Sail ho!:映画「マスター&コマンダー」と海洋冒険小説の海外情報日記
「宝島」の続編
パトリック・オブライアン・フォーラム(掲示板)でとりあげられていた話題です。
3月26日の英Guardian紙によると、海洋小説の古典、R.L.スティーブンソンの「宝島」に続編出版の計画があるそうです。 続編を執筆するのは、英国では詩人として名を知られたアンドリュー・モーション氏。 タイトルは「Return to Treasure Island」で、2012年にランダムハウス社から出版されます。 詳細記事はこちら Andrew Motion to write sequal to Treasure Island http://www.guardian.co.uk/books/2010/mar/26/andrew-motion-treasure-island-sequel
記事によれば、続編の主人公は、スティーブンソンの「宝島」の主人公ジム・ホーキンスの息子である、ジム・ジュニア。
スティーブンソンの「宝島」の最後でジム・ホーキンスは、宝の埋められた島から無事、故郷のブリストルに帰ってきますが、彼は二度とあの「呪われた島」には戻らないと誓います。 島にまだ宝が残っている筈ですが、かつてブリストルを出航した一行の中で、英国に戻って来れたのはわずか五人でした。 一本足の海賊ジョン・シルバーは、途中の港(新大陸のスペイン領のどこか)で脱走し、行方不明…という形で物語は終わりました。
モーション氏の続編では、前作の主人公ジムは大人になり、ロンドン郊外のテムズ河畔でパブを営んでいます。 結婚して息子も生まれ、自分と同じジムと名付けました。 このジム・ジュニア少年のもとに、一人の少女が尋ねてきます。 彼女はジョン・シルバーの娘で、ジム少年に父のもとから宝島の地図を盗み出すように言うのです。一緒に逃げて残りの宝を見つけようと。 モーション氏はこの続編について「これは児童文学だが、そうで無いとも言える。今執筆中のこの続編には、かなり暗い面も含まれるからだ」と述べています。「スティーブンソンの宝島においても、多くの人間が理不尽な死をとげているのだから」
確かに、宝島って主人公が少年だというだけで、中身は大人たちの宝をめぐる抗争なのですよね。 ストーリーだけを聞くと大人向けの冒険小説と言っても十分通るので。 ただ、あの物語が書かれた19世紀の半ばには、少年が12才でキャビンボーイとして海に出るのは当たり前のことで、船に乗り組んだ以上は大人の争いに巻き込まれるのもまた当然のことだった(士官候補生の例を引くまでもなく)。 ゆえに当時の社会ではあの物語を児童文学として子供たちに読ませていたのでしょう。 「宝島」の続編がどのような物語になるのか、児童文学の定義も世間での受け止め方も昔とは異なる現代での続編、楽しみに待とうと思います。
2010年04月25日(日)
火山と交通断絶と海峡横断
アイスランドの火山噴火によるヨーロッパの空港閉鎖では、1万人以上の日本人が立ち往生したとか、 水曜あたりから徐々に飛行機の運航も再開されているようですが。
私は、大型台風来襲で飛行機が飛来せずサイパン島に6日間閉じこめられたり、フェリーが欠航してエストニアの岸辺に一人取り残されたり、これまで「帰れなくなる」トラブルには二度ほど遭ったので、立ち往生された方の気持ちはイタイほどわかる。 やっと成田に帰れた旅行者がインタビューを受けてるのをTVで見ましたが、「時間がたてばこれも良い思い出になるのかもしれませんが、今はもういいです」と、 いやたぶん、時間がたっても良い思い出には変わらないと思いますよ…と経験者としては思ふ。まぁ人生の貴重な経験にはなるのですが。
ところでこの事態、島国である英国ではさらに大問題でした。ヨーロッパ大陸に取り残されドーバー海峡を渡れなかったイギリス人は20万人! ブラウン首相はこの事態を、今まで直面したことのない最も深刻な交通断絶状態(most serious transport disruption)と述べました。
昔と違って、ブリテン島は孤島ではなく、今は英仏海峡トンネルという道が1本、大陸とつながってはいるのですが、パリ〜ロンドンを結ぶ高速鉄道ユーロスターはあっという間に満席。 飛行機と鉄道に乗れなかった人たちは、本数の限られたフェリーで本土に渡るしかなく、海峡に面したドーバーとカレーの港は船に乗り切れない人で大混乱だったそうです。 大陸に取り残されたイギリス人を救出するべく、英国海軍は空母アークロイヤルと強襲揚陸艦アルビオン、オーシャンを派遣しました。 なぜ強襲揚陸艦?…と思ったのですが、考えてみれば、フェリーにあぶれた人の中には車で大陸に渡っていて、もとからフェリーでないと帰れない人もいたはずで、その車…物流用のトラックとか乗用車…を収容するための揚陸艦だったのでしょうか?
