ゆりゆり日記
ただ知ること
過去にあつめたカケラで出来る絵は
その瞬間瞬間ごと
いつも完璧だということ
そうして明日を未来を生きていく

2005年01月22日(土) 羊の魂鎮め

ひつじには
沢山の種類があって
飼われている場所もさまざま
そんなのをひとつひとつ
ネットの画像で見ていると
いつまでも飽きない
持ち主の顔こそ載っていないけれど
毛筋にも個性がある

たまにテレビで見かけるような
毛がたくさん伸びたひつじを
くるんと抱えて
まるごと刈り取る
草や土が絡まって
おしっこの臭いなんかも残っている
そういうなんの処理もしていない毛を
そっくり買い取って
自分で洗うこともできる

一頭の毛の中にも
生えている場所によって
ふわふわで繊細なのから
しっかりと強いものまでいろいろで
洗った毛を選り分けて
その質に相応しい用途に使う
毛を紡ぎ糸にして
編んだり織ったり

今手にしている
ミルク色の綺麗な毛も
洗って使い易いように処理されてはいても
時おり枯れた草のかけらが混じっている
確かにいつかどこかで
一頭の羊の命のいとなみに繋がっていた
そんな証拠を見つけると
懐かしいくらいに胸がいっぱいになって
しあわせに満たされる

この懐かしさはなんだろう
そう思ったら
ふと菊丸のことが浮かんできた
犬なのに細くて長くて
すぐに絡まってフェルトになってしまう
キクの独特の毛触り
あいつに触れて癒された日々が
羊毛を通じて甦る

キクの毛の一部は
今でも大切に取ってある
持ち主の身体から長い時間離れて
ほとんど繊維のかたまりに過ぎなくなった
けれど
いつも嗅いでいた
日向のような匂いは忘れない

羊毛に触れるあれこれは
毛を刈られたあとも
どこかで息づいているはずの
変わらぬ生を喜ぶことと同時に
失った生への鎮魂
たくさんの生き物の犠牲の上に
成り立っているわたしの命をも
そうやって一緒に包み込む

最後の犬を失った
わたしの魂鎮めもいっしょに


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ゆりすこ [MAIL] [吉祥堂]

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