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Sail ho!
Tohko HAYAMA
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Sail ho!:映画「マスター&コマンダー」と海洋冒険小説の海外情報日記
海洋歴史映画・小説入門(2)

《28日の日記より続き》

■ 海洋冒険小説

入門編ということで、現在、店頭注文で入手可能なものからご紹介していきます。
このほかにもドリンクウォーター・シリーズ、デランシー・シリーズ、オークショット・シリーズ、フォックス・シリーズなど1980年代の半ばには数多くの同時代を描いた歴史海洋冒険シリーズが邦訳出版されていたのですが、現在は古本市場でしか手に入りません。これらに興味を持たれた方は、海洋小説関連のHPをご検索ください。


なんといっても、まずは「M&C」の原作…という方に
1)オーブリー&マチュリン・シリーズ

早川書房でのシリーズ名は「英国海軍の雄 ジャック・オーブリー」。パトリック・オブライアン著。
ハヤカワNV文庫から現在1〜3巻と、映画原作となった10巻が邦訳出版されています。

ただし、欧米ではジェーン・オースティンと並び賞せられる格調高い名作…ですので、読み口の軽いテンポの早い最近の娯楽冒険小説に慣れた方にはちょっと辛いかも。
本来ならば1巻から読むのが筋ですが、指輪物語と同じで1巻上で挫折される方がままあります。
1巻途中で「これは駄目だ」と思った時は、そのまんま諦めず、3巻を先にお読みください。

また時間が無いから映画の原作だけ読みたい…という方>
この映画の原作は10巻となっていますが、じつは3巻からもかなりの部分が反映されていますので、是非3巻→10巻と2冊お読みくださいますよう。

もし1冊だけ読むなら、私は4巻もしくは5巻をおすすめしたいのですが、これまだ邦訳されていないので…。
早川書房さま>早く4巻と5巻をお願いいたします。

なお、「オーブリー&マチュリンの読み方」「ねたバレせずに10巻を読む方法」「10巻補足解説」については、私の日記の2003年9月26日、2004年1月24日、25日、2月8日をご参照ください


やはり物事は基本から…という方に、または悩める管理職の男性諸氏に
2)ホーンブロワー・シリーズ

同じくハヤカワ文庫NVから、シリーズ名は「海の男ホーンブロワー・シリーズ」全11巻。
今なお欧米で次々と新作が発表される「海洋冒険小説」という娯楽小説ジャンルの第一人者、セシル・スコット・フォレスターによる海軍士官ホレイショ・ホーンブロワーの一代記。上でご紹介したITVテレビドラマの原作でもあります。
日本で最初に邦訳された海洋冒険シリーズですが、厳密に言うとフォレスターは海洋小説の中興の祖、真の意味での第一人者は実際にナポレオン戦争当時に士官候補生として従軍していたフレデリック・マリアットとその小説群ですが、これはもう完全なる古典なので、海洋冒険小説はフォレスターから始まると言って良いと思います。

読み口の軽い娯楽小説というよりは本格歴史小説。ビジネスマン好みのリーダー論を読み取ることも出来、後藤田正晴元副総理が、自著の中で愛読書として取り上げていらっしゃいました。司馬遼太郎などがお好きな方へおすすめの海洋小説です。
通常は1巻から読み始めるものですが、試しに1冊だけ読んでみようと思われる方には5巻をおすすめします。


海のこと何も知りません。初心者向け軽い読み口から入りたい…という方に
3)アラン・リューリー シリーズ

徳間文庫から、シリーズ名は「アラン、海へ行く」。現在6巻まで刊行。
海洋冒険小説の作家は殆どがイギリス人ですが、アラン・シリーズの作者デューイ・ラムディンはアメリカ人。海洋モノにあまり馴染みのないアメリカ人読者に配慮しているため、海事関係の解説がわかりやすく、海には全く素人の主人公アラン・リューリーと一緒に冒険に巻き込まれていくうちに、少しずつ当時の船のことや海軍のことがわかっていく…という仕組み。
徳間文庫から現在6巻まで発行すみ。

アラン、海へ行く�機屬呂澆世啓圓粒だ錙�
別名を海洋青春小説(苦笑)。
相続のトラブルから、本人の意思に反して士官候補生に志願させられてしまった(父親が勝手に海軍に放り込んだ)アラン・リューリーくん17才「陸にもどりたいー!海軍なんて大っきらいだー!」と言っていたのに、海の生活に馴染んでいって時に愛着すら持つようになって、今度は「なんで俺はこんな生活が好きになってしまうんだー!」と自分に腹をたてるところが…カワイイ。
この子、負けん気は人一倍だし、実はけっこう正義漢だけど、女の子に手は早いんで…1巻の冒頭はベットの中から始まる…、一応は成人指定かしら?

この小説、現在続刊の発行があやぶまれております(未訳が6冊待機しているのに)。ぜひ皆様お買いあげくださいまし、そして徳間に続刊希望のお手紙を出しましょう!


「M&C」では「Uボート」まがいの密室人間ドラマが面白かった…という方に
4)ボライソー・シリーズ

艦内という密室の人間ドラマを描かせたら右に出る者はいない作家がアレクサンダー・ケント。海軍士官リチャード・ボライソーの生涯を描いた大河シリーズは、ハヤカワNV文庫から24冊邦訳され、リチャードの大往生後は、甥のアダム・ボライソーが主役を引き継いで最新は26巻、英国では27巻がすでに出版されていますので、近々日本でも邦訳27巻にお目にかかれるのではないかと思います。
シリーズ名は「海の勇士ボライソー・シリーズ」。ハヤカワ文庫NV。

日本語版は原則、リチャードの年代記風に17才の1巻から始まっていますが、最初に読んでいただきたいのは何といっても4巻「栄光への航海」。1巻完結なので、途中から読んでも全く問題はありません。
反乱艦の艦長職を引き継いだリチャード・ボライソーを主人公に、艦という閉ざされた空間の中で展開される濃密な人間ドラマです。
この人間ドラマこそが海洋冒険小説の醍醐味だと思っている私にとっては、この「栄光への航海」は歴史海洋小説のベスト1なのですが。
極限状態で試される信頼、裏切り、友情、兄弟の絆。ハラハラドキドキ最後まで読者を引っ張っていく娯楽小説としてのテクニックは見事だと思います。

ちなみに作者アレクサンダー・ケントは本名のダクラス・リーマン名義で第二次大戦を舞台にした海洋小説、海兵隊を主人公にした冒険小説(後述)も多々発表されていますが、第二次大戦ものの中にはそれこそ「Uボート」の世界を描いた、国王陛下のUボートもあります。


サプライズ号一家のチームワークが魅力的! 囮筏や艤装船のトリックが面白かった!…という方に
5)ラミジ・シリーズ

至誠堂から「ラミジ艦長物語」でシリーズ化。全23巻。
映画「M&C」のサプライズ号の一体感を見ながら私が思ったのは、ラミジのカリプソ号ってきっとこんな雰囲気だったんだろうなぁということ。カリプソ号も独航のフリゲート艦で、艦長は現場主義で部下思い(ジャックに比べるとラミジはかなりせっかちな性格ですが)、艦全体に活気があって生き生きしている。

さらに、実はあのカラミーの初指揮艦になる囮いかだと、艤装船のトリックは、あきらかに脚本家がラミジ・シリーズから拝借してきたもの(ちなみに、ミズン・マスト切り離しのエピソードはボライソーから来ています)。「パイレーツ・オブ・カリビアン」でエリザベスが提案する捨て錨で回頭作戦も、私はラミジで読みました。
作戦と戦略の面白さで言ったら、やはりダドリ・ポープのラミジ・シリーズはピカ一なんじゃないでしょうか? 海洋小説にしてはこの小説、死傷者率が低いですし、ある意味安心して楽しく読むことができます。

通の方むけには、操船描写のすばらしさをアピールしたいと思います。
風と潮と波に艦がどう反応してどう動いていくかが、もっとも実感として感じ取れる作家がポープでしょう。巨大戦列艦が港内でどのように行き足を殺して停船するか…など詳細に描いているのはこの小説だけのような気がします。

個人的には、最初にプリングス役のジェームズ・ダーシーを見た時に、この人ってカリプソ号のエイトキン副長のイメージにぴったり!だと思ったことを白状します。アレン航海長にもかなり、カリプソ号のサウスウィック航海長のイメージが入っているような気がするし、監督か脚本家のどちらがダドリ・ポープお好きなのでは?と私は推察しますが。

ラミジは1巻から順に読んで構いませんが、サプライズ号的雰囲気を堪能したのであれば、フリゲート艦ジュノー号登場の10巻「タイトロープ」からがおすすめ。


ナイグルと水兵たちが印象的だった…という方に
6)キッド・シリーズ

ハヤカワ文庫NVから現在2巻まで刊行されている「海の覇者 トマス・キッド シリーズ」。
これまでご紹介した数々の海洋小説の主人公がすべて士官であったのに引き替え、この小説の主人公トマス・キッドは強制徴募された水兵(もとはかつら職人)です。
最初は不慣れな生活にとまどうキッドですが、レンジという良き友も得て徐々に水兵の生活になじんでいきます。士官を主人公とした上記の小説群とはまた違った世界をのぞくことができます。
この作品はとりあえず1巻「風雲の出版」から。


赤服の海兵隊に惹かれました、もしくはウィアー監督の映画「誓い」の世界が印象的…という方に
7)栄光の海兵隊シリーズ

ボライソー・シリーズの作者アレクサンダー・ケントが別名義(ダグラス・リーマン名義)で書いているシリーズ。ハヤカワNV文庫から刊行。
代々海兵隊士官となることを一家の伝統としているブラックウッド家の150年以上にわたる年代記。
19世紀を舞台にした1巻「緋色の勇者」から始まって、3巻「紅の軍旗」の舞台となるのが、ウィアー監督の「誓い」の舞台となる第一次大戦のガリポリ半島。第二次大戦を舞台にした最新刊4巻では三代目のマイケル・ブラックウッドが主人公になっています。最終的にはフォークランド戦争まで話しが行くそうです。
後半は近代戦が舞台となりますし、第一次大戦、第二次大戦での、作者リーマン父子の戦場での実体験が物語の核にあり、決して軽々しく読めるシリーズではありませんが、忘れることの出来ない人間ドラマが魅力的な小説群です。
1〜2巻は現在品切れになっていますので、古本店などでお探しください。


