よし、いい子だ。
くそ!前が見えん。
・・・左足はクラッチを戻す。右足はブレーキペダルを踏み込む。
いいブレーキじゃないか。
そう、そういう感じ。
・・・信号が変わる。スロットルをまわす。でもその回転数はどんどん下がっていく。
止まるな馬鹿野郎!
エンジン止まるな!
急に止まるな!
・・・後からはものすごいクラクション。環七の陸橋の上でハザードを焚く。
よし、いい子、いい子。
おまえ、本当は出来る子なんだから。
時計を見ると、
時計は携帯だ。
それはしっかり雨に濡れている。
ただ止まっていても、雨は叩きつけてくる。
うんざりした気分でまたエンジンを掛ける。
エストレア・カスタムというのがこいつの名前だ。
蹴飛ばしてやりたいが・・・96年式。結構やばいね。7年経ってる。
何とか家に着いたが、途中抜け道を使おうとして道にも迷った。
ポケットに入れておいた煙草もやっと形を成している恰好だ。
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