光原作品は、単独の本としては二冊目(と思う)。 前に読んだ「十八の夏」の中の短編に心惹かれて、もっと読んで みたいと思っていた作家さんである。
今回の「時計を忘れて森へ行こう」の舞台は森。 その守人と彼を慕う高校生の語り手の彼女が主人公。
織り成されたたくさんの透明な言葉が、枯れた心に響いた。 「何かできるときに何かしてあげることは簡単ですが、 何もできないとわかっていて、それでも全身全霊をあげて そばにいるのは本当に難しい」 「悲しみを癒すことは神様と時間にしかできない。 だけど苦しみを悲しみに蒸留することは、もしかすると人間にもできる」
もしかすると、私のアンテナはすっかり錆び付いていたのだ。 たぶん、大切な何かを忘れている。 涙が出た。
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2003年10月06日(月) |
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