日常些細事
DiaryINDEX|past|will


2003年10月13日(月) 必殺募金人��

 お客が来ないので昼寝していたら、玄関のチャイムが
 ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン
とけたたましく鳴りだした。
 寝ぼけまなこで出ていくと浜崎あゆみさん(仮名・推定年齢68歳)である。
「あら。居たわ」
私の顔を見るなり浜崎さんはそう言った。
 あれだけ派手にチャイムを鳴らしておいて「居たわ」もないものだが、近頃『猟奇的な彼女』なる映画を見て
「男には耐えねばならんことが多いのだ」
という教訓を得ていた私はここで怒りをぐっとこらえ、
「えへへ。居たんですよお」
と愛想笑いをしておいた(ちなみに『千と千尋の神隠し』のときには主人公千尋の両親の振る舞いから
「いい年をして店の物を勝手に食べるような意地汚い大人になってはならない」という教訓を得た)。
 「よかったわ。おたくなかなか家に居ないから」
浜崎さんは肩から掛けた大きなバッグをよっこらしょ、と下ろし、中から取り出したのはなんと
 赤い羽根。
「一口500円なんですけどね」
「あ。それでしたらもう駅前で募金しましたけど」
 ううむ10月1日の悪夢を思い出す。私はやんわりとしかし断固として断ろうとしたのだが
「まあ偉いわねえ」
浜崎さんは少しも動じない。
「でもこれは町内会で集めてるものなんですよ」
 彼女は町内会の世話役をやっているのだ。
「もちろん募金するしないはその方の御自由なんですけど、みなさんとても協力的でしてねえ。あと、おたくがしてくださったら町内全世帯が募金したことになるんです」
「はあ。そうですか」
「ほかの町内会ではなかなかこうはいかないんですよ。わたしゃ嫌だ、なんてへそ曲がりがどこでも一人はいますからねえ」
「はあ」
 私はしぶしぶ返事をする。だってもう2度も募金してるんだもん。
 すると浜崎さん、がらりと話題を変えた。
「ところで20日に八幡様のお掃除があるんですけど、参加できないんですか?」
「ええ。その日は仕事で出かけるものですから。申し訳ないんですけど」
「そうですかあ。町内総出でやるんですけどね」
「どうもすみません」
「先月の運動会も来られなかったですね」
「はあ。仕事だったもので」
「先々月のどぶ掃除も」
「すいません。仕事で」
「2月の廃品回収の当番は」
「忘れてました・・・」
 いかん。これでは引っ越してきた10年前まで遡って不義理を責められそうである。私はあわてて財布を取り出した。
「嬉しいわあ。これでうちの町内会はパーフェクト」
 私の胸に赤い羽根を付けながら浜崎さんはとても満足そうである。
「お独りで暮らしてれば何かと不便でしょう。困ったことがあったら遠慮なく相談してくださいね」
 そう言うと足どりも軽く帰っていった。
 いや、ほんといい人なんですよ仕事熱心で面倒見が良くて。


高橋もんだる院 |HomePage

My追加