スティーブン・マチュリンのもう一つの顔が気になる…という方に
8)ジャスティス・シリーズ

原作をお読みの方はご存じの通り、スティーブン・マチュリンのもう一つの顔は諜報員…すなわちスパイです。
このナポレオン戦争を舞台にしたスパイ小説と言えば、至誠堂から3巻(上下巻あるので実際は5冊)刊行されているアンソニー・フォレストのジョン・ジャスティスを主人公としたシリーズ。
ジャスティスは艦長なのですが、このシリーズでは艦を指揮するシーンはほとんどなく、物語のほとんどは陸上の潜入任務。さながら19世紀初頭のジェームズ・ボンドと言ったところでしょうか?
頭の痛くなるような海事用語も出てきませんし、歴史スパイ小説として軽く楽しんでいただけるのでは…と。
この物語は1巻「ミッシング・スパイ」からどうぞ。


いま現在で入手可能な主な海洋小説シリーズはこんなものでしょうか? 昔はもっといろいろあったんですよ。フォックスとかデランシーとかオークショットとか、絶版になったまま再版されず、今はもう古本やさんでしか手に入りません。ドリンクウォーター・シリーズなどは私自身も未読でして何とか再入手したいと思っているところです。もっともオーブリー&マチュリン・シリーズとて、今回の映画化がなかったら同じような運命だったわけですが。
ほんとうに今回の映画化がきっかけで、少しでも海洋小説が売れて、続刊が続いてくれると願わずにはいられません。
特に徳間文庫のアラン・シリーズ(切実!)。

最後に、
やはりけなげな士官候補生が忘れられません…という方に。
これはジャンル的には少女漫画かもしれないのですが、今読んでも考証はしっかりしていると感心します。
青池保子「トラファルガー」

ブレイクニー君を見ていると、私やっぱりこの「トラファルガー」のリチャード君のことを思い出すんですね。
でも「マスター・アンド・コマンダー」が少年士官の映画ではないように、もちろん「トラファルガー」も候補生の物語ではありません。
ネルソン提督を狙ったフランス艦隊の狙撃手と、その旧友で奇しくも敵としてまみえることになった英国艦のユージン・ラドリック艦長の物語です。

印象的な候補生ということであれば、アレグザンダー・ケントのボライソー・シリーズかな…と思います。
忘れられないエピソードやキャラクターが多いですし。私の場合、ピーター・キャラミーには、17才のリチャード・ボライソーの面影(1巻「若き獅子の船出」がかぶります。

語り出すときりがないので、今回はここまでに。
これをきっかけに、少しでもこの世界を楽しんでいただければ幸いです。


2004年02月29日(日)
海洋歴史映画・小説入門(1)

このページは、映画「マスター・アンド・コマンダー」をご覧になって、同じような他の映画やドラマを見てみたい、原作小説やその他海洋小説を読んでみたい、と思われた方を対象にした入門編です。
既にある程度、海洋冒険モノの世界をご存じの方むけのものは、海洋冒険小説HPをお持ちの方が既にご紹介なさっていますので、そちらをご参照ください。

なお、私は一応20年来の海洋小説ファンではありますが、根は結構みぃはぁですので、多少独断と偏見がかかっているかもしれません。そこのところは少々お目こぼしを。

■ 海洋冒険ドラマ・映画

入門ということで、比較的最近の同一傾向のものからご紹介しますが、実は最近のものはDVDが手に入らず、いま日本で発売されているのは全て30年以上の前のもの…というのが問題なのですが。

1)ホーンブロワー 海の勇者
イギリスITVが1998年から放映している1話完結2時間ドラマシリーズ。現在第3シリーズまで放映ずみ。
日本ではNHKBSで2002年秋に第1シリーズ、2003年夏に第2・第3シリーズが放映された。

原作は英国の近代海洋冒険小説の先駆者とも言われるセシル・スコット・フォレスターの海洋小説ホーンブロワー・シリーズ(邦訳はハヤカワNV文庫)。1794 年に17才の士官候補生としてフリゲート艦インディファティガブル号に乗り組んだホレイショ・ホーンブロワーの活躍と成長を描くもの。
詳しくは下記のNHKの紹介ページを参照。

ホーンブロワー第1シリーズ
ホーンブロワー第2シリーズ
ホーンブロワー第3シリーズ

残念ながらこの日本語版DVDはまだ発売されていません。この作品を見るためには、NHKにこちらのご要望ページから「地上波再放送のリクエストをお願いする」(衛星放送は再放送すみ)か、アメリカ版のDVDを購入するよりほかありません。アメリカ版DVDはRegion 1 なので、アメリカ対応のDVDプレーヤーが必要です(現在、英国版は品切れ状態のようです)。
ホーンブロワー第1シリーズ+第2シリーズ(ボックスセット)
ホーンブロワー第3シリーズ
日本語版DVDの発売を願いたいのですが、何処にリクエストすれば良いのでしょう?

ちなみに主役のホーンブロワーを演じているヨアン・グリフィスは、今夏公開の映画「キング・アーサー」(キーラ・ナイトレイがグィネビアを演じることで話題)で、ランスロットを演じることになっておりますので、こちらもよろしく!


2)バウンティ 愛と反乱の航海
関東では2月6日深夜にテレビ朝日で放映があったばかりの、1984年製作の映画、「M&C」はですから、ハリウッドではこの作品以来20年ぶりの歴史海洋映画となる筈です(「カットスロート・アイランド」などの海賊モノをのぞく)。

goo映画紹介:バウンティ 愛と反乱の航海

艦長にアンソニー・ホプキンス、副長にダニエル・ディ・ルイス、艦長の親友ながら反乱を起こす航海士にメル・ギブスンという演技派揃い。20年前なのでみんな若い。ダニエル・ディ・ルイスって、若い頃は優男だったのねぇ…と久々に見たらびっくりしました。
「LOTR:王の帰還」でセオデン王を演じているバーナード・ヒルが、掌帆長を渋く演じていてなかなかです。
フッド提督にローレンス・オリビエ、軍法会議検事にエドワード・フォックスとベテランを揃え、バウンティ号も船1隻復元して洋上でロケ。本物好みの方のご要望にもしっかりお答えできる映画です。

この映画も日本版DVDは発売されていないんですよね。なんとかなりませんでしょうか。
とりあえずはTV局に放映をたのんでみるとか。


3)往年の名画
海洋冒険映画には、往年の名画と言われるものが数多くあります。主演男優もローレンス・オリビエ、アレック・ギネス、グレゴリー・ペック、といった顔ぶれです。こちらの映画の一部は現在、日本でもDVDが購入できますが、スタジオ・ロケのものもあるので、「M&C」のような迫力あるリアルな映像をお望みの方にはちょっと物足りないかも。せめて「デファイアント号の叛乱」のDVDがあると良いと思うのですが…。

現在手に入るのは下記の2本のみ。
戦艦バウンティ号の反乱
美女ありき

《29日の日記につづく》


2004年02月28日(土)
航海前夜

いよいよ明日から、「M&C」が日本公開になります。
ワクワクしておられる方も多いのではないでしょうか?

あいにくと私は、もう年度末に入ってしまって、今週から猛烈に仕事が立て込んできてしまいました。がんがんお仕事やっつけないと年度内に終わらないので、時間的にも精神的にも今は余裕がないというか、あまりこちらの世界をかまっていられず、さっき仕事から帰ってきてやっと「明日かぁ」と思ったものの、まだあまり実感がわきません。
私は既にオーストラリアで一度見ていますし、私個人としては、明日映画を見たから特別に何かが変わるわけでもないのですが、世の中はどうなのでしょう?

海洋小説というのは1冊が厚いですし、歴史モノである上に専門海事用語が並んでいて、一般の方にとっては、けっこう敷居が高いものです。ところが映像媒体である映画は、往々にしてこの敷居を簡単にとっぱらってくれるのですね。
あの「指輪物語」がまたたく間に日本全国に広まり、今では多くの人がフロドの名を知っているように。

ただ、「指輪物語」の場合は、映画の世界と原作の世界の間にかなりの差異があり、例えば職場などで話をしている時に「ロード・オブ・ザ・リング好きなんですか?」って訊かれると、「うーん、好きは好きなんだけど、どっちかというと原作の方」という応えになってしまいます。
これが「マスター・アンド・コマンダー」だと、たぶんそのようなことはありません。
指輪物語ほど、映画と原作のギャップがありませんし、私は密室の人間ドラマが好きで海洋小説を読んでいるところがありますから、ウィアー監督が描き出そうとした世界がイコール、私が魅力を感じる海洋小説の世界でもあります。

その魅力を、今までひとに説明するのが難しかったのですが、今回、映画というかなりメジャーな媒体で、多くの人にその入口が広がって、少なくとも今まで海洋小説を読んできた人以外の人にもこの世界をわかってもらえる。
それは大変ありがたいことです。
これはNHKBSで「ホーンブロワー」のドラマが放映された時にも思ったことなのですが、衛星放送と比べて今度の方が、あきらかにより多くの方の目に触れるでしょうし、世界が広がると思います。

今回の日本公開で、こんなことが変わるといいなぁ…という私のささやかな、でも現実的な夢は、
ずばり、海洋小説の売り上げがのび、徳間文庫で続刊があやうくなっている海洋小説アラン・リューリー・シリーズの翻訳続行が決まることです。
それから、TVドラマ「ホーンブロワー」の日本版DVDが出ることかしら。

「マスター・アンド・コマンダー」という映画自体の続編は、日本の興行収入で決まるものではなく、むしろ明後日のアカデミー賞の結果の方がひびくと思いますから、ここでじたばたしてどうなるものでもないでしょう。

それでも、せっかくなのだから、この映画の魅力がわかっていただけるより多くの方に、この映画を見ていただきたいと願う…少しはじたばたしてみたいと思うのです。

欧米での客層を語るまでもなく、「マスター・アンド・コマンダー」というのは、実は中高年向きの名画ではないかと思います。
以前に一度書きましたが、私がオーストラリアで見たこの映画の客層は、まるで去年の日本の「永遠のマリアカラス」の客席のようでした。もしくは「たそがれ清兵衛」のような。

考えてみれば欧米のおける原作者パトリック・オブライアンの位置づけは、日本で言えば藤沢周平や、司馬遼太郎のようなものかもしれません。中高年層に愛読者の多い歴史小説のベストセラーですから。
また映画そのものも、最近のハリウッド映画にありがちなドンパチの派手な歴史アクションではなく、人間関係の機微を丁寧に描いたドラマになっています。デイビット・リーンの世界をほうふつとさせるこの映画は、最近の派手な映画に眉をひそめるご年配の方には、往年の名画の記憶を刺激するような作品になるのではないでしょうか?
配給会社の方にはぜひこの方向で、宣伝をお願いしたいと。

実は平日昼間の有楽町・銀座の映画館にはシルバー世代のカップルが多いのです。あの世代…私の親の世代ですが…にとって、銀座で洋画…というのはオシャレなデートだったのですよね。昼間の映画館はどうしても客足が遠のきますし、そこを狙って本格的に中高年にアピールしてみてはいかがでしょう?

