテンに闇が訪れることを
知りながらなお、ともしびをかかげてサクソンと戦う
その誇りあふれる動きがアルトスに結集されて
今に伝わるほどの英雄伝となったのだろう。

これまでに読んだどのアーサーよりも力強く誇り高い王。
うらはらの、人間的な王の姿に感動の嵐が吹き荒れている


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