先月、用があって隣駅の町へ行ったときのこと。用事をすませてさて帰るか、と思ったら、階段に長蛇の列ができていた。なんだろう、と思いながらホームに上がると、そちらも人だらけだった。音に注意して放送を聞いたところ、数駅前で人身事故があったらしい。復旧のめどもたってないらしい。ふーん..と思いながらわたしは自販機のそばに行き、ポカリスエットを買った。 片隅で立ったまま飲みながら、あたりを見回す。暑いし、人も多いしで、皆苛々しているようだ。電話で何か話している人もいる。仕事で移動中のひともいるようだ。通勤時間とは違うので、仕事ではなさそうなひとも多いが、皆何かしら用があって使っているのだろうし、予定等もあるのだろう。わたしはとりあえず用はすんでいるし、困ることといえば夕食が遅れるくらいだろうけれど、まあ最終的に家に帰れればいいかな、と思っていた。 目の前を、駅員さんが通った。ずっと待っていて疲れたひとだろう、一体どうなっているのかと駅員さんに詰め寄っている。口調も表情も、ほとんど怒っている。駅員さんに怒っても仕方がないだろう、とは思うが、そうなってしまうのも仕方がないような気もした。でも、駅員さんが悪いわけではもちろんない。 昔、中学校の先生が、自殺するとしても駅で身投げだけはするな、と言っていたことを思い出す。じゃあ他の方法ならいいんかい、とつっこみたくもなったし、大体本当にそうしようと思った場合、後先のことなんて、何も考えられないんじゃないかな、と思った記憶があるが。 どういう事故だったのかわからないのに、そういうことを考えるのもなんだな、と思いながら空き缶をごみ箱に捨てた。何台か電車がホームに入るが、折り返し運転をするらしく、回送車になっていて、わたしたちは乗ることができない。そのたびに、ひとが長い息を吐き肩を落とす。 やがて運転再開の放送が入った。手持ちの本は読み終わっていたので、自分が待っていた時間が短かったか長かったかはよくわからない。事故を起こした人や、事故の処理をしていた人たちはどうだったろう、と思いながら電車に乗り込んだ。乗るのは一駅ぶんだけなのだから、べつな方法をとるべきだったのかもしれないが。こういう場合、ぼんやりとそのまま流れに従ってしまうほうなのだ。
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