内ナル世界






いつしか陽も暮れ、人影が少なくなった公園で

一人の人間がうずくまった

誰かに助けを求めるわけでも泣いているわけでもなく

唯、じっとしゃがみこんでいる

それを知っているのは沈む夕陽と生まれた三日月

そして、  

そのヒトの姿は酷く美しかった

神をも揺るがす姿

そのヒトは幾日も幾月もじっとしていた

なのに陽は昇らず、いつまでも三日月のまま

そのヒトが立ち上がるのを待っているかの様

他の人間はそれを知らず眠り続け、起きる者は居ない

やがてスッと瞳を開け、顔を上げたヒト

その眼差しには光が宿っていなかった

絶望を見てきたかの様

そしてまた陽は昇る

活動を再開した何も知らない人間は

忙しく時間を過ごしていく

ヒトは立ち上がり、ゆっくり歩き始める

ヒトに注目する人間は一人も居らず、

ヒトを避けようとする人間もまた、居ない

時間は刻々と過ぎて行き、夜を迎え、朝を迎え、

また夜を迎えてもヒトは1キロも進んではいなかった

ヒトのその瞳に哀しげな、憐れむような

怒りに満ちた色を垣間見る

人間を見向きもしないヒトは、只管歩いていく

宛てもなく





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