| 中国旅行の思い出 | 2004年03月29日(月) |
洛陽に行った時のことです。 もう名前は忘れてしまいましたが、とある山の上にある寺に行きました。徒歩で登ると長生きすると聞いたので、行きは非常識な段数の階段を寿命が縮む思いで昇りましたが、帰りはさすがに疲れ果ててロープウェイで下りました。 二人がけのロープウェイから降りる時のことです。 私は二人の体を押さえていた鉄製の安全柵を持ち上げようとしました。しかし、隣に座っていた友人が一瞬早く、柵を跳ね上げたのです。そのため、柵ごと私の手は上に持っていかれ、その勢いで親指が頭上の鉄枠に挟まれてしまいました。 痛いというより熱いという感覚がして、見てみると、私の右手の親指の爪が二つに割れて、剥がれかけていました。だらだら血を流す指を押さえながら、慌てて麓にあった診療所に駆け込みました。 椅子に座るように身振りで言われたので、そのようにして待っていると、ほどなくして奥の部屋から白衣と白い帽子をかぶった小太りの年輩女性が四人、わらわらと出てきました。 最初、この給食のおばさんのような方々は医者なのか看護婦なのか、という疑問がわきましたが、その手に手に持ったものに目が奪われると、それどころではなくなりました。 女性たちはそれぞれ、ナイフ(のようなもの)、ピンセット(のようなもの)、千枚通し(のようなもの)、そして太い輪ゴムを持っているのです。言葉の通じない私ですので、何をされるのか訊くこともできず、もしかして残った爪を無理矢理剥ぎ取られるのでは、という恐怖に固まって、背後にいる友人たちにhelpな視線を送りました。 しかし友人たちも怯えた顔で後ずさるばかりで、「爪を剥がすんじゃない?」などと無責任なささやきを交わしあっています。 にこりともせず、にじりよってくる四人の女性たちに、よせ、やめろ、麻酔も無しでかと、ひきつった笑いを浮かべて心の中で叫ぶ私でした。 結局、三人の女性は私の指を見ると、持っていたものを机の上に置きました。輪ゴムだけは私の指に巻かれましたが、それは止血のためのようでした。そして、爪がおおかた剥がれた指に赤チンをたっぷり塗ってくれただけでした。 しかし、彼女らは持っていた道具で一体何をするつもりだったのだろう、と今も不思議に思います。 治療のあとで友人が筆談で会話して聞いた情報によれば、そのロープウェイでは毎年、安全柵で怪我をする人が続出し、何人もが指を飛ばされているとのことでした。私の場合、隣に座った友人の、跳ね上げる力が弱かったので、爪だけで済んだのでした。 そんな危ないロープウェイ、なんとかしろよ、とは思いましたが、その辺は大陸の大らかさとでも言うのでしょうか、特に改善されることもなく毎年コンスタントに怪我人を出し続けているようです。 利き手の怪我のためその後の旅行で難渋しましたが、いい思い出です。 |
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