後ろ姿があっけなく 改札の向こうに消えた 反対側のホームから 走り出す電車 速すぎて
多分ドアに額もたせて 見送ってくれている いつもそうだったように 願ってしまうけれど
あの日から駅は さよならの場所になった あの日から二度と 戻れない時が過ぎた
ありふれた暮らしの中 またすれ違う偶然を 願う位ならなぜ あの手を離したんだろう
人波に押されて 改札を通るたび 振り返ってしまう癖 直りそうになくて
あの日から駅は さよならの場所になった もう待たなくていい 自分に言い聞かせた
あの日からどれだけ 戻れない時が過ぎても あの日から駅は さよならの場所になった
ドアの向こうに 優しいまなざしを 探しながら 痛みながら 迷いながら 歩く
そんな場所になった いつもの駅
痛みさえ力に変えてゆけると 歌声がきりきりと街に流れる冬 今朝から止まないみぞれをさくさくと 踏みながら素直に聴けない わたしがここにいる
傷を負うたびに忘れてゆく 蹴られるために生きている人間などいないと
痛みを生きてゆく力に変えるには 余力が必要なこと 知っていますか そっと呟きながら 人ごみをすり抜けてゆく
生きてく力 それはきっと 時間だけが握っている 安直な「がんばれ」の声 魂が削られてゆく
生きてく力 それは 無為としか思えない日々にも眠っている 自分に言い聞かせ今日をやり過ごす 祈るように そう ひたすら祈るように
雪はいつしか雨に変わった 春までどのくらい 歩くのだろう
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