日常些細事
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2004年02月26日(木) かいーの(��)

 堂田皮膚病院(仮名)に診察を受けに行く。
 診察室の椅子に掛けるなり
「いかがです、具合は」
 と堂田先生が訊ねてくる。
「はあ」
 私は不承不承答えた。
「先生にもらった蕁麻疹の薬を使いましたら、痒みや肌のぶつぶつが無くなりました」
「ほうら、やっぱり蕁麻疹だ。」
 膝をぽんと叩いて堂田先生。
「私の言ったとおり蕁麻疹だったでしょ。虫刺されじゃなかったでしょ?」
 ものすごく得意そうである。
 なんかくやしいなあ。
 私は絶対虫刺されだと思ったのだが。
 今でもそう思っているのだが。
 まあ、とにかく病気は治ったみたいだからいいんですけど。


2004年02月24日(火) かいーの

 数日前、庭を掃除するため植木の間を這いまわったのだが、その夜から
  ぶわわわーっ
 と蚊に刺されたような跡が全身に現れ、痒くて仕方がない。
「これは虫に刺されたのだ」
 そう確信した私はただちに病院に行くことにした。
 だが堂田皮膚病院(仮名)の堂田先生は私を簡単に診断するなり、
「ああ。蕁麻疹ですね」
と、こともなげに言うのである。
 虫刺され間違いなしと思っている私はなんとも納得がいかない。
「でも先生。庭を掃除してから発疹が出るようになったんですよ。虫に刺されたんじゃないですか」
「いやいや。虫に刺されたんなら皮膚にもっとひどい跡が残ります。蕁麻疹ですよ」
「けど先生。私は生れてこのかた蕁麻疹になったことは一度も無いんです。」
「蕁麻疹というのは急に出るものなんですよ。食べ物、動物、心理的なもの、と発病の原因はいろいろありますけどね」
「ははあ。食べ物や動物ですか」
 それなら思い当たる節がある。私は先生に質問してみた。
「こないだ冷蔵庫に賞味期限を10日過ぎたパンがあったのでもったいないから食べちゃったんですけど、これが蕁麻疹の原因でしょうか」
「それは違うと思います」
「庭に糞をする猫を捕まえて折檻しようとしたら逆に引っかかれて逃げられました。これが原因でしょうか」
「それも違うと思います」
 私は嘆息した。
「では、ほかに蕁麻疹の原因になりそうなものはないですねえ」
「たとえば仕事がうまくいかなくて強いストレスがかかっている場合、蕁麻疹の出る人がいますよ」
 堂田先生がとても優しい目をして言う。まるで勉強の出来ない子供をあたたかく見守るベテラン教師みたいである。「あなた、いまストレスがあるでしょう?」
「はい」
と私は答えた。


2004年02月21日(土) 困ったものだ

 半蔵理髪店(仮名)に散髪に行く。
 ここの店主は他人の髪を短く刈ることと同じくらいゴルフに生きがいを感じているようだ。
 私の髪を切ってるあいだ、ずっとゴルフの話である。
 髪を切り終えてひげを剃り始めてもまだ話している。
 ふだん寡黙なのが嘘みたいによく喋る。
「バンカーに捕まるともうお手上げなんだけどやっぱり一番難しいのは最後のパットだねえ。これが一回ですぽーんとカップに入った日にゃもう嬉しくて嬉しくて。カップに入ったボールを拾ってこう、頭上に掲げてだね、他のメンバーから拍手なんか貰っちゃってああゴルフやっててよかったなあ、なんてね」
 私はゴルフをやらないので全然興味はないのだが、なにぶん相手が刃物を持っているので黙って聞いていた。
んもう、ゴルフ好きにも困ったものです。


2004年02月11日(水) しくしくの日々

2月11日
 まだふらふらする体を引きずって職場へ。
出社するなり上司から
「風邪ぐらいで休むとは何事だ」
と説教される。
「俺なんか肝臓病で顔が黄色くなっても仕事してたんだぞ」
と自慢する。
 この人は一昨年、自宅で朝から酒を飲んでいる最中に倒れて救急車で病院に運ばれ、肝硬変1歩手前と診断されてそのまま三ヶ月間入院していた。
そんなのと一緒にしてほしくないなー、と思いながら黙って怒られる。

2月12日
16時間の勤務をどうにかこなして退社。
 発車寸前のバスに飛び乗り、やれやれと座席に座ったところで定期券の無いことに気が付いた。
 あわてて鞄の中やズボンのポケットを改めてみたが見当たらない。
 職場を出たときにはコートのポケットの中にあった。
 それをバス停までの5分間の道のりで落としてしまったらしい。
 なんたることであろうか。
 定期はまだ3ヶ月以上残っていたから1万5千円以上の損失である。
 声を殺して泣く。


2004年02月10日(火) 夢の中へ

 このところ風邪が治ったと思ったらぶり返し、を繰り返していて、
とうとう今日は仕事を休んでしまった。
 布団の中で日がな一日うつらうつらしていると、眠りが浅いせいか色々な夢を見る。
 さっきはトナカイに乗って南極探検に行く夢を見た。
 すごい吹雪の中、ようやく南極点に到達すると、そこには飛行服に身を固めたライト兄弟が待っていて、お兄さんのウイルバーが
「やあひさしぶり」
と話しかけてくるのだ。
 どうやら私と兄弟は知り合いらしい。
 そのあと私とライト兄弟とトナカイの4人は南極点のとなりにあった吉野家に行き、牛丼を食べた。
「あー。牛丼は旨いわ」
そう言いながら、トナカイが牛丼のおかわりをした。
 私は、箸の使い方が上手だなあ、と感心しながらトナカイの食べっぷりを眺めていた。




 


2004年02月02日(月) 悲惨な職場

 同僚の細田さん(仮名・48歳♂)が風邪を引いた。
 マスクをして時折ごほごほ咳き込んでいる。顔色も悪く辛そうである。
 本当は数日休んでゆっくり静養してもらいたいのだが、人手が足らないのでどうにもならない。ひとりが余計に休むと他の者が休日を返上しなければ勤務に穴を開けてしまうのだ。細田さんもそれを知っていて無理に出勤してきたのである。
「大変ですね」
と私はおくやみを言った。
「他人にうつせば治るっていいますよ。私にうつしたら?」
「いやいやそんな」
「大丈夫大丈夫。私はゴキブリ並みの生命力ですから。はっはっは」
 余裕で答えていたら本当に風邪をうつされてしまった。
 それがまたものすごく悪性である。
 細田さんは物腰の低いとても良い人なのだが、持っている病原菌と人柄は関係無いらしい。
 頭がんがん。関節ずきずき。喉はがらがら。消化器官ぴーぴーである。
 がんがんずきずきがらがらぴーぴー。
 がんがんずきずきがらがらぴーぴー。
 一日中、濁音と破裂音に苛まれる日々。
 細田さんも私に風邪をうつして治ったわけではない。相変わらず具合が悪い。
「ごほごほ。すいませんねえ高橋さん、風邪うつしちゃって」
「なあに。いいんですよ。げほげほ」
「ほんと申し訳ない。ごほごほ」
「げほげほ」
「ごほごほ」
 なんだか悲惨な職場になってきた。


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