いつの間にか空き地に出ていたみたいだった。今度は板塀を向こう側から見る恰好。キュウキュウと泣く声が聞こえる。あたりはさんざと残り日が降り注ぐ。野焼きの匂いとも草の蒸せた匂いともつかぬ、すえた匂いが鼻をつく。足元は露で濡れていた。進めば、 その丈はますます、僕の体はドンドン沈み込んでいった。声のほうへ、声のほうへ、 進むと、隣家のブロック塀近く、草の温かに生い茂るのを踏んで固め、そこに子犬が折り重なって眠っていた。 我を忘れ近づく。それから腰をかがめ、その鼻息がかかるところまで。親犬のことを思いだして振り向く。 何も分からない。 丈の高いススキの穂が視界を覆い隠していた。 僕はそれで茶色の小さな子供を抱き上げた。 まだ目も開いていない。 自分の冷たい手を温かく包み込むばかりだった。
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