Shigehisa Hashimoto の偏見日記
塵も積もれば・・・かな?|それまで|これから
2002年09月18日(水) |
アニメ思い出館 第1回 「戦国魔神ゴーショーグン」の巻 改訂版 |
この間書いた「戦国魔神ゴーショーグン」の感想ですが自分の文章表現に少し気にいらない部分があることとロマンアルバムでの再考証を踏まえて若干書き直して見ました。第一回を見た人はできれば見直してくださると幸いです。
簡潔あらすじ 古来より歴史の陰で暗躍する巨大結社ドクーガは21世紀初頭には絶大なる勢力を振るうまでになっていた。これに対抗できるのはゴーショーグンを持つグッドサンダーチームだけだ。謎のエネルギー「ビムラー」をめぐり両者の激しい戦いの火蓋が切って落とされる・・・
個人的解説 初見から5年近くの歳月が流れようとしている。実はそのとき以降私はこの作品を全く見ていない。それでも私の中では鮮烈なイメージが脳裏にやきつけられた。星の数ほどあるロボットアニメの中で私はひょっとするとこの作品が一番好きかも知れない。それほどインパクトの強い作品である。
話に大きな魅力があるわけではない。基本プロットもどちらかというと凡庸であるし各話を見渡してもそれほど秀逸な話もはないと思う。さらにはロボットアニメなのに肝腎のゴーショーグンがあまり目立たないという致命的な弱点も持っている。それでも私がこの作品に惹きつけられるのは何といっても登場するキャラクターが個性に満ち溢れていることと、製作者達のよい意味での「お遊び」が功を奏したことに尽きる。
「善」側のグッドサンダーチームも「悪」側のドクーガの面々も実に魅力的なキャラクターが揃っている。特にレオナルド・メディチ・ブンドルとレミー島田は出色のキャラクターであることは間違いないだろう。 ブンドルはその耽美的な性格を徹底的に具現化したという点でロボットアニメ界において記念牌的キャラクターとなった。彼の行動原理は常に美しい・美しくないというふるいによって分けられ、従って組織に体をしばられることはない。ただひたすらに己の美学を追求する姿はこの時点においてかなり革新的であり多くの人間が衝撃を受け、さらには魅了されたのだ。ゴーショーグンの人気の第一人者は彼にあるといっても過言はなさそうだ。 また対するレミー島田の描写も秀逸である。コケットリーな一面を覗かせながらも決して同僚の真吾やキリーに秋波を送ることのない気さくであっけらかんとした態度が魅力の大人の女性である。彼ら3人がつかずはなれず(さらにはブンドルのプロポーズをも歯牙にかけず)、玉虫色の関係を保ち続けたのも大人の洒落た雰囲気を醸し出すのに一役買っていた。これは全くの推測であるが女性にも好かれるキャラではないかと思う。 この二人を中心として繰り広げられるキャラクター同士の掛け合いは見ていてとても楽しいものであった。セリフがいかにも軽妙でとても洗練されているので観れば観るほど作品世界の魅力に引き込まれること請け合いである。
「お遊び」の方は言うまでもなくメインスタッフ・首藤剛志の得意とするところで「ゴーショーグン」でもその才能は如何なく発揮されている。ただしこれがその後の小説版や劇場版になってくると話は別でスタッフの思い入れがありすぎるせいか、なんとも暗い話になってしまったのが残念・・・と最近まで思っていたがこれには少々誤解があったようだ。確かに暗い作品が多いことに間違いはないがロマンアルバムから察するにそれだけに断じるのは無理がある。私は映画版「時の異邦人」は観たが小説のほうは古本屋でたまたま目にした「狂気の檻」を立ち読みした程度である(この時はレミーらのあまりの変貌振りにショックを受けてしまってすぐに読むのを止めてしまった。キャラクターに愛着があるからなおさらである。)ところが小説版はこれで終わらない。まだまだ先の話があるのだ。ひるがえって私の不勉強であることがわかり大いに恥ずかしい限りである。
キャスト面ではやはり先にあげたブンドルとレミーをそれぞれ演じた塩沢兼人、小山茉美の功績が大きい。特に塩沢にいたっては同氏が演じた数々の作品のキャラの中でもこれが一番のはまり役といえるほどの演技の冴えを見せた。ブンドルはスタッフの用意した設定に塩沢氏が「命」を吹き込むことによってさらなる輝きを得た、いわば相乗効果で生まれた奇特なキャラクターである。彼が若くして鬼籍に入られたのは本当に残念でならない。名優ほど早折するのは昔からの因縁であろうか。 閑話休題。小山氏の演技もまた素晴らしかった。レミーの匂い立つような色気とは違う、さばさばとした健康的な女の魅力を実に的確に表現していた。この時期すでに「アラレちゃん」でトップ・プロとして活躍していたがこの人ほど声質と演技力に幅のある人を私は知らない。前出の塩沢氏が特徴のある声によってスターとしてのステイタスを確保したすると、小山氏はその対極に位置する人と思われる。ロマンアルバムで脚本の首藤氏が「時の異邦人でのレミーは小山の演技を想定して作った」という趣旨の発言があるが、これは脚本側が小山氏にあわせたというより小山の力量を読み込んだ上でのキャラクター造形と言うべきであろう。それほどまでに小山氏の演技のレベルは高い。塩沢氏が濃厚に演じ、小山氏が軽妙に受け返すから芝居はとりわけ弾んだものになる。 その他でも鈴置洋孝氏や田中秀幸氏、郷里大輔氏など(ドラマの作劇上)脇を固める声優も芸達者ぞろいで声優面でもこの作品は非常に恵まれているのがよく分かる。
「戦国魔神ゴーショーグン」はリアルロボット隆盛の時期にあえて「バラエティ・アニメ」ともいうべき多角度的な魅力とスタッフの熱意が結実した稀有な作品であった。資金面でDVDは買えないが機会があるならばぜひもう一度観てみたい作品の筆頭である。<第一回・改 終わり>
橋本繁久
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