そうそう、こういう時、「取り残される」に当たる英語は「stranded」だと今回初めて知りました。 海洋小説ではstrandedって「座礁した」という意味ですが、人が陸地に打ち上げられた時にも使うんですね。 …というか基本的に、海に囲まれた英国では、海に戻れなければ(海を渡らなければ)故国に帰れないという時代が長くて、それが単語の使い方にも影響しているのかもしれません。
ところで英紙The Guardianによると、火山の大噴火はあの時代…海洋小説の舞台となった18世紀末〜19世紀末にもよくあったそうです。 「アイスランドの火山灰は北はヘルシンキから南はナポリ、マヨルカ島、アレッポやダマスカス(現在はシリア)にまで及んだ」 …これは先週の話ではなくて、ジャック・オーブリーがまだ14才だった1783年の、アイスランドのラキ火山大噴火の時の話。 「このラキ火山の噴火は8ヶ月続き、気候を変えた。ヨーロッパ各地の気温は下がり、森には酸性雨を降らせた。このためヨーロッパは全土に渡り大凶作となり何百万頭もの家畜が死んだ。この凶作による飢饉が、フランス革命の遠因となったと考えられている。」 当時は江戸時代で鎖国していた筈の日本でも、このアイスランドの噴火の影響は受けました。日本でも気温が下がって凶作になり、天明の大飢饉が発生しています(日本の場合はこれに浅間山の大噴火が重なって更に被害が拡大したそうです)。
ジャックの活躍する時代で有名な噴火は、1815年4月のタンボラ山大噴火。 当時のオランダ領東インド、現在のインドネシア・スンバワ島(ジャワ島とバリ島の東)にあるこの火山の火山灰は地球規模で広がり、翌1816年、ヨーロッパと北米に夏は来なかった。6月にイタリアで霜が降り、7月に米東海岸ヴァージニアで雪が降ったそうです。 とりあえず現在はアイスランドの噴火はおさまっているんでしたっけ? 後日影響が出ないと良いですけれど。
この歴史と火山噴火に関する記事の詳細は下記(英語です)。 Iceland volcano: why we were lucky we weren't wiped out http://www.guardian.co.uk/world/2010/apr/21/iceland-volcano-ash-extinction-human-race
2010年04月24日(土)
町田にて勢古宗昭画伯、海洋画展
毎年ご紹介している勢古宗昭画伯の海洋画展、来週、小田急百貨店町田店(小田急線またはJR横浜線町田駅)にて開催とのことです。
会期:2010年4月21日(水)〜27日(火) 時間:午前10時〜午後8時(最終日は午後6時にて閉場) 会場:小田急百貨店 町田店7階 美術サロン http://www.odakyu-dept.co.jp/machida/event/index.html
お近くの方は是非、足をお延ばしくださいませ。
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今日の「龍馬伝」は、咸臨丸登場で嬉しかったですね。大砲まで撃ってくれましたし(すごいわNHKのロケだと違う!) 初回のサスケハナ号の提督公室も凝ってましたが、 こういう細かいところをちゃんと見せてくれるのが、帆船好きとしてはとても嬉しく…、 来週以降の長崎海軍伝習所にも期待して…良いでしょうか?
2010年04月18日(日)
サプライズ号、オーバーホール中
アメリカ・サンディエゴのローカル新聞から、サプライズ号オーバーホールの話題
Makeover for ‘Master and Commander’ warship ---Maritime star of 2003 film getting repairs, a new paint job http://www.signonsandiego.com/news/2010/apr/08/master-and-commander-warship-getting-a-makeover/
サンディエゴ海洋博物館のサプライズ号は、サンディエゴ郊外Chula Vistaのドックで、オーバーホール中。 船体のペンキは全て塗り直されるとのこと。 上記のアドレスから、サプライズ号の船底…という珍しい写真が見られます。
あの時代だったら、傾船修理と言うのでしょうけれども、今は乾ドックが容易に利用できるので、作業もずいぶんと楽になったことでしょう。 (というより、あの時代は船が多すぎてドックが追いつかない情況と言うべき?)
ただし、乾ドックでの作業は4週間以内に終了しなければいけないそうです。木造船は船体が完全に乾燥しきる前に水に戻さなければならない…と記事にはあります。 作業中は地元に公開されているので、見学もできるようですが、カリフォルニア南部在住でこれを読まれた方がありましたら、見学に行かれてみてはいかがでしょう?
2010年04月11日(日)
クロウとベタニーの5月映画
リドリー・スコット監督の「ロビンフッド」5月のカンヌ映画祭のオープニング作品に決まったようですね。 ロビン・フッドはラッセル・クロウ。
今年のカンヌ国際映画祭のオープニングがリドリー・スコット監督の『ロビン・フッド』に決定! http://www.cinematoday.jp/page/N0023376
ラッセルは久しぶりの、スコット監督との仕事になります。 IMDBのデータベースを見ると、アレン航海長役だったロバート・パーも出演しています。
IMDB(英語) http://www.imdb.com/title/tt0955308/
予告編トレイラー、英語のものは下記で見ることができます。 http://www.robinhoodthemovie.com/
全米公開は5月14日、日本公開は秋だそうです(どうして半年もずれるのでしょう?) リドリー・スコットならば確かですし、キャストも実力派揃い、スコット監督は映像の作り込みが美しいので、どのような英国中世のノッティンガムの森を見せてくれるのか楽しみです。
5月は、じつはポール・ベタニーも主演作の日本公開があるのですよね。 …しかしこれがかなりのキワモノというか、いやある意味、とても彼らしいというのか、 演じるのは大天使ミカエル(!!!)。
YAHOO映画の評に「ポールが演じる、力強くセクシーな大天使ミカエルの姿は必見」と書かれてしまいました。 確かに、彼で天使を撮りたいという企画の狙いは、わからないでもないような?
レギオン http://info.movies.yahoo.co.jp/detail/tymv/id336520/
上記ページからトレイラーにも行けます。 基本的にはB級アクションのようですが…ちょっとえぐいかも。
2010年04月04日(日)
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