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さて、今後のこのサイトの予定ですが、管理人が年度末の多忙期に入ってしまったため、3月中旬まで約3週間強、更新は週末のみになる予定です。ただし1日のアカデミー賞結果だけは何とかします。
欧米サイトはここ1ヶ月ほど落ち着いており、DVDの詳細もお伝えしましたので、現時点で急ぎの海外ニュースは、もうあまりないと思われます。

ねたばれの関係上今までご紹介できなかった、脚本ジョン・コーリー氏と、編集監督の記事は、公開後2週間以上たってから、3月中旬以降のupとなる予定です。

代わりに、来週あたりをめどに、「マスター・アンド・コマンダーを楽しむために」と題して、海事用語や当時の海上生活の詳細などを紹介するページのupを企画しています。
たとえば、映画の冒頭にカラミーがホラムに「当直士官は貴方なのだから、貴方が決断すべきだ」というような内容のことを告げるシーンがあるのですが、これって「当直士官」の意味がわかっていないと、本当にはわからないセリフと人間関係だと思うのです。
この企画、私ひとりでは手に負えませんので、海洋小説系HPの多数の皆様にご協力をお願いしています。映画を見ないと解説できない部分もありますので、upまでにはしばらく時間がかかりますが、よろしくお願いいたします。

それでは皆様> 明日からサプライズ号のクルーとともに、南太平洋に乗り出しましょう!
素晴らしい航海を!


2004年02月27日(金)
ゴールデン・サテライト賞、英国版DVD特典映像

国際記者アカデミーの選出するゴールデン・サテライト賞で、「M&C」は特殊効果撮影賞と音響賞を受賞しました。

またシネマ・オーディオ・ソサエティの音響賞も受賞しています。
The 2003 Cinema Audio Society Awards For Outstanding Achievement In Sound Mixing

ゴールデン・サテライト賞(International Press Association Golden Satellite Awards)

作品賞(ドラマ部門):イン・アメリカ
作品賞(コメディ・ミュージカル部門):ロスト・イン・トランスレーション
外国語映画賞:シティ・オブ・ゴッド(ブラジル)
作品賞(Animated or Mixed Media):The Triplets of Belleville
ドキュメンタリー作品賞:Amandla! A Revolution in Four-Part Harmony

主演女優賞(ドラマ):シャーリーズ・セロン(モンスター)
主演男優賞(ドラマ):ショーン・ペン(ミスティック・リバー)
主演女優賞(コメディ):ダイアン・キートン(恋愛適齢期)
主演男優賞(コメディ):ビル・マーレイ(ロスト・イン・トランスレーション)

助演女優賞(ドラマ):マリア・ベッロ(The Cooler)
助演男優賞(ドラマ):ジャイモン・ハンスゥ(イン・アメリカ)
助演女優賞(コメディ):パトリシア・クラークソン(Pieces of April)
助演男優賞(コメディ):ユージン・レヴィ(みんなのうた)

監督賞:ジム・シェリダン(イン・アメリカ)
脚本賞:ソフィア・コッポラ(ロスト・イン・トランスレーション)
脚色賞:ブライアン・ヘルグランド(ミスティック・リバー)
音楽賞:ハンス・ジマー(ラスト・サムライ)
主題歌賞:ロバート・ロドリゲス「Siente Mi Amor」(レジェンド・オブ・メキシコ:デスペラード)
撮影賞:ジョン・トール(ラスト・サムライ)

特殊効果賞:マスター・アンド・コマンダー
編集賞:ラスト・サムライ
音響賞:マスター・アンド・コマンダー
美術賞:ロード・オブ・ザ・リング王の帰還
衣装デザイン賞:ラスト・サムライ


また下記ページに4月に発売される英国版DVDの詳細が紹介されています。
特典映像として、未公開シーンのほかにメイキング・ドキュメンタリー、原作に関するドキュメンタリーなどが含まれる予定です。

DVD Monthly(イギリス)


2004年02月23日(月)
「19世紀の英仏軍艦と海の男たち」展

2月20日より3月28日まで東京の船の科学館で開催されている「19世紀の英仏軍艦と海の男たち」展に行ってきました。

船の科学館ホームページ

船の科学館は、巨大な船の形をした本館の他に、構内に係留された二隻の船(南極観測船「宗谷」と青函連絡船「羊蹄丸」)を展示スペースとしていますが、今回の展覧会はこの「羊蹄丸」内のアドミラルホールで開催されています。
アドミラル(提督)ホールという名にふさわしい内装の会場は、この展示にぴったりだと言えましょう。

さて展示会ですが、本編をまだご覧になっていらっしゃらない方は、展示パネルの一部にねたばれがありますのでご注意ください。
ただし展示物を見る限りにおいてはねたばれの心配はありません。

展示されている小道具は、士官用の陶製食器とナイフ・フォーク、水兵用の食器、マスケット銃、ピストル、砲弾各種、斬り込み斧、バケツ、…リクガメとイグアナ(まがいもの:生きてません)。
測深鉛については、船の科学館の職員の方が実演まじりで使い方を説明してくださいます。
衣装は、プリングスの航海用軍服と水兵の衣装2着が展示されていました。

また会場には帆船模型製作同好会「ザ・ロープ」会員の方の手による大変精巧な同時代の帆船模型が多数展示されています。
この模型のうちの二つに「サプライズ号」「アケロン号」というプレートがついていますが、これはあくまでも、当時の形の似ている艦を見立てたものですので、実のところは異なります。
詳しい方がご覧になると一発でわかるそうで。

会場の一角の大型テレビでは、「M&C」の予告編とメイキングを見ることができます。
予告編(短編版)ってオーブリー版、ブレイクニー版の他に、マチュリン版とカラミー版もあるんですね。マチュリンとカラミーのは初めて見ました。でも予告編ってあおりが目的なもので、マチュリンが妙に熱血してるんですけど…なんだか違和感が。

やはり一番面白かったのは、メイキングの映像です。メキシコのプール上に建造されたサプライズ号の文字通りのメイキング課程、アケロン号とのサイド・バイ・サイドでの砲撃戦は、本当に実物大の2隻をあの距離に建造して、片舷一斉砲撃しています。

あちこちのインタビューで話題になっていた訓練キャンプの模様も登場します。Tシャツ姿の素顔の役者さんたちが面白いですね。本編では眉間に皺ばかりよせていたホラム(リー・イングルビー)も、全開で笑っていると(初めてみたよ、笑顔)全然感じがちがいます。
ただし、このメイキングの字幕は、監修対象外だったようで、一部に訳し間違いがあったように思われます。


2004年02月22日(日)
CNN, BBCそしてNHK

CNNテレビでは、アカデミー賞特集として、ノミネート対象となった監督、出演者など関係者を呼び、インタビュー形式の特集番組を放映しました。
この特集番組のスクリプトが下記です。

CNNアカデミー賞特集 Larry King Live

M&C関係のゲストは、ピーター・ウィアー監督とポール・ベタニー。

キャストについて:ベタニーは昔ながらの伝統的な方法でこの役を得た、と答えています。つまりはオーディションということ。相変わらずジョークが冴えていまして、このあたりの微妙なハズシ加減は、日本語に訳出しようとすると全訳になってしまうので、すみませんが原文をお読みください。
主役のオーブリーにラッセル・クロウをキャスティングしたことについてウィアー監督は、当初から念頭にはクロウしかなく、もしオファーを受けてもらえなかった時には、墓場から代役を引っ張りださなければならないところだった(代役=リチャード・バートンのことです。ゆえに墓場からの登場というわけ)と答えています。

撮影について:200年前を再現した衣装を着て撮影をするのは、しんどい…ではなく、実のところ大変名誉なことだと思っている、とベタニーは答えています。「長期間ストレスの多い撮影作業を続けていれば、イライラするようなことがあるものだが、本当に才能があり、ゆかいで、面白い人たちと仕事をしていれば、そんな連中とずっと一緒にいると…地獄のような毎日だよ」
…もぉこの人のジョーク感覚って。

「実際、撮影のほとんどはメキシコの撮影所の屋外プールのセットで行われた、言うなれば紅茶茶碗の中の嵐(storm in the teacup=から騒ぎのこと)なんだが、とてもそうは見えないだろう?」とウィアー監督。
聞き手のキング氏が、「ええ、とても信じられません」とあいづちをうつ。
「全ては本当にCGIのおかげだ、それに音響スタッフと」というウィアー監督に、ベタニーも「我々は実際にホーン岬でロケしたんだ、と嘘をつきたくなるような出来」と言い添えています。

ラッセル・クロウとの再共演について、ベタニーは「一緒に仕事をするのは好きだよ。うまくやっていけるし、彼は撮影前にあまり細かく段取りをしない、だからこちらにも余地がある」そしてウィアー監督については、(自然であるがままの)「天然の(organic)な」人だと評する。「この言葉で上手く表現できているかわからないけれど、監督は実際にそういう人なんだ。一緒に作り上げていける人だ」

アカデミー賞ノミネートについて、ウィアー監督は「シドニーにいて、電話で知らされた。10部門ノミネートだと聞いたから、当然、ラッセルとポールも含まれているのだと思っていたのに」と残念そうでした。

この番組、他にはベン・キングスレーとショーレイ・アグダシュルー、イアン・マッケランとショーン・アスティン、マーシア・ゲイ・ハーデン、パトリシア・クラークソンが出演しています。


またBBCもアカデミー監督賞のページを作成しているようです(トップページから「Best Director」をクリック)。
例によって、画像ファイルを開けないナローバンドの私なので、画面上に出ている紹介文書のみご紹介しますと、
ウィアー監督はこの映画のためにCGIの何たるかを学ぶ必要があり、この年齢になって再び学校に通うことになった。CGIの技術者たちが実際に何をやっているのか理解しなければ要点をつかむことは出来ないと思い、CGIの勉強をした。が、新しいことを学ぶのは大変だ、と語っています。


さてそのCGIですが、実は「M&C」には750もの特殊視覚効果撮影ショットがあります。
…と言っても、おそらく実際に映画をご覧になると、とても750なんて信じられない!と思われると思います。
アカデミー賞ノミネートの時に、アメリカの日刊紙に「特殊効果撮影賞に、何故M&Cがノミネートされて、マトリックスがノミネートされないのか全く理解に苦しむ」という意見が載っていましたが、実はCGIに見えないところが、M&CのCGIのミソなんです。
このM&Cの特殊効果撮影に関する記事がこちら。

