裏の家のおじいさんが亡くなった。 つい最近まで、脳梗塞だか脳卒中だかで長いこと 入院していたらしい。 そして退院してすぐ、畑仕事をしていて倒れたらしい。 病み上がりの体をおして働いたのが寿命を縮めたのは 間違いないだろう。 あの日の寒さは覚えている。 今年一番の冷え込みとテレビで騒いでいたのも頷ける、 本当に寒い一日だった。 私など、寒くて外で一分とじっとしていられず、 駅まで走って行ったほどだ。 そんな日に外へ出て仕事をしていた。 誰に強要されたわけでもない。 むしろ制止を無視して働いていたらしい。 そして倒れて。 病院へ運ばれ。 意識の戻らないまま。 逝った。
その話を聞いて衝撃を受けた。 たかだか20数年しか生きていない私には とても真似できない逝き方だと感動して、 ひどく羨ましくなった。
さほど懇意にしていたわけでもない。 顔も名前もよく知らない。 向こうとてこちらの顔など覚えていないだろう。 どこにでもいるありふれた老人のありふれた死に様。 でもそれは、どんな大層な自殺も完全な殺人も 一笑に伏してしまえるくらい 見事な死に様だと思った。
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