仕事がようやく決まった。
目黒の花屋である。
花など一昨年に薔薇を枯らして以来、触ったことすらない。
薄黄色い薔薇で、二つ三つ花を咲かしたあと、野ざらしに枯れた。
とても素敵な色だったが、花弁が大きすぎたのだ。
そんな気分ではない。 遠のくように幻滅して、それ以来花には触っていない。 面接に行ったとき、店の中はコチョウ蘭のいい匂いがした。
これはこれでいいかもしれない。
近くには僕好みのレコード屋もある。
面接の帰りに寄ってみると、ドアーズがかかっていた。
地獄の黙示録のイントロに使われてた曲だ。
他に本も置いてあり幾つか買いたくなったが、
裏をめくるとそれなりの値がしたので、
止めておいた。
今度からはその本を買うことも出来る。
いささか気が抜けてしまうが、
明日からは僕にも職があるのだ。
そのことを下北沢のミスタードーナッツで記していた。
携帯からもこの日記は書くことが出来るのだ。
でも携帯では、ほんの少ししか書くことが出来ない。
コンクリートに頭を擦りつけるアナグマみたいな按配になってしまった。
これはよろしくない。
でも店を出てみると、
何故だか、下北沢の街は溜息で出来ているように思えるのだ。
慰められ、そのあとヴィレッジヴァンガードで雑貨を見て家に帰った。
薔薇が植わっていた鉢はまだある。ここからまた花が咲くのか、
それとも咲かせるように僕は努力するのか、
他の色々な可能性こそなお暗いが、
寝る前に観る夢のように、
それはあどけない。
力の抜けた気持ちでそれを探ったが、
行き当たったのは
モンクの「アローン イン サンフランシスコ」というアルバムで
ブルーモンクはその一曲目だ。
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