The Effects Mastery of Master and Commander : The Far Side of the World

M&Cには、750の特殊視覚効果ショットがある。これらCG、ミニチュア模型、生映像、全面的視覚効果映像(full-scale vfx)の絶妙な組み合わせによるものだ。
これらを担当したのが、Asylum、Industrial Light & Magic、およびWETAである。
特殊効果撮影監督のネイザン・マギネスは語る。「この映画は決してデジタルな印象を与えてはいけない。それがピーター・ウィアー監督にとって最も大事なことだった。自然のままに見えなければいけないんだ」

マギネスは当初、コンピュータ・グラフィックスで自然な波を描き出そうとしたが、どうにも上手くいかなかった。
そこで最後に実際の映像から船を抜いて、そこにCGの船を入れ込んでみたところ、それが最善の策であるように思えた。
FOX社ではセカンドユニットの撮影班を、当時の復元船エンデバー号に乗り組ませ、実際にホーン岬をまわる航海に送り出した。
幸いなことに撮影班は荒天にめぐまれ、素晴らしい海の映像を撮影することが出来た。
この映像、メキシコのプールに据えられた原寸大セット、WETAの作成した帆船模型、Asylumの作成したCG船、の各ピースを組み上げて、壮大な海の映像を作り出したというわけだ。


今度の月曜日23日夜、NHK総合で放映の「英語でしゃべらナイト」で「M&C」が紹介されるという情報があります。
未確認のため、はっきりしたことがわかりませんが、いちおうお知らせまで。


2004年02月21日(土)
海軍への道(Naval Recruitment)


広告宣伝の少年兵の表現をめぐって問題の紛糾した「M&C」ですが、とりあえず配給会社は「誤解をまねくような表現」の使用を止められたようです。
「兵力を補うために幼い少年までも戦場に送らざるをえなかった」という一文に、これは歴史的事実と異なるという印象を持たれた方は多かったと思いますが、実際はどうだったのか、映画の公開前に一度きちんと整理してみたいと思います。
きちんと調べてみると実は、私が今まで海洋小説で読んでいたことの中にも微妙に史実と違うものがあり、なかなかに勉強になりました。

参考資料は、英国グリニッチの国立海事博物館(National Maritime Museum)のBrian Lavery氏の著書「Nelson's Navy : The Ships, Men and Organization 1793-1815」 Conway Maritime Press 1989より、第5章「Naval Recruitment」P.88-124。
Lavery 氏は映画「マスター・アンド・コマンダー」にも歴史考証協力者としてテロップに名を連ねており、メキシコの現場のウィアー監督からもたびたび助言を求められた経験をお持ちです。

1.強制徴募について
ナポレオン戦争時代の英国海軍で悪名高いのがこの「強制徴募」。これは明治以降の日本で言うところの「徴兵制度」とは異なります。
陸軍については定かではありませんが、海軍への入り口は原則として志願(volunteer)でした。
ただし、戦争が5年、10年と続くと志願だけでは人手が足りなくなります。そこで登場するのが、強制徴募隊(press gang)です。

俗に伝えられる強制徴募のパターンとは、このようなものです。夕方、町の酒場で男たちが一杯やっていると、突然海軍の強制徴募隊が踏み込んできます。士官(海尉)と腕っぷしの強い水兵たちから組織されたこの一団は、酒場の男たちを有無をいわさず一網打尽にして縛り上げ、荷馬車に放り込んで一路港へ、そのまんま軍艦に放り込んでしまうのです。早い話が人さらいですね。
徴募された男には、もちろん家に事情を知らせる暇もありません。「家には病気の女房と腹をすかせた子供たちが…。俺が帰らないと稼ぎが…」などと言っても、「気の毒だったな」と一瞥されて終わり…というのが、よくあるパターンです。

しかしLavery氏によれば、実際の制度上はそこまでひどいものではありませんでした。
海軍が有無を言わせずに徴募できるのは、プロの船乗りだけでした。具体的には2年以上の海上勤務経験を持った経験者と規定されています。強制徴募の狙いは、人手不足の海軍が、商船の水夫をちゃっかりいただくことにあったのです。(あ…Lavery氏の格調高い原文に「ちゃっかりいただく」などという表現はありませんので念のため。この一文は直訳ではなく、内容のみを私の言葉で再構成しています)。
英仏海峡をへだてた対岸には敵国フランスがあり、出航まもなく敵と遭遇する可能性のある当時、英国海軍には素人の陸者(おかもの:landsman)を訓練して水兵に仕立て上げている時間的余裕はありませんでした。即戦力となる経験者を何がなんでも確保する深刻な必要があったのです。

実際には徴募隊は、とっつかまえた男たちを調べ、条件を満たさないことを証明できる者は釈放しました。2年以下の経験しかない水夫、商船の航海士以上の資格保持者、他の軍務・海事港湾業務従事者、パスポートを所持し国籍を証明できる外国人などです。
ただし、出航が急に決まって証明が間に合わず、とりあえず連れていかれてしまった、というケースもかなりあるようです。
そのようなわけで、強制徴募隊は人々から恐れられ、憎まれていました。石を投げられるなどというのは日常茶飯事で、夫を奪われた女性たちに徴募隊が襲撃される…という事件まであったそうです。

ただし、強制徴募の対象はあくまでも或る程度経験のある男性の場合で(2年以上の海上経験保持者が基本ですから)、子供や少年が対象となっていたわけではありません。

2.海軍士官へ志願について
これとは対照的に海軍士官については、人手不足の問題は生じませんでした。原語では(The navy never had any great problem in attracting officers. P.117)
貴族階級やジェントリー階級、中産階級の人々は、こぞって息子たちを士官候補生にしようとしていました。
軍務に危険はともなうものの、海軍での経歴は本人に地位、名誉、財産をもたらす可能性が非常に高く、海軍士官は大変人気のある職業でした。もちろん全て志願者(volunteer)です。たとえそれが本人の希望ではなく親の希望であったとしても。

士官候補生の訓練は12才前後から開始されるのが通常でした。このためこの年頃の息子を持った親たちは必死にコネを頼り、いずれかの軍艦に息子を乗り組ませようとしていました。
ジャック・オーブリーのサプライズ号も、このような事情から「ぴーぴーうるさい雛4羽」(ジャック談 10巻(上)101ページ)を抱え込まざるをえなくなってしまったのです。

3.パウダーモンキーの少年たちについて
これら士官候補生たち(カラミーやブレイクニー)とは別に、サプライズ号には「パウダーモンキー」と呼ばれる水兵のタマゴたちが乗り組んでいます。(巻き毛の子がかわいいですよね)。
重砲を操作する腕力の無いこれら少年たちの戦闘時の仕事は、主に火薬(パウダー)を船底の火薬庫から各重砲へ運ぶことでした。猿のようにこまめに駆け回り火薬を運ぶことから、パウダーモンキーと呼ばれていたようです。
士官候補生たちが士官の見習いであるように、パウダーモンキーたちは水兵の見習いで、補助的な仕事をしながら、策具や帆の扱いなど将来の水兵の仕事を覚えていきました。

この子たちが軍艦に乗り組むに至った経緯は、大きくわけて二つありました。
一つは賞与金(bounty)。
1.で説明した通り、海軍への入り口は原則志願でした。しかし戦争が激しくなってくると、なかなか志願者は集まりません。そこで導入されたのが、賞与金の制度でした。
これは志願者には賞与金を授与する、というものです。成人男性の賞与金は当初5ポンドでしたが、1795年には70ポンドに引き上げられました。
これは当時の貧しい庶民にとっては、大金でした。
結果として、借金返済のための身売り志願などが増加することになりました。

70ポンドの賞与金というのは、成人男性の場合で、少年の口べらし奉公(「おしん」のようなケース)の場合どれほどの額の賞与金が出たのか定かではありませんが、子供の多い貧しい家から将来の水兵を調達しようという狙いは、この制度にあったようです。

またストリートチルドレンの厚生施設として軍艦が利用されたケースもありました。
当時のロンドンや地方都市では、貧窮から親に遺棄された子供たちがストリートチルドレンとなり社会問題化していましたが、この対策として考えられたのが、海軍でした。
都市の施設では、ストリートチルドレンを保護し、きちんとした衣服と初歩的な教育を与えた後、軍艦に送り込んでいました。

この子たちのケースは、厳密に言えば志願であるとは言えませんが、しかし、今現在アフリカなどで問題になっている少年兵(対抗するゲリラによってさらわれ兵士に仕立て上げられる)や、第二次大戦中の日本の学徒動員などとは全く異なるものです。
少なくとも「幼い少年たちまでも戦場に送らざるをえなくなった」ケースではないと思われます。


2004年02月20日(金)
東京バックステージツァーのご案内

先週日曜日にご紹介した「M&Cバックステージツァー」東京での開催は3月19日です。
主催は横浜を母港としてた練習帆船「海星」のボランティアスタッフの方を中心としたSaltyfriends。
海星はいま沖縄に行っています(詳細は2003年12月13日の日記「海星出航」参照)。早く帰ってきてほしいものです。

このイベントは、基本的に大阪のバックステージツァーと同じ形式になります。会場費として参加費は必要となりますが、ボランティア有志による開催の為、営利ではありません。
途中参加もOKですが、会場の都合上(定員100名)事前申し込みをお願いしたい、とのことです。

以下に東京でのイベントの詳細をご紹介します。
この情報はSaltyfriends HP(http://www.saltyfriends.com)からの転載です。

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■『マスター・アンド・コマンダー』バックステージツアー■

アカデミー賞10部門にノミネート、2月28日封切りの話題作『マスター・アンド・コマンダー』。
この映画に帆船「HMSサプライズ」として登場するのは、現役のアメリカ帆船「"HMS"ローズ」です。
この帆船の元クルーで、映画の撮影中にも乗船されていたトム・マクラスキーさんをお招きして、映画の裏話などを語っていただきます。
ローズが映画撮影のためにどのように改装されたか、また嵐の中でのシーンをどのように撮影したのかなどなど、たくさんの写真とともにいろいろな話をお聞きしたいと思います。
映画の話のほかに、帆船やセイラーたちについても面白い話が飛び出すのではないかと思います。
どうぞお気軽にご参加下さい。

●ナビゲーター トム・マクラスキーさん
(帆船「"HMS"ローズ」元クルー、現在は京都在住)

●日時 2004年3月19日(金) 18:30〜21:00

●場所 新宿区牛込箪笥地域センター 5Fコンドル

●交通
[都営地下鉄大江戸線] 牛込神楽坂駅 A1出口 徒歩0分
[営団地下鉄東西線]  神楽坂駅 2番出口 徒歩10分
[都バス 橋63]  小滝橋車庫前⇔新橋駅 牛込北町下車
地図⇒ http://www2.odn.ne.jp/~hak34780/page012.html
*駐車場のご用意はありませんので電車、バスをご利用下さい。

●参加費 500円(500円玉をご用意頂けると幸いです)

