「あすかー、あすかー」
ダムダムダム!!!
あじゅんまが力強くドアを叩く。 はいはい、わかったわかった。どうせ「飯食え」でしょ。 仕事中に呼び出されて、不機嫌そうにドアを開けると 頭になぜかタオルを巻いたあじゅんまが ケーキを持って小躍り。そして一曲。
♪せんいるちゅっかーはむにだー(お誕生日おめでとう)
ケーキにロウソクを灯し、フッと吹き消すと あじゅんまファミリーも一緒になってお祝いしてくれた。 これからケーキカットをして、皆で仲良く食べるのかと思いきや
「じゃあ、これ持って部屋に行ってゆっくり食べなさい」
はい?!
部屋にデコレーションケーキ持って、一人たたずむ俺。
なんか寂しい(笑)
しかしせっかくなので、一人ケーキカット。初めての単独作業です。 ケーキは美味かった。甘くなくて上品な生クリームとフルーツ。 美味かったけど、さすがに一切れで満腹。
 生クリームが上品。ブドウジュースはあじゅんまから。 コーヒーはご子息が入れてくれました。
原稿も無事届け終えて、仕事もひと段落。 だけど、今日中にケリをつけなければ ならない大仕事が残っているのだ。
実は。実はですね。色々ありました。 日記にかけないこと。 あっちゃん、ウソついてました。 本当はメール君(以下Dさん)好きでした。 日記で何とも思ってないって書いてた頃には 多分好きだったのかもしんない。
殿方の事も好きだけど 彼のお陰で芸能人を好きになる感覚と 同じように感じられるようになったし 会っても動揺しなくなったし。
だけど私の「好き」と彼の「好き」はちょっと 違ってたようです。
朝から晩まで、土日も仕事の相手を呼び出すには 自分の誕生日をダシに使うしかなく こんな事情で今日の約束も全部キャンセルして もらったのでした。 どうしても日本に帰る前にスッキリしたくて。
約束の場所に行く途中の電車の中で 知り合いの人から電話が来た。お誕生日のお祝いの電話だった。 日本語で話してるのを聞いて おじさん二人組に声を掛けられる。
「日本人?住んでるの?学生?仕事してるの?」のおなじみの質問。 「漫画を描いています」と答えに 「おぉ、素敵な仕事だね」と笑顔のおじさん。 なんだか嬉しくなって 「今日は私の誕生日で、これから友達とお祝いするんです」 というと、手を叩いて祝ってくれ 「なんか君、可愛い顔してるねぇ」と言われました。
そんなこと韓国に住んで言われたの初めてだー!! (1回殿方に言われたことあるけど。完全なるお世辞で(爆)) ウキウキ気分(死語)で、彼の会社があるカンナム方面へ。
待ち合わせに現れたDさんは、いつもと変わらない様子。 ちょっと豪華なご飯を奢ってもらい 昼間食べきれなかったケーキを二人で食べて 食べきれなかった分をお店の人にお裾分けしに行くと 「よくできました」と頭をぽんぽん叩いてくれます。
「記念だから」と手渡してくれたのは真っ赤な箱。 開けて見ると、可愛い毛糸の帽子が入ってました。 Dさんには一言もそんなこと言ってなかったんだけど 実は私がずっとずっと欲しくて探してたタイプのデザイン。
あっちゃん幸せ絶頂です。 ニヤニヤしていると「なんだか嬉しそう。日本に帰れるからかな?」
あっちゃん怖いものなしです。 「もし私が日本に完全に帰っちゃたら寂しい?」と つい恐ろしい質問をしてしまいました。
「その時は笑顔で見送ってあげなきゃね」
おや?
おやおやおや??
これは雲行きが怪しい・・・。
首をかしげたまま、彼の車に乗って新村までレッツゴー というその時。 Dさんの携帯がなりました。しばらく話し込み 電話を切るとふっかい溜息。
「ごめん。会社から呼び出し来ちゃって これから戻らなきゃ」
固まったまま車に乗っている私の様子を 察して、帰らずに残ってくれ 色々話しました。
「いいお友達でいましょう」結果はコレ。 殿方の事で辛かった時期を知ってて 同じような仕打ちをされた事が 信用してただけにすごくショックだった。 弱ってる所にそう簡単に好きだなんて言うなよぅ・・。
それに関しても 「返す言葉もない。俺が全部悪いんだ」と 全部非を認めてしまうのだ。 ずりーよなー。 そうすんなり認められちゃったら 責められないじゃんかよ。
だけど悔しいから言いたい事は全部言った。 後で「あの時こういえばよかった」なんて後悔しないように。 韓国語で戦った。ちょっとカッコイイぞ自分(笑)
帰りは改札まで見送ってくれたDさんに 頭を下げて、振り向かずに電車に乗りました。
史上最悪の誕生日だった。 色々思い出したら電車の中だったけど涙が出てきた。
誰かにムショーに会いたい。 だけどこんな時間に呼び出したら きっと迷惑だろうなあ、と思ったら誰にも連絡できず。
ぼんやりしていたら、一個手前のホンデに降りていた。 そういえばホンデには出版社の友達のキムさんがいたっけ。 私は迷惑を覚悟に電話を掛けた。
「最近ずっと電話しても連絡取れなかったから 心配してたんですよ」という声に思わず わがままを言って外に出てきてもらい、二人で「お姫様喫茶」に行く。
仕事関係でも韓国語。下宿でも韓国語。 彼と話す時もずっと韓国語だったので 日本語を話せるキムさんは、頼もしい存在だ。 何話す訳でもないけど、気持ちがだんだん落ち着いてきた。
「今日が誕生日だって知ってたら、何か用意できたんだけど・・」 と、コーヒー代を奢ってくれた。 呼び出したのはこっちなのに申し訳ない。
テクテクと家まで歩く道のりはさっきより全然軽い。 お部屋で一息ついてDさんにメールを打つ。 プレゼントのお礼も、キチンとさよならも言ってなかったから。
「今日はごめんなさい。プレゼント嬉しかったです。 あなたが好きでした。色々ありがとう」
おそらくコレが最後のメールになる。 多分彼からも連絡はもうこないだろう。
 私の大好きな色合いの帽子。 サムジーという韓国オリジナルのブランドです。
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