何気なくレコード棚の背を当たっている。随分貯めこんだものだ、そんなことを思いながら。 もちろんそれらの大半はジャズだし、しかもそれは古典と呼ばれるようなたぐいのものだ。例えばサキソフォンコロッサスみたいな。 ジャズレコードはまるで夢の箱庭みたいだ。ジャズレコード屋というものは僕の単なる想像に過ぎないような気がする時すらある。そこでは僕は僕の欲しいと願ったものを寸分狂わず取り出してくることが出来るからだ。束縛の無さ、というよりある意味和解とも取れるものが、他の様々な事象とまるで異なっているような気がする。多分、ジャズレコードはそれらよりずっと簡単だ。時々その簡単さにイライラしてくるほどに。 使い古したものには愛着がある。けれど飽きてしまえば、あとは公平さに縋りつくばかりだ。つまり熱が醒めてしまえば、あとは忘れていくばかり。
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