●お申し込み・お問い合わせ
E-mail:info@saltyfriends.com 


2004年02月19日(木)
なぜか不遇な映画M&Cを勝手に応援する(HPご紹介)

広告宣伝のあり方が問題となっている「マスター・アンド・コマンダー」、ネット上にはこんな応援ページが出現しました。

なぜか不遇(?)な映画『マスター・アンド・コマンダー』を勝手に応援するページ
この中に一つでも当てはまる方、もちろん2月28日以降に映画館にGO!です。

今回の広告宣伝トラブルで一番問題になっているのは、おそらく「女性への売り込み方」ではないかと思います。…だから思うんですけど、ちょっとターゲットがずれているのよね。「女性一般」にアピールすると「この映画に来そうな女性」からちょっとズレてしまうと思うのだけど。

アピールすべきは「トロイ」と「アレキサンダー」を楽しみに待ってます…とか、海洋冒険小説は知らなくとも歴史小説や塩野七生さんやデュマの三銃士が好きです…とかいう女性で、こういう人たちは結構な数存在するし、実は「ロード・オブ・ザ・リング(LOTR)」の女性ファン層とかなり重複する。あちらもエピック・ムービー、一大叙事詩ですから。

ではどういうふうに売り込んだら良いのだろう…?と考えていたのですが、昨日すばらしい実例を発見してしまいました。
「CREA」という女性誌の3月号(いま店頭に出ているものです)206ページの「このひとことでイカセテ!シネマ」。
今月のピックアップは「マスター・アンド・コマンダー」、胸にこたえたこの一言は、マチュリンがオーブリーに送る「いくら悲しくても戦死したと思え。辛いことは忘れろ」。
大ねたばれになるので、ここでは何処のシーンかは申しません。CREAには詳しく解説されているので、「絶対に映画を見に行く!」ことを決めている方は、ご覧にならない方が良いかも。

このレビューは最後がこのように結ばれています。「まぁ海洋冒険物語といえば女性はちょっぴり引くかもしれないが、じつはドラマは女性のほうが感動できるかも」
その通りだと思います!!

ライターの金子さんは「Hanako」にも記事を書かれているそうです。この調子で「Hanako」の方もどうぞよろしくお願いいたします。
CREA3月号:女の占い特集(表紙と目次のみ)

LOTR関連の掲示板などで「予告に萎えてM&Cにいかない」という発言を見た…という話しを聞きました。
わかっていたら、私が書き込みに行くのに!…と思うのですが、私もこちらのHPのメンテに忙しく、最近は海洋系以外の掲示板を見ている時間もなくなってしまいました。
そこで、皆様にお願いです。
どこかの掲示板で迷っている人を見かけたら、そこにM&Cの良さを書き込みしてください。
口コミ作戦!がんばりましょう。
一人でも二人でも映画を見てくれる人を増やしていけたらと思います。

さらに地道な作戦パート2。
「YAHOO」映画のトップページで、28日公開映画の期待度ランキング投票が始まりました。今のところダントツ1位の「M&C」ですが、これトップだとYAHOOで特集とかやっていただけるのかしら?
ここに票を増やすのも良いかもしれません。

またYAHOOトップページからリンクにある「第76回アカデミー賞特集」ページでも、各賞予想の投票が始まっています。ここに投票したら…少しは知名度が上がるでしょうか? もっとも作品賞は私もLOTRだと思っているのですが。
でもBAFTAの結果がありますから、監督賞にはM&Cを投票しておこうかと。

さてそのBAFTAですが、翌日の主要新聞や映画専門誌Empireの記事は事実のみを伝えるものが多く、ウィアー監督のコメントなどは掲載されていませんでした。
当日、ウィアー監督は出席できなかったので、ディビット・リーン賞は代わりにポール・ベタニーが受け取ったということです。

授賞式会場の華やかな写真などはこちらに。
イブニングドレスの美女勢揃いで、殿方には目の保養かと。淑女の皆様にはジョニー・デップとジュード・ロウが用意されております…って、ポールはいないの?やっぱり?

この情報日記、記事の数が増えて来たので、テーマ別のインデックスを作成してみました。
トップページ(HOME)および毎日の日記の左側の「テーマ別資料一覧」からインデックスページに飛ぶことができます。
資料一覧は随時更新の予定です。


2004年02月17日(火)
英国アカデミー賞(BAFTA)

「マスター・アンド・コマンダー」英国アカデミー賞(BAFTA)の監督賞を受賞しました。
また、この他に、音響賞、衣装デザイン賞、プロダクション・デザイン賞をも受賞、計四冠となりました。
Bafta awards 2004: The winners

BAFTAの監督賞は別名ディビット・リーン賞ですから、個人的には私、この賞だけはどうしても「M&C」にとってほしかったんです。選んでくださった方に本当に感謝です。
ディビット・リーンはご存じ「アラビアのロレンス」の監督として名を馳せていますが、「M&C」のじわじわっと来る人間ドラマは、むしろ後の監督作「インドへの道」かもしれませんね。

衣装デザイン賞を受賞したWendy Stitesはウィアー監督夫人、今回はご夫婦での受賞となりました。
「M&C」の衣装は、材料や縫製にまでこだわり、当時のものを再現しようとしています。ウィアー監督は英国のアンティークマーケットで幾つか当時の品を入手しましたが(マチュリンの眼鏡とか…あの眼鏡は19世紀の本物だそうです)、ある日監督は当時の英国士官の軍帽らしきものを見つけ、喜々として家に持ち帰りました。ところが夫人のウェンディーがひとめ見るなり「この縫製は違うわ。フランス製よ」と看破したため、その軍帽は役立たずになってしまったそうです。…という話しがメイキング本に載っていました。

監督コメントなど詳細は明日以降に記事になってくると思います。詳しくは後日をお待ちください。

2004年英国アカデミー賞受賞一覧(British Film Academy Awards)

作品賞(Best film)
ロード・オブ・ザ・リング:王の帰還

英国作品賞(Best British film)
(Alexander Korda award for the outstanding British film of the year)
Touching the Void

監督賞(Best director)
(David Lean award for achievement in direction)
ピーター・ウィアー( マスター・アンド・コマンダー)


主演男優賞(Best actor in a leading role)
ビル・マーレー(ロスト・イン・トランスレーション)

主演女優賞(Best actress in a leading role
スカーレット・ヨハンソン(ロスト・イン・トランスレーション)

助演男優賞(Best actor in a supporting role)
ビル・ナイ(ラブ・アクチュアリー)

助演女優賞(Best actress in a supporting role)
レニー・ゼルウィガー(コールドマウンテン)

観客投票作品賞(Orange Film of the Year)
ロード・オブ・ザ・リング:王の帰還

外国語映画賞(Best film not in the English language)
イン・ディス・ワールド

脚本賞(Original screenplay)
The Station Agent

脚色賞(Adapted screenplay)
ロード・オブ・ザ・リング:王の帰還

英国新人監督賞(Carl Foreman Award)
Emily Young - Kiss of Life

短編アニメーション賞(Short animation)
Jojo in the Stars

短編映画賞(Short film)
Brown Paper Bag

メイクアップ・ヘア賞(Make Up & Hair)
パイレーツ・オブ・カリビアン

特殊効果撮影賞(Visual Effects)
ロード・オブ・ザ・リング:王の帰還

音響賞(Sound)
マスター・アンド・コマンダー


編集賞(Editing)
ロスト・イン・トランスレーション

衣装デザイン賞(Costume design)
マスター・アンド・コマンダー

プロダクション・デザイン賞(Production design)
マスター・アンド・コマンダー


撮影賞(Cinematography)
ロード・オブ・ザ・リング:王の帰還

音楽賞(Music)
(Anthony Asquith award for achievement in film music)
コールドマウンテン


2004年02月16日(月)
大阪バックステージツァーのご案内

関西在住の皆様>
来週の日曜日に大阪で、帆船あこがれウィンズクラブの主催により、「M&C」の撮影にローズ号(サプライズ号役)のクルーとして参加されたトム・マクラスキー氏にお話を伺う会が企画されています。
お近くの方は参加されると良いのではないかと思います。

なお、会場の収容人数の関係から、「参加される方は必ず、事前の申込みが必要となります」、とのこと。お気をつけください。
申込み先は E-mail: akogare-winds@egroups.co.jp またはFax:06-6615-5384


以下は「あこがれ」HPからの転載です。
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<映画『マスター・アンド・コマンダー』のバックステージツアーご案内>

2月28日に封切られるラッセル・クロウ主演の映画「マスター・アンド・コマンダー」をご存知でしょうか?この映画にはHMS「サプライズ」という帆船が出てきますが、これは18世紀の帆船のレプリカながら、実際にアメリカでセイル・トレーニングをしている「ローズ」という帆船です。この帆船の元クルーで映画撮影中クルーとして乗船されたトム・マクラスキーさんに映画の舞台裏をお話していただくことになりました。

どんな人たちがクルーとして乗っているのか、登場する船がどうやって作られていくのか(「ローズ」はこの映画のために儀装まで変えました!)、嵐のシーンはどうやって撮影されたのかなど、映画の封切りより一足先に舞台裏を覗いてみませんか?たくさんの写真とともにお話を聞いてみたいと思います。

「マスター・アンド・コマンダー」のオフィシャルウェブサイト英語版をクリックすると、右隅に「Crow's Nest」という言葉が見えます。そこにカーソルを合わせると、「Site Index」(目次)に変わり、下にメニューが出てきます。上から7個目の「Crew of the Surprise」をクリックすると、クルーの写真が出てきます。その中央辺り、少年の膝に腕を乗せて身を乗り出しているのがトムさんです。

日 時: 2月22日(日)16:00〜19:00
場 所: セイル大阪 研修室(大阪南港ATC Os南館6階)
      大阪市営地下鉄/ニュートラム「中埠頭駅」下車すぐ
参加費: カンパ金 500円
* お茶、ジュース、お菓子程度を少し用意致します。(差し入れ大歓迎)
お申込み:E-mail: akogare-winds@egroups.co.jp
       またはFax:06-6615-5384
主 催: 帆船あこがれウィンズクラブ 
協 力: 帆船海星ボランティア いかろー君、セイル大阪


2004年02月15日(日)
本日は聖ビンセントの日

2月14日は、世間一般では聖バレンタインの日ですが、海洋小説ファンには聖ビンセントの日でしょう。
本日2月14日は1797年の聖ビンセント岬沖の海戦から207年目に当たります。

ジャックの時代の英仏戦争(1793〜1801年フランス革命戦争、1803〜1815年ナポレオン戦争)での海における戦いには、有名な海戦が5つ(聖ビンセント、カンパーダウン、ナイル、コペンハーゲン、トラファルガー)ありますが、スペインの聖ビンセント岬(スペイン語ではサン・ビサンテ)沖の海戦はそのうち最も早い時期のものです。

