そうそう
書いておかねば
のコトがあったっけ

引っ越し前に
自分の両親と
数年前に亡くなった
弟の墓に参りたい
と母が言い
車を頼んで回った

その他にもうひとつ
大事なミッションがあって
以前の家の前を流れる
川に散骨して欲しいと
父が言ってたってコトで
一部をそれ用に
ずっと取ってあった

ビニール袋に入れて
明記したメモを貼って
お線香やライターと一緒に
蓋がきちんと閉まる
クリアケースで
運んだワケだった

その五月六日は
風が強い日で
びゅんびゅん吹く中
線香に火を点けるのに
めっちゃ苦労して
まずは両親の墓へ参り
続いて別のお寺へ

車の中で
母が骨を取り出したので
無くさないようにと
改めてきちんと
ケースに仕舞って
次のお寺でまた
吹き荒れる風と格闘

やれやれ
ようやく済んだ
と思って車に戻り
ふと見ると
ケースの中にあったはずの
骨が無い

そんなハズはと思い
どこかに落としたかと
もう一度
お墓の周りを
あちこち見たけれど
どこにも
跡形もなかった

その時の感じ
なんだか
ただならない
独特のあの感じ
いや単純に事実は
風で飛ばされたダケ
だろうけれども

やがてふと気付いた
きっとそれは父が
自分の存在を
知らせたかったんだろうと
焼き場からの食事会場で
清めの塩を盛った皿が
音を立てて割れた
あの時と同じだ

ついているよ
傍に居るよ
と
いつの筆跡か知らないが
父が書いたメモを
母はずっと大事にして
荷造りの間も
取り出しては見ていた

なるほどな
殊更に注意していた
あの骨が失くなるなんて
これ以上鮮やかな
知らしめ方があるだろうか
やりやがったな

あの父なら
如何にも
やりそうなコトだった

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