今はビニール傘の閉じたり開いたりする音を聴いている。 実際にそんな音がするわけじゃないが、 そんなふうに想像してみるのだ。
車の中で。
チューインガムを噛みながら。
今の気分は全てのスイッチを切ってしまいたくなる衝動に似ているのかもしれない。 無論、そんな気分はただ遊ばせておくだけだが。 どちらも目は冴えている。 でも、もし君が今そんなふうならば、僕は何が出来るだろう?
その通り。僕はせいぜいチューインガム程度のものしか差し出せない。 いまやフェンだって人生相談を放送する御時世だ。 オフコース、オフコースと女の声が連呼している。
君にはリノで買ったお気に入りの一枚をあげるよ。 紅花の匂いがする。 紅花の色のする。 その色に僕の温度を託そう。 君にチューインガムをあげたいな。
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