2003年10月21日の日記でご紹介した「ナポレオン時代の海洋小説主人公たちの経歴一覧(Careers of Fictional Napoleonic Sailors)」によれば、実はジャック・オーブリーは戦列艦オライオン(Olion)号の三等海尉として、この海戦に関わっています。
また彼は1798年のナイルの海戦にも参戦しており、映画「マスター・アンド・コマンダー」で礼装時(金モールの派手な方の軍服着用時)に彼が下げている勲章は、ナイル海戦の戦功賞だと思われます。
もっともパトリック・オブライアンの小説1巻「新鋭艦長、戦乱の海へ」は1800年から始まるので、それ以前のジャックやスティーブンの活躍については、小説中での回想として語られるのみです。

聖ビンセント岬沖の海戦は、スペイン艦隊とイギリス艦隊の決戦です。
スペインは前年の1796年にフランスと同盟条約を結び、イギリスと敵対することになりました。
1797年2月、フランス・バタビア(オランダ)艦隊と合流しようとしたスペイン艦隊を、イギリス艦隊はスペインのサン・ビサンテ岬沖で迎撃します。
この海戦について、海事史上で特筆されるのは戦隊司令官(Commodore)ネルソンの活躍でしょう。戦況に臨機応変に対応したネルソンは、総司令官サー・ジョン・ジャービス提督の命令には背く形になるものの、スペイン艦2艦に斬り込み拿捕、イギリスを勝利に導きました。
この戦功によりジャービス提督は伯爵号を授けられてセント・ビンセント卿となり、ネルソンはナイトの称号を得て海軍少将に昇進します。

この前後、および聖ビンセント岬沖海戦を舞台にした小説がダドリ・ポープのラミジ艦長シリーズ2巻「岬に吹く風」。歴史的事実を巧みに織り込んだフィクションで、ラミジ自身がカッター艦の指揮官として、海戦を間近に経験する(…苦笑)設定になっています。
ところで今回この「岬に…」を読んでいて気づいたのですが、この小説の最後でラミジがイギリスに帰るために便乗させてもらう艦って、フリゲート艦のライブリー号なんですね。これってジャックが6年後(2巻の終わりから3巻の冒頭にかけて)に一時的に艦長を務めていた艦です(スティーブンがミツバチを持ち込んだ艦…とも言う)。ライブリー号は実在艦のようなので、同時代の別々の小説に登場しても不思議はないのですが、以前にラミジを読んだ時には気づきませんでした。

前述の「経歴一覧」によれば、オーブリーとラミジ以外にこの海戦にかかわっている海洋小説の主人公はいないようです(確認をとれない人もいますので断言できませんが)。ドリンクウォーターとデランシーは別の海域にいましたし、ボライソーがユーリアラス号でジブラルタルに到着するのは海戦後に当たるこの年の春です。ホーンブロワーはこの時期、スペインで捕虜になっていました(1巻、TVドラマでは第一シリーズ第3話)。考えてみると彼は、イギリスがスペイン艦隊を打ち負かした時にスペインで捕虜になっていたことになるのですね。
余談ながら、1797年というとアイルランド蜂起(1798年)の前年ですから、この時期スティ−ブンは、まだ反英闘争のために奔走していたことになります。

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さて、昨日の日記ではアメリカとイギリスのDVD発売日をお伝えしましたが、日本でのDVD発売は7月になる見込みです。
ネタもとは、「日経エンタティメント3月号増刊ムービーデラックス」83ページ。4〜8月の主要DVD発売予定が載っています。
この増刊、上映初日の銀座の映画館の初回上映には必ず関係者が様子を見に来る(「M&C」の場合は日劇1でしょうか?)業界慣行とか、映画館の系列、予告編CM製作会社の話しとか業界の裏話的な記事もあり、なかなか面白い1冊です。

昨日13日〜明日15日まで、東京・城南地区ではアイリッシュ・パブ4店が協力してアイリッシュ・トラッド・フェスティバルが行われており、アイルランドから来日した演奏家によるライブ・セッションを聴くことができます。
昨日は友人と大崎のパブ シャノンズに行ったのですが、すごい人で立錐の余地もなく、店の中に入ることができなくて、外に漏れてくるフィドルの音だけをかすかに聴いて撤退。
今日はアイリッシュ・フルートを狙って五反田のグラフトンへ。やはり立錐の余地のない状態だったのですが、一人だったので上手いことぐにぐにっと店の奥にもぐりこんで演奏を堪能してきました。椅子席が足りないので、グラスを手に立ったまま拍子をとってる人やら、床どころか机の下に座りこむ人もいて、薄暗くて紫煙はただよっていて人がやたら多くて、みんなビールを飲んでるし…なんだか非番の時の下甲板(水兵居住区)みたい…って思ってしまいました。ラミジの部下にフルート吹きの四等海尉がいて、よく海の唄をフルートで水兵に聴かせてやってりしていましたが、きっとこんな感じだったのでしょう。
やっぱりフィドルに未練があるので、明日は天王洲アイルのラウンドストーンか大崎シャノンズのどちらかにリベンジしようかと思っています。
アイリッシュ・フェスの詳細はこちら。


2004年02月14日(土)
DVD発売日(海外)と、ジョナサン・ロス ショー(HPご紹介)

昨日のロンドン批評家賞授賞式でのポール・ベタニーの写真を、下記のBBCニュースで見ることができます。
UK critics pick Crowe over Rings

また昨日のロイター電の要約(日本語版)は下記でご覧になれます。
LFCC協会賞、作品賞は「マスター・アンド・コマンダー」

さて、1月26日付けでお知らせした「マスター・アンド・コマンダー」のUK版(Region 2 PAL方式)DVDですが、発売が4月12日に延期となりました(1月26日の日記は訂正しました…でもこれは私のミスでわ)。アメリカ版(Region 1 NTSC方式)DVDの発売が4月20日に決まったことがビミョーに影響しているのでしょうか?
下記でカバーデザインを見ることができます。いずれも2ディスク構成で、下記のアメリカ版DVD紹介ページによると、映像特典として未公開シーンが収録されるようです。

イギリス版DVD(アマゾンUKより)
アメリカ版DVD アメリカ版アマゾンへのリンクはこちら


さて、昨年11月28日の話しになりますが、英国のTV番組「ジョナサン・ロス ショー」にラッセル・クロウとポール・ベタニーがゲスト出演しました。
この時のインタビュー・スクリプト(対話の内容をテープ起こししたもの)がアメリカのファンサイトに公開されていたのですが、Kumikoさんが約1ヶ月かけてこの主要部分を翻訳され、ご自分のサイトにupされています。
下記にアドレスをご紹介します。Kumikoさん>本当にご苦労さまでした。

ジョナサン・ロス ショー
(KumikoさんのHPトップページはこちら)


2004年02月13日(金)
ロンドン批評家協会賞

2月11日にロンドン批評家協会賞が発表されました。「M&C」は作品賞と脚本賞、ポール・ベタニーが英国男優賞を受賞しています。

'Master and Commander' Wins British Critics' Awards

これが何故、ロイター外伝ニュースになるかというと、「LOTR:王の帰還」が敗れたからなのです。
この理由について、ロンドン批評家協会会長のウィリアム・ラッセル氏は、「英国は島国だ。それが、帆船時代の海洋映画が圧倒的支持を得た理由だろう」と語っています。
またポール・ベタニーはこの受賞について"It feels epic, the only thing more epic than the film,"とコメントしています。「M&C」がエピック・ムービーであることに引っかけてあるのですが、エピックの概念が広いから、訳が難しいですね。「画期的な事件だ」では弱いし「歴史的事件だ」では大げさだし、まぁとにかく、このぐらいの事がなければ映画の中でマチュリンが経験したこと以上の事件はないと彼は考えているようですが(つまりすごい大事件だということ…詳しくは映画を見ればわかります)。

ロンドン批評家協会賞(一覧はこちら)

作品賞:マスター・アンド・コマンダー
英国映画賞:マグダレンの祈り
外国語映画賞:グッバイ・レーニン(ドイツ)

監督賞:クリント・イーストウッド(ミスティック・リバー)
英国監督賞:ピーター・ミュラン(マグダレンの祈り)
新人監督賞:デイビット・マッケンジー (Young Adam)

主演男優賞:ショーン・ペン(ミスティック・リバー)
主演女優賞:ジュリアン・ムーア(エデンより彼方に)
助演男優賞:ビル・ナイ(ラブ・アクチュアリー)
助演女優賞:エマ・トンプソン(ラブ・アクチュアリー)

英国男優賞:ポール・ベタニー(マスター・アンド・コマンダー)
英国女優賞:アン・リード (The Mother)

脚本賞:ピーター・ウィアー&ジョン・コーリー(マスター・アンド・コマンダー)
英国脚本賞:デイビット・ヘアー(めぐりあう時間たち)

DILYS POWELL AWARD - LIFE ACHIEVEMENT: Tom Courtenay
EXCELLENCE IN FILM AWARD: Ronald Neame
ロンドン批評家協会賞:イアン・マッケラン

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英国人が「LOTR王の帰還」より「M&C」を評価するというのは、わかるような気がします。
実は先週、「王の帰還」の先行上映を見てきたのですが、三部作の中ではいちばん派手な、いわゆるハリウッド的アドベンチャー映画に出来上がっていて、おやおや…と思いました。
この2作品ってエピック・ムービーという同一カテゴリーで、アカデミー賞では同じく特殊効果撮影賞と美術賞にノミネートされながら、およそ対照的なのです。ひとことで言えば、LOTRはデジタル、M&Cはアナログ。
LOTRは、前2作「旅の仲間」と「二つの塔」ではニュージーランドの自然を活かしたアナログ部分がかなりあったのですが、「王の仲間」は、自分の手と足で進んで行くしかないフロド・サム編はかなりアナログであるものの、アラゴルン王様編は(ローハンをのぞいて)CG画面が多く、デジタルな印象があります。
昔ながらの家に住み、木のぬくもりや皮の重厚さを愛する英国人には、王の帰還のコンピューター・ゲーム的面白さよりも、M&Cの重量感ではないかと。

「王の帰還」に関しては、個人的には、このデジタル感が不満なのです。ペレンノール野の合戦より「二つの塔」のヘルム峡谷の戦いの方が重量感があるって…問題じゃない?
ここまで評価が高いのは、おそらくフロド・サム編の人間ドラマが引っ張っているのだと思いますが、もし万一「王の帰還」がアカデミー作品賞を逃すことがあったとしたら、それは世間的に言われているように「これがファンタジーだから」ではなくて、これが「スターウォーズ的冒険アドベンチャーになってしまったから」だと思うのですが。
いやスターウォーズはあれでいいと思うのですが、でもアカデミー賞好みではないのではないかと。


