部屋を暗くしよう。僕はスイッチを引き、それから手探りで小さな灯りに手を伸ばした。少し前からレコードプレイヤーからはセゴビアが鳴っている。
そう。それくらいで。
心の水位というか、高まりがかつてあった場所に戻っていくような感覚。漠然と自分の幸せのことを考える刻限。特に失望するでもなく幻滅してしまう。常に水道の蛇口を廻し続けているような気がする。ご苦労なことだ。
断言はしない。しかし僕には確信があった。それから息を継ぐ場所や何も無いこと。本当に生まれてこのかた何も無いかのように何も無いのだ。
フラットな気分でそんな世にも恐ろしいことを確認している。どんなに力んでもそれは変わらない。
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