2004年02月12日(木)
二隻のサプライズ号――ローズ号船長インタビューなど

映画「マスター・アンド・コマンダー」撮影用セットのレプリカ・サプライズ号の揺れ発生装置を設計したオレゴンのエンジニアリング会社についてabcニュースの記事から要約、
また洋上でサプライズ号を演じた復元船ローズ号のリチャード・ベイリー船長のインタビューを、2003年11月の「ローズ号ニュースレター」からご紹介します。

Oregon engineering company goes Hollywood

ラッセル・クロウがジャック・オーブリーを演じる映画は、メキシコの巨大水槽に設置されたレプリカ船で撮影されたが、嵐に翻弄されるこの船の揺れをコントロールしているのは、実は米国オレゴン州アルバニーに本拠を置き、通常は工場の生産ラインの機械制御装置を製造販売しているエンジニアリング会社「コンセプトシステム社」の油圧装置である。

同社は、工場の組立生産ライン上の、さまざまな機械のコンピュータ制御を得意としていた。
重量60トンの撮影用レプリカ船の下部には、6基の油圧シリンダーが設置され、コンピュータ制御されている。
6基のシリンダーのうち4基は上下動(うねり)を、1基が船のロール運動(横揺れ)を、また1基が船のピッチ運動(縦揺れ)を作り出す。
実際の帆船の映像から動きが分析され、制御プログラムが作成された。



"H.M.S."Rose NEWSLETTER 11/12/03

ローズ号のリチャード・ベイリー船長は、1985年のローズ号復元から、2002年の「マスター・アンド・コマンダー」撮影終了まで、セイルトレーニング練習船ローズ号の船長を務めた。現在ローズ号はFOX社の所有であり、ベイリー氏は他のプロジェクトに従事している。
以下はベイリー氏との一問一答である。

Q:ラッセル・クロウがあなたの役を演じるのを見た気分はいかがでしたか?
A:なんだか面白い質問だね。ラッセルは私の役を演じたのではないよ。だがもちろん彼は、船の指揮を取ることの重みと、パトリック・オブライアンの創造したジャック・オーブリーのキャラクターについては、完全に自分のものにしていた。

Q:彼はどのような感じの人ですか? 実際に彼は洋上でメインマストに登ったのですか?
A:ひとことで言えば、ラッセルは人好きのする寛大な性格で、仕事にかけてはプロフェッショナルだ。折に触れ、製作スタッフ全員が映画のテーマを理解できるようはかったり、役者とエキストラのチームワークをまとめ上げようと日曜日の午後にオージー・ルールでサッカーの試合を企画したりしていた。これは普通のサッカーよりゲームの展開が早いんだ。面白かったよ。
ラッセルは確かにマストに登っている。上に上がってもリラックスしていて、命綱とか安全性とかにはあまり注意を払っていなかった。スタント担当者や、おそらく保険会社は命綱をつけさせようしたんだけれどもね。

Q:彼はバックステーを本当に滑り降りたんですか? それともラバーズホールを抜けていった?(注)
(注)ステーとはマストの頂部から船首部船尾部に張られた綱(現代ではワイヤロープ)で、マストを前後から支持固定する役目を果たしている。マストから下りる時は、梯子状の段策を下りるより、このステーを滑り降りた方が早い。またラバーズホールは、別名を新米のくぐり穴とも言う見張り台の穴のこと。度胸と体力のない新米水兵はここの穴を抜けていくと、外側のフトックシュラウドをつたい登るより楽に、マストを登ることが出来る。
A:映画用の衣装を着たままバックステーを滑り下りるのはかなり難儀だよ。というのは撮影用に(鋼鉄製のロープを)18世紀の植物繊維製ロープに見せかけるために、ローズ号のバックステーにはポリプロピレンなどで表面加工をほどこしたからなんだ。だから実際には彼らは上から下まで完全にステーを滑り下りたわけではない。映画では彼とプリングスはトゲルンマストの頂部から滑り降りたように見えるけれどもね。
だがラバーズホールについては、「ノー!」だ。ラッセルは絶対にラバーズホールを抜けようとはしなかった。他の誰ひとりとして、ラバーズホールを抜けた出演者はいなかったよ。もっともフトックシュラウドは映画用に少し登りやすく改良はしたんだが。

Q:海事史の専門家として、またパトリック・オブライアンのファンとして、映画に何を期待しますか? パトリック・オブライアンのファンはこの映画を認めてくれるでしょうか?
A:パトリック・オブライアンのファンとは神の厄介な創造物でね。もし小説の文字通りの映画化を映画に望んでいるとしたら、そのようなファンは失望するだろう。なんと言っても原作の小説は240ページあるが、通常1時間半から2時間の映画に可能な原作は110ページ足らずだ。だがさすがピーター・ウィアー監督は巨匠だ。細事にこだわらないオブライアン・ファンは、原作のエッセンスが細心の注意と敬意を払って抽出され、律儀に再現されていることに気づくだろう。もちろん再現費用はにいとめをつけずにね。映画はヴィジュアル的には素晴らしい出来上がりだ。オブライアンのファンは最初から最後まで目を見開きっぱなしで、細部まで素晴らしい映像に夢中になるだろう。

インタビューではこの後に、現在のローズ号の状態、米沿岸警備隊の船検にパスするためにこれまでローズ号財団が重ねてきた苦労のことなどが語られています。ここでは要約を省きますが、横浜のセイルトレイニングシップ「海星」の将来を考える上では、参考になるかもしれません。


2004年02月11日(水)
【未読注意】原作10巻補足解説

【未読注意】1月末にハヤカワ文庫で出版されたオーブリー10巻をまだお読みでない方は、ねたばれの可能性がありますのでご注意ください。
これはこの日記の1月24日、25日付にてupした「ねたばれ無しに10巻を読む方法」を踏まえた上で、10巻を読むにあたって、また映画を見る時に必要となるこれまでの事情について、現在翻訳が中抜け状態になっている4〜9巻から、簡単に解説を行うものです。
1月24日25日付けで「重大なねたばれに付き読んではいけません」と忠告した箇所のねたばれについては、ここでは一切、解説いたしません。この重大なねたばれについては、別に現時点でご存じなくても10巻を読む上で、また映画を見る上で何ら問題はありませんので、このまんま、ひ、み、つ。


そうそう、これは海洋小説系の掲示板にあった書き込みですが、オーブリー&マチュリンの4〜9巻はいずれ早川書房から発売されるようです。
A氏のご指摘によれば、ハヤカワ文庫では背表紙に作者別の通し番号がふってあるのですが、3巻「特命航海、嵐のインド洋(下)」の作者番号は「オ‐4‐6」。これに対して10巻「南太平洋、波瀾の追撃戦」の作者番号は「オ‐4‐19」と「オ‐4‐20」であるとのこと。
「オ‐4」というのがオブライアンの固有番号なので、6の次が19ということは、いずれその間に7〜18が入るのではないかと。


さて、パトリック・オブライアンの困ったところは、物語が1冊では完結しないことです。1巻完結なのは4巻までで、5〜7巻は3巻で一続きの物語、8巻から始まるオーブリーの作戦航海は10巻をはさんで、最終的には11巻の第一章まで続くようです(11巻はまだ未入手なので、これについて今はお尋ねにならないでくださいね)。

10巻でジャックが拝命する敵艦追撃ミッションは、8〜9巻での地中海での作戦行動とは異なる性質のもので、一線は引けるものの、キャラクターの一部は8巻から持ち越しとなるので、初めて10巻を読むと、とまどわれる方もあるのではないかと思います。
ここでは基本設定(キャラクター、艦船)について、10巻原作と映画を楽しむ上で最低限の補足解説を行います。

■ジャック・オーブリー(勅任艦長)
サプライズ号艦長。3巻の後、フリゲート艦Boadicea号、50門艦レパード号の艦長を経て、8巻冒頭では74門艦ワーチェスター号艦長を拝命。ただしワーチェスターは船齢40年の老朽艦。
この老朽艦が嵐で損傷しドック修理を要したこと、同じ艦隊に属していたサプライズ号の艦長が戦死したこと、ギリシア沿岸のトルコ勢力を相手とした諜報・外交活動にスティーブンの手腕が必要とされたこと…などのもろもろの事情から、8巻途中から急遽、古巣のサプライズ号の艦長職に復帰、イオニア海からエジプトへ向かう。10巻冒頭ではその任務を終了しジプラルタルへ帰還。
捕虜としてアメリカのボストンにいた経験…は、原作10巻を読むのには必要だが、映画には必要ない事実でしょう。

■スティーブン・マチュリン(軍医)
ねたばれ無しに10巻を読む限りにおいては、特記事項なし。
もっとも、ポール・ベタニーも語っている通り、この人は10年間独房に隔離されても以前と全く変わらずに出てくる人だと思われるので、4〜9巻が抜けたところで、何かが変わるようなことはないでしょう。
ちなみにジャックがボストンにいた時にはスティーブンも一緒でした。

■トム・プリングス(副長・海尉艦長)
映画「M&C」では海尉でサプライズ号副長。原作10巻では海尉艦長に出世するも指揮艦がなく、サプライズ号で求職活動中。
1巻で航海士、2〜3巻で海尉、5巻のレパード号、8巻ワーチェスター号でジャックの副長。
プリングスは8巻でのトルコ艦2隻との戦闘の功績が認められ、海尉艦長に昇進しました。
ただしこの戦闘で彼は重傷を負い、映画をご覧いただくとおわかりの通り、額から右の頬にかけて傷跡が走ります。実際の傷はもう少しひどいのですが(トルコの円月刀で切り落とされた鼻を、スティーブンが丁寧に縫いつけたという経緯あり)、さすがにジェームズ・ダーシーのハンサムな顔にあれ以上の傷は書き込めなかった模様。

■マウアット(海尉)
1巻で航海士、8巻からジャックの部下に戻ってきて二等海尉。プリングスの転出後は副長。
映画では自作の詩を披露する機会はありませんが、詩人だという設定は生きているとのことです。

■マーティン(牧師)
戦列艦ワーチェスター号の従軍牧師として8巻から登場。実は鳥の観察が趣味だとわかり、スティーブンとは意気投合。
彼の片眼はふくろうに突つかれて駄目にしたもの、雛がいたのに気づかず巣に接近しすぎたために襲われたそうです。「でも片眼だと望遠鏡をのぞく時に便利ですよ」と明るく言う、好奇心旺盛で懲りない青年(スティーブンより10才程度年下と思われる)。
残念ながら映画には登場しません。

■キャラミー(先任候補生)
映画では18才の設定だが原作ではもう少し若い。8巻からジャックの下で候補生。戦死した勅任艦長の息子。
ジャックはキャラミーの父親とTheseus号で一緒に勤務した経験があり、その縁でキャラミーの母から息子を託された。
父親はAtalante号の艦長を経て、1808年の秋(原作10巻は1812年の設定)に74門艦ロチェスター号の艦長として戦死。
この設定も映画で生きているそうです。キャラミーはジャックに戦死した父親を重ねている、とは彼を演じたマックス・ベニッツ談。

■ボンデン(艦長づき艇長)
1巻からジャックと行動をともにする艦長づき艇長。
ジャックのボディガードを務めるのは当然だが、ジャックの命令でスティーブンの潜入任務に同行することもある(4巻など)。
老水兵ジョー・プライスの従兄弟…という設定は映画ではどうなってしまたんでしょう?

■キリック(艦長づき給仕)
1巻からジャックと行動をともにする艦長づき給仕。ジャックが家庭をもってからは、陸にいる時はジャックの家で働いているようです。

■ジョー・プライス(老水兵)
2巻からジャックと行動をともにしている老水兵。ボンデンの従兄弟。

■オークワード(つむじ曲がりの)・デイビス(水兵)
ジャックの艦が長い水兵。のろまでぶきっちょ。海に落ちておぼれかけたところを、ジャックに救助されたことがある(何巻でしたっけ? もっともジャックは大勢海難救助しているんですけど)。

8巻から行動をともにしている下士官には、他に掌帆長のホラー、船匠のラムがいます。


また原作10巻の登場人物のうち、以下のメンバーは映画には登場しません。

マーティン牧師、ハニー三等海尉代行、メイトランド四等海尉代行、アダムズ主計長、ホーナー掌砲長、ワード書記、ミセス・ホーナー、ミセス・ラム、ミセス・ジェームズ。


2004年02月08日(日)
艦長負傷(脱臼)につき

2月7日(土)にアメリカ監督協会(Directors Guild of America)の監督賞の発表を兼ねた祝賀晩餐会がアメリカで開催され、受賞者は「LOTR:王の帰還」のピーター・ジャクソンに決まりました。
ピーター・ウィアー監督もノミネートされていたので、この晩餐会にはノミネート映画の関係者も出席することになっていたのですが、先日トレーニング中に脱臼したラッセル・クロウ艦長の代理で出席したのは、職責上は当然の、ジェームズ・ダーシー副長でした。

本来でしたらポール・ベタニー軍医が出席すべきなのだと思いますが、艦長の看病で忙しく…ではなくって、英国映画賞の関係で、いま彼はイギリスのようですね。2月5日のテレグラフ紙に下記のような記事が載っています。ベタニー自身は早くニューヨーク・ブルックリンの奥さんと子供のところへ帰りたいみたいですけど。
今現在イギリスで大問題になっているBBCのイラク戦争報道問題については、「アメリカで暮らしていると、健全なメディアのあるこの国の良さがわかる」という政治向きの発言なども行っているようです。
From busker to BAFTA

また、撮影監督のラッセル・ボイドのインタビューが下記のページに紹介されています。「M&C」に関係する部分のみご紹介します。
A Conversation with Russel boyd
照明は、監督が俳優たちと創り上げる場の雰囲気を盛り上げるものだ。ただ照明を当てれば良いというものではない。照明はそのシーンの雰囲気を殺してしまうこともありえるし、またより情感をかきたてるべく効果的に働くこともある。「マスター・アンド・コマンダー」を例にとれば、艦長室の照明はシーンに対応している。艦長とドクターの意見が対立し、議論になる場面ではより陰鬱な雰囲気を出し、反対にやすらぎを感じさせるシーンでは照明もソフトにおさえている。

さて、以前から問題になっていた「マスター・アンド・コマンダー」の日本版予告編問題、週刊誌にもとりあげられてしまいました。木曜日発売の「週刊文春」2月12日号52ページ「R・クロウファン激怒 歴史大作映画を貶める「虚偽」宣伝」という記事です。
まだ週刊誌が発売中ですので、ここではタイトルのみご紹介しますが、どうやら日本広告審査機構が調査に入るようです。

2月に入り、国内でも様々な雑誌に「マスター・アンド・コマンダー」がとりあげられ始めたようです。
思わず笑ってしまったのは、「映画秘宝」という男性向けと思われる映画紹介雑誌。
「砲弾が爆発しない」など戦闘シーンの本物度を紹介したあと、「映画会社の宣伝(萎えるぞ)にまどわされず、映画館に行くべし」と言うような内容で締めてあり、苦笑してしまいました。
いま発売中の日経エンタティメントの紹介記事も、事実を正しく伝えているのではないかと思います。

ピーター・ウィアー監督は2月5日のプレミア試写会に合わせて来日していたようですが、監督インタビューなどが記事になりはじめると、また世間の認識も変わっていくのではと思います。


2004年02月07日(土)
イブニング・スタンダード英国映画賞

英イブニングスタンダード紙が主催するイブニング・スタンダード英国映画賞を、ポール・ベタニーとマックス・パーキスが受賞しました。
Emma's top actress, actually

受賞者は下記の通り

最優秀作品賞(Best film ):「Touching the Void」
  Kevin Macdonald監督による山岳ドキュメンタリー・ドラマ
最優秀男優賞(Best actor):ポール・ベタニー(「マスター・アンド・コマンダー」)
最優秀女優賞(Best actress):エマ・トンプソン(「ラブ・アクチュアリー」)
コメディ俳優賞(The Peter Sellers Award for Comedy):ビル・ナイ(「ラブ・アクチュアリー」)
有望新人賞(Best newcomer):マックス・パーキス(「マスター・アンド・コマンダー)」

リンク記事から2人の写真を見ることが出来ます。
記事の終わりにある。下記の部分の「Gallery」というところをクリックしてください。
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• 30th British Film Awards: Previous winners
• Gallery: The winners at the Film Awards
• Winners: 1973-2001

写真は8枚ありますが、4枚目がポール、7枚目がポールとマックス君です。
右側の小さい写真の下の「next」をクリックし続けていくとたどりつきます。

マックス君、すっかり大人になってしまってビックリ。
「ハリポタ」見ていても思いますが、この年齢の子って見る見る大人になっていく、というかあどけなさが抜けていきますね。
もはや天使の羽根はムリかも?(笑)


2004年02月03日(火)
2月のテレビ映画

待ちに待った2月がやってきました!
「マスター・アンド・コマンダー」の日本公開まであと4週間、28日です。

それを狙ったわけでもないでしょうが、2月は海洋歴史映画のテレビ放映が2本もあります。
それも同時代の英国海軍が舞台、1本など時代まで同じ1805年です。
絶好の予習が出来ますので、ぜひぜひご覧ください。

地上波(関東)
◆バウンティ--愛と反乱の航海(1984年アメリカ)
2月6日(金)26:50-28:55(真夜中つまり2/7 2:50-4:55の放映):テレビ朝日
1789年に実際に英国海軍で起きた反乱を題材にした海洋歴史人間ドラマ。時代は「M&C」にさかのぼること15年ですが、当時の様子を知るには最適、またこの映画を見たあと「M&C」を見ると、いかにジャックが破天荒に気さくで、人間味にあふれる艦長か、よくわかるのではないかと思います。
原作はリチャード・ホフ「バウンティ号の叛乱」フジ出版(Richard Hough "Captain Blin Bligh and Mr. Christian")、歴史考証担当はステファン・ウォルターズ。
復元船を使って実際にタヒチ島でロケをしているようです。
脚本は「アラビアのロレンス」のロバート・ボルト。これは当初この映画の監督にデイビット・リーンを予定していたからですが、リーン監督のスケジュールがつかず、ロジャー・ドナルドソンが代わってメガホンをとりました。
キャストが芸達者ぞろいで超豪華です。
この映画、英本国でのブライの軍法会議から過去を回想する形で物語が語られるのですが(あ、考えてみればHH2は同じ形式をとってるんですね)、軍法会議の議長、フッド提督がローレンス・オリビエ、訴追側のグリーサム艦長がエドワード・フォックス。
バウンティ号の当事者は、反乱側首謀者フレッチャー・クリスチャンがメル・ギブスン、ブライ艦長にアンソニー・ホプキンス、当初の副長フライヤーがダニエル・デイ・ルイス。掌帆長コールがバーナード・ヒル、主要水兵2人のうちの1人チャーチル役はリーアム・ニーソン。
当時の映画パンフによれば、アンソニー・ホプキンスは1年かけて資料を読みあさり役づくりをしたそうですし、メル・ギブスンもクリスチャンの日記を精神分析医に分析してもらい、日記の裏に隠させた彼の性格を探り出そうとしたようです。
20年前の作品ですから、みんな若いですよ(笑)。

衛星放送
◆美女ありき(1941年アメリカ)
2月12日(木)16:45-18:55:NHKBS2
トラファルガー海戦(1805年)の英雄ネルソン提督と、エマ・ハミルトンのラブロマンスを描いたハリウッド往年の大作。
ネルソン提督にローレンス・オリビエ、エマ・ハミルトンにヴィヴィアン・リー。
海洋歴史映画の原典、古典的作品です。
初めて見た時にはやはり、ヴィクトリー号の最下甲板のくだりでジーンとしてしまいました。

また以下の2本は、海洋モノではありませんが、「M&C」を見る前に見ておくと面白いかもしれません。

◆いまを生きる(1989年アメリカ)
2月23日(月)20:00-22:10:NHKBS2
ピーター・ウィアー監督作品。
「M&C」の解説には時々「この映画は海洋版『いまを生きる』である」という一文が出てきます。
私はまだこの映画を見たことがないので、この機会に是非見てみたいと思っているのですが。
全寮制の名門進学校を舞台に、型破りの英語教師と生徒とのかかわりを描いたドラマ。

◆ビューティフル・マインド(2001年アメリカ)
2月14日(土)16:30-18:48:WOWOW
ラッセル・クロウとポール・ベタニーの共演第一作。
「M&C」のインタビューで彼らが言っていたように、この作品と今回では二人の性格設定が全く逆になっています。暗いジョン・ナッシュ(クロウ)と口数の多い陽気なチャールズ(ベタニー)。そう言えば髪の色も逆ですね。
アカデミー賞作品、監督賞受賞作。私は最後で泣けました。


スカパー/ケーブルなど
◆E!アカデミー賞2004ノミネーションSP
2月22日(月)23:15〜:ムービープラス
2004年アカデミー賞直前特集として、ノミネート作品を詳しく紹介…とあります。「M&C」の紹介もあるのではないでしょうか?

また「ムービープラス」では2月3日、9日、11日、16日、21日、23日に「バウンティ--愛と反乱の航海」の放映があります。


2004年02月01日(日)